いにしえの文 › 東国李相国集(東国の李相国の文集) › 前集 巻15
守安県の西華寺に至り、川と山を眺めて、住持の求めで一篇を書き残す予以事到守安縣西華寺。小酌上方南榮。江山遠眺。莫有過兹者。然以境幽路僻。來遊者盖寡。故無有留題。住老請詩。爲留一篇。
東国李相国集(東国の李相国の文集) 前集 巻15 高麗の李奎報が生涯に作った文章を、子の李涵が1241年に編んで刻み、孫の李益培が1251年に改め補った文集。詩と賦、王に奉った表と箋、寺と塔に付けた記、碑銘と墓誌銘、手紙と序文、そしてモンゴルが攻め入った時に行き交った国書までが収められている。高句麗の始祖を歌った「東明王篇」が前集の巻3にあり、酒と琴と詩を友として自ら白雲居士と名のった人の一日一日が後集に残っている。書は、彼が目を病んで筆を置く最後の詩と、彼が死んだ後に他の人が作って付けた誄書・墓誌銘で閉じる。
遶村多複嶺。無處望長流。賴有三椽寺。如登百丈樓。島微侔握小。船遠似盃浮。目極通千里。心超跨十洲。神慳兹地秘。天許我曹遊。瘴重因蒸霧。林幽賴挾湫。暮雲將雨暗。秋菓得霜柔。領得壺中景。都忘世上拘。但緣無客到。不見有詩留。何日拋腰印。閑來正狎𩿨。
村を取り巻く重なった峰が多くて 長い流れを望む場所がない さいわい垂木三本ほどの小さな寺があって 百丈の楼に登ったようだ 島はかすんで一握りほどの小ささ 舟は遠くて杯が浮かんでいるようだ 目は尽きて千里まで通り 心は超え出て十洲にまたがる 神が惜しんでこの地を隠していたのに 天はわれらに遊ぶことを許した 瘴気が重いのは霧が蒸すためで 林が奥深いのは淵を抱いているおかげだ 夕べの雲は雨を連れて暗く 秋の実は霜にあって柔らかい 壺の中の景色を手に入れて 世の中のしがらみをすっかり忘れる ただ訪れる客がないために 書き残された詩を見ることもない いつの日か腰の印綬を投げ捨てて のんびりと来て鷗と親しもうか