いにしえの文 › 東国李相国集(東国の李相国の文集) › 前集 巻28
和州から国境を接する鎭州に答える書和州答對境鎭州牒
東国李相国集(東国の李相国の文集) 前集 巻28 高麗の李奎報が生涯に作った文章を、子の李涵が1241年に編んで刻み、孫の李益培が1251年に改め補った文集。詩と賦、王に奉った表と箋、寺と塔に付けた記、碑銘と墓誌銘、手紙と序文、そしてモンゴルが攻め入った時に行き交った国書までが収められている。高句麗の始祖を歌った「東明王篇」が前集の巻3にあり、酒と琴と詩を友として自ら白雲居士と名のった人の一日一日が後集に残っている。書は、彼が目を病んで筆を置く最後の詩と、彼が死んだ後に他の人が作って付けた誄書・墓誌銘で閉じる。
云云。沐來文。該近爲逃人越境。差人趁蹤至沿海。路逢行人。奪衣物而廻。具由申移上司。除本人理罪施行外。今將元奪到衣服幷所直。信賦價直差人責送事。卽申覆朝廷。取指揮到。貴國恩義可感。其我國人見劫衣服。當推本人以給恰好。但所送信贓價直者。是則本人衣服外。餘剩之物。受之非理。苟非其理。雖一介所不可當受。如或受之。恐非兩國來往和親之意。故還之。宜管送勿至拖延。朝旨如此。今差人將夯前去。伏請炤驗領取。云云。
お送りくださった書を受け取りました。その書に「近ごろ逃げた者が境を越えたので、人を遣わして跡を追い海辺に至ったところ、道で通りかかった人に出会い、衣類を奪って帰った。その次第を詳しく上の役所に報告し、その者を罪に問うほか、今、もともと奪って来た衣服とその値、および贓物の値を、人に持たせて返し送る」とありました。
すぐに朝廷に申し上げて指揮を受けました。貴国の恵みと義は感謝すべきものです。わが国の人が奪われた衣服は、当然本人を探し出して返すのが適切でしょう。ただ、お送りくださった贓物の値は、本人の衣服のほかに余る物ですから、受け取るのは理に合いません。まことに理に合わないのであれば、一つなりとも受け取ってはなりません。もし受け取るなら、両国が行き来して和親する意に背くのではないかと思い、お返しします。しかるべく預かってお送りになり、引き延ばさぬようにしてください。朝廷のお指図はこのとおりです。
今、人を遣わして担いで行かせますので、伏してお願いいたします。お確かめのうえお受け取りください。
夾注 1
信賦價直・信贓價直 — 底本では前が信賦、後ろが信贓である。一つの文の中で同じものを指しているので、どちらも「贓物の値」と訳した。 ― 訳者