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柳花 — 河伯の娘を得る東明王篇 二

東明王篇(東明王を詠んだ長歌) 東明王篇 · 李奎報(イ・ギュボ) · 1193年 · 段落 5 · 漢字 992字 · 朗読 4.0分

東明王篇(東明王を詠んだ長歌) 全一巻 李奎報が二十六歳であった1193年に作った五言古詩280句とその序文。天から降りてきた解慕漱が河伯の娘の柳花を得て、柳花が日の光を宿して卵を産み、卵から生まれた朱蒙が夫余を去り、魚と鼈の橋で川を渡って国を建てるまでを詩に詠んだ。詩より長いのが詩の間の夾注である — 李奎報は、金富軾が三国史記を作るにあたって「かなり削った」箇所を、今は伝わらない『旧三国史』東明王本紀からそのまま写しておいた。解慕漱と河伯が鯉と川獺、雉と鷹に変身して競う箇所、柳花の唇が三尺に伸びた箇所は、この夾注にのみ残っている。

1青河の河伯に三人の娘がいた

城北有靑河。河伯三女美。擘出鴨頭波。往遊熊心涘。鏘琅佩玉鳴。綽約顔花媚。初疑漢皐濱。復想洛水沚。

城の北に青河があり、河伯の三人の娘は美しかった。 鴨の頭のような青い波を押し分けて出て、熊心の水辺に遊びに行った。 ちりんと佩玉が鳴り、しなやかな顔は花のように艶やかで 初めは漢皐の水辺かと疑い、また洛水の砂州かと思った。

夾注 4

靑河今鴨綠江也。

青河は今の鴨緑江である。

長曰柳花。次曰萱花。季曰葦花。

長女を柳花、次女を萱花、末娘を葦花といった。

自靑河出遊熊心淵上。

青河から出て熊心淵のほとりに遊びに行った。

神姿艶麗。雜佩鏘洋。與漢皐無異。

神々しい姿は艶やかで美しく、さまざまな佩玉がちりんと鳴り響き、漢皐の神女と変わりがなかった。

2鞭で地に線を引いて銅の家を建てる

王因出獵見。目送頗留意。玆非悅紛華。誠急生繼嗣。三女見君來。入水尋相避。擬將作宮殿。潛候同來戱。馬撾一畫地。銅室欻然峙。錦席鋪絢明。金罇置淳旨。蹁躚果自入。對酌還徑醉。王時出橫遮。驚走僅顚躓。

王は狩りに出てこれを見ると、目で追ってたいそう心に留めた。 これは華やかさを喜んだからではなく、まことに跡継ぎを生むことが急だったからである。 三人の娘は君主が来るのを見て、水に入ってすぐに避けた。 やがて宮殿を造り、ともに来て遊ぶのを密かに待とうとして 馬の鞭で地に一本線を引くと、銅の家がたちまちそびえ立った。 錦の敷物を目もあやに敷き、金の酒樽に良い酒を置くと しずしずと果たして自ら入り、向かい合って酌み交わしてすぐに酔った。 王はそのとき出て行って遮り、娘たちは驚いて走り、倒れつまずいた。

夾注 3

王謂左右曰。得而爲妃。可有後胤。

王は左右の者に言った。「手に入れて妃とすれば、跡継ぎを得られるだろう。」

其女見王卽入水。左右曰。大王何不作宮殿。俟女入室。當戶遮之。王以爲然。以馬鞭畫地。銅室俄成壯麗。於室中。設三席置樽酒。其女各坐其席。相勸飮酒大醉云云。

その娘たちは王を見るとすぐ水に入った。左右の者が言った。「大王はなぜ宮殿を造り、娘たちが部屋に入るのを待って戸口を遮らないのですか。」王はそのとおりだと思い、馬の鞭で地に線を引くと、銅の家がたちまち出来上がって壮麗であった。部屋の中に席を三つ設けて酒樽を置くと、その娘たちはそれぞれ自分の席に座り、互いに勧めて酒を飲み、大いに酔ったという。

王俟三女大醉急出。遮女等驚走。長女柳花。爲王所止。

王は三人の娘が大いに酔うのを待って急に出て遮ると、娘たちは驚いて走り、長女の柳花が王に引き止められた。

3柳花が引き止められ、河伯が怒る

長女曰柳花。是爲王所止。河伯大怒嗔。遣使急且駛。告云渠何人。乃敢放輕肆。報云天帝子。高族請相累。指天降龍馭。徑到海宮邃。

長女を柳花といい、これが王に引き止められた者であった。 河伯は大いに怒り、使者を急ぎ走らせて 「お前は何者で、どうしてこれほど勝手に振る舞うのか」と告げると 「天帝の子です。高い家柄と縁を結びたいのです」と答えた。 天を指すと竜の車が降りてきて、まっすぐ奥深い海の宮殿に着いた。

夾注 1

河伯大怒。遣使告曰。汝是何人。留我女乎。王報云。我是天帝之子。今欲與河伯結婚。河伯又使告曰。汝若天帝之子。於我有求昏者。當使媒云云。今輒留我女。何其失禮。王慙之。將往見河伯。不能入室。欲放其女。女旣與王定情。不肯離去。乃勸王曰。如有龍車。可到河伯之國。王指天而告。俄而五龍車從空而下。王與女乘車。風雲忽起。至其宮。

河伯は大いに怒って使者を送り、「お前は何者で、私の娘を引き止めているのか」と言った。王は「私は天帝の子で、今、河伯と婚姻を結びたいのです」と答えた。河伯はまた人を送って言った。「お前が天帝の子なら、私に婚姻を求めるには当然仲立ちを送るべきであるのに、今いきなり私の娘を引き止めるとは、何と礼を失したことか。」王は恥じて河伯に会いに行こうとしたが、その家に入ることができず、その娘を放そうとした。娘はすでに王と情を交わした身であったので去ろうとせず、王に勧めて言った。「竜の車があれば、河伯の国に行けます。」王が天を指して告げると、たちまち五頭の竜が引く車が空から降りてきた。王と娘が車に乗ると、風と雲が忽然と起こり、その宮に着いた。

4鯉と獺、雉と鷹 — 変化を競う

河伯乃謂王。婚姻是大事。媒贄有通法。胡奈得自恣。君是上帝胤。神變請可試。漣漪碧波中。河伯化作鯉。王尋變爲獺。立捕不待跬。又復生兩翼。翩然化爲雉。王又化神鷹。摶擊何大鷙。彼爲鹿而走。我爲豺而趡。

河伯はそこで王に言った。「婚姻は大事であり 仲立ちと結納には通じた法がある。それをどうして勝手にできようか。 あなたが上帝の子孫なら、神通の変化を試してみよう。」 さざ波の立つ青い波の中で、河伯が鯉に化けると 王はすぐに獺に化けて、半歩も行かぬうちに捕らえた。 また両の翼が生えて、ひらひらと雉に化けると 王はまた神々しい鷹に化けて、打ちかかるさまは何と荒々しいことか。 向こうが鹿になって走れば、こちらは豺になって追った。

夾注 1

河伯備禮迎之。坐定。謂曰。婚姻之道。天下之通規。何爲失禮。辱我門宗云云。

河伯は礼を整えて迎え、席を定めて言った。「婚姻の道は天下に通じる法であるのに、どうして礼を失して私の家門を辱めるのか」と言ったという。

5黄金の釵で革の輿を破り、ひとり昇る

河伯知有神。置酒相燕喜。伺醉載革輿。幷置女於輢。意令與其女。天上同騰轡。其車未出水。酒醒忽驚起。取女黃金釵。刺革從竅出。獨乘赤霄上。寂寞不廻騎。河伯責厥女。挽吻三尺弛。乃貶優渤中。唯與婢僕二。

河伯は神通があることを知り、酒を設けてともに楽しんだが 酔うのをうかがって革の輿に載せ、娘も輿の脇に一緒に乗せて その娘とともに、天上へ並んで昇らせようとした。 その車がまだ水を出ないうちに、酒が覚めてはっと驚いて起き 娘の黄金の釵を取って、革を刺して穴から抜け出し ひとり赤い空の上へ昇って、寂しく騎を返さなかった。 河伯はその娘を責め、唇を引っ張って三尺も伸ばし 優渤水の中に追い落として、婢僕二人だけを付けた。

夾注 5

車傍曰輢。

車の脇を輢という。

河伯之酒。七日乃醒。

河伯の酒は七日たってやっと覚める。

叶韻

韻を合わせたものである。

河伯曰。王是天帝之子。有何神異。王曰。唯在所試。於是。河伯於庭前水。化爲鯉。隨浪而游。王化爲獺而捕之。河伯又化爲鹿而走。王化爲豺逐之。河伯化爲雉。王化爲鷹擊之。河伯以爲誠是天帝之子。以禮成婚。恐王無將女之心。張樂置酒。勸王大醉。與女入於小革輿中。載以龍車。欲令升天。其車未出水。王卽酒醒。取女黃金釵刺革輿。從孔獨出升天。

河伯が言った。「王が天帝の子なら、どのような神異があるのか。」王は「試してみられればよいでしょう」と言った。そこで河伯が庭先の水で鯉に化けて波に従って泳ぐと、王は獺に化けてこれを捕らえた。河伯がまた鹿に化けて走ると王は豺に化けて追い、河伯が雉に化けると王は鷹に化けて打った。河伯はまことに天帝の子であると考え、礼を整えて婚姻を成した。王に娘を連れて行く気がないのを恐れ、楽を張り酒を設けて王に勧め、大いに酔わせると、娘とともに小さな革の輿の中に入れ、竜の車に載せて天に昇らせようとした。その車がまだ水を出ないうちに王は酒から覚め、娘の黄金の釵で革の輿を刺し、穴からひとり出て天に昇った。

河伯大怒。其女曰。汝不從我訓。終欲我門。令左右絞挽女口。其唇吻長三尺。唯與奴婢二人。貶於優渤水中。優渤澤名。今在太伯山南。

河伯は大いに怒り、その娘に言った。「お前は私の教えに従わず、とうとう我が家門を辱めた。」左右の者に娘の口を引っ張らせると、その唇は三尺も伸びた。奴婢二人だけを付けて優渤水の中に追い落とした。優渤は沼の名で、今、太伯山の南にある。