故昭義の僕射のための斎詞 ― その二爲故昭義僕射齋詞
1三百の僧に斎を設け、経を写して
中和二年七月二十七日。某官某乙奉太尉處分。爲故昭義僕射。於法雲寺設三百僧齋。並寫金光明經五部。法華經一部。永充供養。蓋聆佛修慧力。普濟群迷。人發信心。終成善願。苟得影從至敎。必能響答虔誠。伏以昭義僕射夙振雄圖。繼分重寄。將軍投袂。練兵而方切專征。天子翦衣。飛詔而唯憑妙略。佇建彀中之勳業。忽罹意外之災殃。不弔昊天奪我良胤。今則敬投蓮宇。虔設桑門。仍尋貝葉之眞蹤。仰奉法華之妙義。伏願乘玆功德。解彼冤讎。災星昔照於預州。已推定分。慧日分懸於覺路。永絶良緣。謹疏。
中和二年七月二十七日、某官某乙が太尉の処分を奉じて、故昭義の僕射のために、法雲寺で三百僧の斎を設け、あわせて『金光明経』五部と『法華経』一部を写して、永く供養に充てます。おおむね、仏は慧の力を修めて広く群れなす迷いを済い、人は信の心を発して、ついに善い願いを成すと聞きました。まことに影のように至れる教えに従うことができれば、必ず響きのように虔しい誠に答えてくださるでしょう。伏して思いますに、昭義の僕射は、早くから雄々しい図を振るい、継いで重い寄せを分け受けました。将軍は袂を投じて兵を練り、まさに征伐を専らにすることに切であり、天子は衣を翦って詔を飛ばし、ただ妙なる略に憑まれました。彀の中の勲業を建てるのを待っていたのに、たちまち思いがけない災殃に罹りました。昊天は弔わず、わが良き胤を奪いました。いま敬んで蓮の宇に身を投げ、虔んで桑門を設け、そのうえで貝葉の真の蹤を尋ね、法華の妙なる義を仰ぎ奉ります。伏して願いますに、この功徳に乗じて、かの怨みと讎を解き、災いの星が昔、預州を照らしたことは、すでに定まった分と推し、慧の日が覚りの路に分かれ懸かって、永く怨みの縁を絶つようにしてください。謹んで疏を申し上げます。
夾注 1
底本は「良緣」であるが、前の「かの怨讎を解く」と、この書の「永絶怨讎之本」が支えるので、「怨緣」(怨みの縁)の誤りと見て訳した。 ― 訳者