いにしえの文 › 懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) › 巻3 芹曝集

恩を謝しに行く路にあわせて申し上げることを請う啓請因謝。恩之行幷爲陳奏。啓

懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) 懲毖錄 · 柳成龍(リュ・ソンリョン) · 1633年刊行(壬辰倭乱の後に著す) · 段落 1 · 漢字 237字 · 朗読 2.3分

懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) 巻3 芹曝集 壬辰倭乱が終わった後、領議政の柳成龍が自らの目で見たものを記して残した記録。「過ぎたことを懲らして後の憂いを慎む」という意で名を付けた。戦争がどのように始まり、朝廷が何を見落としたかを言い逃れなく記した。李舜臣を推挙したこと、明の軍とのいざこざ、民が経た惨状がそのまま収められている。

伏承。聖敎臣不勝流涕自古國之遇屯運如人身之有重厄必須百分周防過爲之慮然後可望保全今日國運艱危萬端勢如累卵不知意外之禍又發於何事故臣之愚意凡事不得不曲爲之防也願之爲人當事敢作似無顧藉所謂漁人之功一語臣病未諦看今承。下敎不覺寒心以此等言觀之彼乘其憤氣做出不測之言更生事變於我國特一轉手間耳臣以此常念我國今日所患惟在於倭賊恐日後禍變不但在於倭賊也上。奏固未安然彼欲上。奏則此亦不必爭也伏聞。欽賜賑飢粮二萬餘石不可不謝。恩因此謝恩之行幷爲陳。奏單騎馳去恐或無妨此皆臣病中錯念惟在下。朝廷百分善處而已

下教を伏していただきまして、臣は涙が流れるのを抑えられません。古くから国が難しい運に遭うのは、人の身に大きな厄が入ったのと同じで、かならず百重にあまねくふさぎ、過ぎるほどに慮った後にこそ全いことを望めます。今日の国の運は、難しく危ういことが万に分かれ、勢いが卵を積んだようで、思いもしない禍がまたどの事から破れ出るか分かりません。それゆえ臣の愚かな意では、すべての事を曲がり曲がりふさがないわけにはいきません。

その人の人がらは、事に当たればあえてやり遂げて顧み憚るところがないようです。いわゆる「漁夫の功」という一言は、臣が病の中で詳しく見られなかったのですが、いま下教をいただきまして、我知らず心が冷えます。このような言葉で見ますに、彼らがその憤る気に乗じて量りがたい言葉を作り出して、わが国にまた事変を起こすのは、ただ手をひとたび返すあいだだけです。臣はこのためにいつも思います。わが国が今日憂えるところはただ倭の賊にありますが、後の日の禍の変は倭の賊だけにあるのではないかと恐れます。

上へ申し上げることはまことに当たっておりませんが、彼らが申し上げようとするなら、これもまた争うことはありません。伏して聞きますに、飢えた者を賑わす糧二万余石を下されたとのことですので、その恩を謝さないわけにはいきません。この恩を謝しに行く路にあわせて申し上げ、単騎で馳せさせても、おそらく害はないようです。これはみな臣が病の中で乱れて思ったことですので、ただ廷で百重によく処理されることにかかっているだけです。

夾注 2

甲午五月十日

甲午の年の五月十日。

底本は「願之爲人」としている。願は前に出た人の名の一字と見られるが、誰であるかが現れないので、作って埋めず「その人」としておいた。― 訳者