沈遊撃に会って事を論じたことを馳せて申し上げた状啓馳。啓見沈遊擊論事狀
沈遊擊昨日夕時自嘉山來宿于此今早發向肅川臣預送軍官問安于中路到舘後卽親詣候之則答以多謝且云路中只著行衣不便相見臣令譯官更通曰我以國命檢勅一路糧餉老爺無乃有分付之事乎答云雖行衣未安相見無妨臣入行禮後遊擊令設交椅自移其椅來就臣所坐幾於接膝云吾武人不閑禮貌勿咎因辟左右細問軍兵幾何糧料儲備幾何臣答以軍兵有管領之員非所管然大槪則可知遂言順安及三縣暨李鎰軍數又言諸道處處起軍勦賊之事糧料則粗備萬餘兵十餘日之糧今秋糓已熟方百計措辦答曰此處之軍恇怯善走吾當往彼親見其可用與否臣對以向來。天兵亦非不足而適天雨失利今若。天兵更出則蕩平非難此小邦日夜之望不然遲緩時日賊若集諸道之散出者合勢西來則恐有難支之患遊擊曰前日將官之罪不可勝言臣曰乃天時不齊而然非將官之罪遊擊曰旣誤軍機且誣言朝鮮與倭同反安有如此之事乎其將二人皆當死臣答曰小邦之事天日在上不須多說蒙老爺軫念如此不勝感激此外所說煩多而不能盡達同來譯官言遊擊來時小駐控江亭有一擺撥兒自順安來遊擊問我軍形止其人對云以朝鮮兵力無平賊之望其屯住順安不爲退北者亦爲多幸云云大槪我軍今日之勢極爲孤弱每日惟向釜山院往來而已更無他策賊安居飽食以逸待勞寧有自退之理乎臣日夜憂悶不知所出適湖城監之軍自遠來到頗慰軍情與之掎角稍可濟急而湖城監以肅拜事留軍三和獨向。行在朝廷急速發還便統其軍前進平壤之賊專備西北不備東南在我不無可乘之便而近日我軍每出一道不爲設奇乍進乍退終無望於挫其大勢極爲可慮其他糧料等事隨勢措置從後馳。啓計料但賊兵未退警報相續郡縣人民皆無固志事事渙散難集尤爲憂悶
沈遊撃が昨日の夕べ、嘉山から来てこの地に泊まり、今朝、粛川へ発ちました。臣は予め軍官を遣わして途中で問安させ、遊撃が館に至った後、ただちに自ら進んで会おうとしますと、「たいへん有り難い」と申しながらも「路で行衣だけを着ているので、互いに会うのは具合が悪い」と申しました。臣が訳官に改めて通じさせて「私は国の命で一つの路の軍糧を申し付けておりますので、老爺に申し付けられる事はございませんか」と申しますと、「行衣で心苦しいが、互いに会っても差し支えない」と申しました。
臣が入って礼を行った後、遊撃は椅子を置かせ、自らその椅子を移して臣の座った所へ来て、ほとんど膝が触れるほどにして「私は武人であるから礼の作法に熟していない。咎めないでほしい」と申しました。続いて左右を退けて、軍がどれほどあるか、糧を蓄えたものがどれほどあるかを詳しく問いました。
臣が答えて「軍は掌り率いる官員が別に在って私の掌るところではありませんが、大方は分かります」と申し、そこで順安と三県および李鎰の軍の数を申し、また諸道の所々で軍を起こして敵を討つ事を申しました。糧は万余の軍の十日余りの糧を大方備え、本年の秋の穀がすでに熟しましたので、まさにあらゆる計策で備えていると申しました。
遊撃が答えて「この地の軍は怯えが多く、よく走り去るから、私が当然その地へ行って用いるに足るか否かを自ら見よう」と申しました。臣が答えて「先には明の軍も足りなかったのではなく、ちょうど天から雨が降って利を失ったのです。今、もし明の軍が再び出て来れば掃き平らげることは難しくなく、これが小国の昼夜望むところです。そうではなく日を引き延ばすうちに、敵がもし諸道へ散り出た輩を集めて勢を合わせて西へ来れば、支えがたい患いがあるのではないかと恐れます」と申しました。
遊撃が「先日の将官の罪は言い尽くせない」と申しましたので、臣は「これは天の時が揃わずそうなったのであり、将官の罪ではありません」と申しました。遊撃が「すでに軍機を誤り、また朝鮮が倭と共に叛いたと誣ったのだから、どうしてこのような事があろうか。その将二人はどちらも死んで当然である」と申しました。臣は答えて「我が国の事は天の日が上に在りますから、多く申すまでもありません。老爺がこのように深く念じてくださいますので、感激に堪えません」と申しました。このほか申したことは煩わしく多く、すべては申し上げられません。
共に来た訳官が申しますに、遊撃が来る時に控江亭に少し留まったところ、擺撥児が一人、順安から来ましたので遊撃が我が軍の様子を問うと、その人が答えて「朝鮮の兵力では敵を平らげる望みがなく、順安に屯り留まって退き走らないだけでも幸いである」と申したそうです。
おおよそ我が軍の今日の形勢はひどく孤り弱く、日ごとにただ釜山院へ往き来するばかりで、ほかに別の計策がありません。敵は安らかに住んで飽きるほど食べ、安逸を以て労れを待っていますので、どうして自ら退く理がありましょうか。臣は昼夜憂え悩み、どうすべきかを知りません。
ちょうど湖城監の軍が遠くから来て至り、軍の情をなかなか慰めましたので、彼と掎角となれば少しは急を済うに足ります。ところが湖城監は粛拝の事で軍を三和に留め置き、独りで行在所へ行きますので、朝廷から急ぎ帰し送って、ただちにその軍を率いて前へ進ませてください。
平壌の敵はもっぱら西北だけを備えて東南を備えておりませんので、我らに乗ずるに足る便がないわけではありません。ところが近ごろ我が軍は常に一つの路からばかり出て奇な計りごとを設けず、少し進んで少し退きますので、ついにその大きな勢を挫く望みがなく、ひどく憂慮されます。
そのほか糧などの事は形勢に従って処し、後から馳せて申し上げる計りです。ただ敵兵が退かず警報が相次ぎ、郡県の民がみな固い志なく、事ごとに散って集めがたいので、いよいよ憂え悩まれます。