いにしえの文 › 懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) › 巻13 辰巳錄

君の車駕が早く京城へ帰られ、四方が仰ぎ望む心に答えられることを請う状啓請。車駕早還京都以答四方顒望之心狀

懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) 懲毖錄 · 柳成龍(リュ・ソンリョン) · 1633年刊行(壬辰倭乱の後に著す) · 段落 1 · 漢字 176字 · 朗読 1.6分

懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) 巻13 辰巳錄 壬辰倭乱が終わった後、領議政の柳成龍が自らの目で見たものを記して残した記録。「過ぎたことを懲らして後の憂いを慎む」という意で名を付けた。戦争がどのように始まり、朝廷が何を見落としたかを言い逃れなく記した。李舜臣を推挙したこと、明の軍とのいざこざ、民が経た惨状がそのまま収められている。

京城收復已久而。車駕尙未還都人心之顒佇日甚卽今賊兵屯據海邊無渡海之意衝東擊西勢益鴟張而諸將䇿應未免稽緩且。啓請往復於數千里之外動經數月因失事機者亦多臣之愚意。六宮雖暫駐西路。車駕則早還漢都以答四方萬姓之心又經理東南毋失機會則其於中興大計係關非輕蓋進取之事進一步則得一步退一步則失一步自古而然伏望。朝廷毋以此賊暫退而益思長遠之慮以毖後患不勝祈祝之至濫陳瞽說惶恐無已

京城を取り戻してからすでに久しいのに、君の車駕がまだ都城へ帰られませんので、人心が仰いで待つことが日ごとに甚しいのです。いま敵兵が海辺に陣を張って拠り、海を渡る意がなく、東を衝き西を撃って勢いがいっそう荒れ回るのに、諸将の応ずることは遅れ緩むのを免れません。また申し上げ請うことが数千里の外で往き来して、ともすれば幾月もかかり、それによって事の機を失うことも多いのです。

臣の愚かな意では、六宮はしばらく西の路に駐まられても、車駕は早く漢都へ帰られて四方の万民の心に答えられ、また東南を経理して機会を失われないならば、中興の大きな計に関わるところが軽くないでしょう。おおよそ進んで取る事は、一歩進めば一歩を得、一歩退けば一歩を失うのが、古からそうでした。

伏して願いますに、朝廷はこの敵がしばらく退いたからといって心を置かれず、いっそう遠くを見る思いで後の患いを慎まれてください。祈る心に堪えません。みだりに暗い説を述べますので、恐れ畏むこと限りありません。

夾注 1

七月

七月。