大秦国大秦國
1西海の西の大秦国
大秦國一名犁鞬,在西海之西,其地東西南北各數千里。有城邑,其城周回百餘里。屋宇皆以珊瑚爲棁栭,琉璃爲牆壁,水精爲柱礎。其王有五宮,其宮相去各十里,每旦于一宮聽事,終而復始。若國有災異,輒更立賢人,放其舊王,被放者亦不敢怨。有官曹簿領,而文字習胡,亦有白蓋小車、旌旗之屬,及郵驛制置,一如中州。其人長大,貌類中國人而胡服。其土多出金玉寶物、明珠、大貝,有夜光璧、駭雞犀及火浣布,又能刺金縷繡及積錦縷罽。以金銀爲錢,銀錢十當金錢之一。安息、天竺人與之交市於海中,其利百倍。鄰國使到者,輒廩以金錢。途經大海,海水鹹苦不可食,商客往來皆齎三歲糧,是以至者稀少。
大秦国は一名を犁鞬(りけん)といい、西海の西にあって、その地は東西南北それぞれ数千里である。城邑があり、城の周りは百余里である。家屋はみな珊瑚を棟木(むなぎ)と斗束(ますづか)とし、瑠璃を壁とし、水晶を柱の礎(いしずえ)とする。その王には五つの宮があり、宮どうしの間はそれぞれ十里で、毎朝一つの宮で政務を聞き、ひととおり終わるとまた初めに戻る。国に災いや異変があれば、すぐに賢い人を改めて立て、もとの王を退けるが、退けられた者も恨むことをしない。官の役所と文書の帳簿があり、文字は胡のものを習う。白い覆いの小車や旗の類、宿駅の制度もあって、中州と同じである。その人々は背が高く、姿は中国の人に似ているが、胡の服を着る。その土地には金玉や宝物、真珠、大きな貝が多く産し、夜光の璧、駭鶏(がいけい)の犀の角、火浣布(かかんぷ)があり、また金糸の刺繍や、幾重にも模様を織った毛織物を上手に作る。金銀で銭を作り、銀銭十枚が金銭一枚に当たる。安息(あんそく)や天竺の人と海上で商いをするので、その利は百倍である。隣国の使者が至れば、すぐに金銭をもって迎える。道は大海を通るが、海の水は塩辛く苦くて飲めないので、商人が行き来するときはみな三年分の食糧を携えていく。それゆえ至る者は少ない。
2甘英は海を渡れなかった
漢時都護班超遣掾甘英使其國,入海,船人曰:「海中有思慕之物,往者莫不悲懷。若漢使不戀父母妻子者,可入。」英不能渡。武帝太康中,其王遣使貢獻。
漢の時、都護の班超が属吏の甘英を送ってその国に使いさせたが、海に入ろうとすると、船人が言った。「海の中に思い慕う心を起こさせるものがあって、行く者はみな悲しみに沈みます。漢の使者が父母や妻子を恋しがらぬ自信があるなら、入ってよろしい。」英は渡ることができなかった。武帝の太康の年間に、その王が使者を送って貢ぎ物を献じた。