真定法師の孝と善がともに美しい眞定師孝善雙美
1脚の折れた釜一つだけ
真定師孝善雙羙法師真定羅人也.白衣時隷名卒伍,而家貧不娶.部役之餘傭作受粟以飬孀母.家中計産唯折脚一鐺而已.一日有僧到門求化營寺䥫物,母以鐺施之.旣而定従外敀.母告之故且虞子意何如厼.定喜現於色曰,“施於佛事何幸如之.雖無鐺又何患.”乃以瓦盆爲釡,熟食而飬之.
真定法師の孝と善がともに美しい。
法師の真定は新羅の人である。
俗にあったときは名が兵卒に属しており、家が貧しくて妻を迎えられなかった。
賦役の余った暇に人に雇われて穀物を受け、独りの母を養った。
家の暮らしを数えれば、ただ脚の折れた釜が一つあるだけであった。
ある日、僧が門に来て寺を建てる鉄物を施してくれるよう願うと、母は釜を与えた。
やがて真定が外から帰った。母は理由を告げ、また子の思いがどうだろうかと気にした。
真定は喜びの色を顔に表して言った。「仏の事に施したのですから、これほどの幸いがどこにありましょう。釜がなくても、また何を心配しましょうか。」
そこで土の器を釜として飯を炊いて養った。
2わたしが死なないうちに道を聞かせてくれ
甞在行伍間,聞人說義湘法師在太伯山說法利人,即有嚮慕之志.告於母曰,“畢孝之後當投於湘法師落髮學道矣.”母曰,“佛法難遇,人生大速,乃曰畢孝不亦晩乎.曷若趂予不死以聞道聞.慎勿因循速斯可矣.”定曰,“萱堂晩景唯我在側,弃而出家豈敢忍乎.”母曰,“噫爲我防出家,令我便堕泥黎也.雖生飬以三牢七鼎豈可爲孝.予其衣食於人之門亦可守其天年,必欲孝我莫作爾言.”定沉思久之.
かつて隊伍にいたとき、人々が義湘法師が太白山で法を説いて人を利していると言うのを聞き、すぐに慕う思いが生まれた。
母に申し上げた。「孝を終えた後に、必ず義湘法師に身を投じて髪を剃り、道を学びます。」
母は言った。
「仏法は出会いがたく、人の生はあまりに速い。それなのに孝を終えた後だというのは、また遅すぎないか。
どうして、わたしが死なないうちに道を聞いたという話を聞かせてくれることに及ぶだろうか。
どうかためらわず、早く行くのがよい。」
真定は言った。「母の晩年にただわたしだけがかたわらにいるのに、捨てて出家することを、どうしてあえて耐えられましょうか。」
母は言った。
「ああ、わたしのために出家を妨げるなら、それはわたしをそのまま地獄に落とすことだ。
たとえ生きている間、三つの牲と七つの釜の食べ物で養ったとしても、どうして孝といえようか。
わたしは人の家の門で物をもらって食べても、与えられた寿命を保つことはできる。必ずわたしに孝を尽くしたいなら、そんなことを言うな。」
真定は長いあいだ深く考えた。
3米七升のうち六升を包んでやる
母即起罄倒囊儲有米七升.即日畢炊,且曰,“恐汝因熟食經營而行慢也.冝在予目下喰其一,槖其六速行.”速行定飮泣固辝曰,“弃母出家其亦人子所難忍也.况其杯漿數日之資盡褁而行,天地其謂我何.”三辝三勸之.定重違其志進途霄征.三日逹于太伯山投湘公,剃染爲弟子,名曰真定.
母はすぐに立って袋をすべて払ってみると、米が七升あった。
その日のうちにすべて飯に炊いた。そうして言った。
「お前が飯を炊いて食べる手間で道が遅れるのが心配だ。ぜひわたしの目の前で一升を食べ、六升を包んで早く行きなさい。」
真定はむせび泣いて固く辞した。「母を捨てて出家することさえ、子として耐えがたい事です。まして数日分の食べ物まですべて包んで行ったなら、天と地はわたしを何と言うでしょうか。」
三度辞し、三度勧めた。
真定はその意を重ねて背きがたく、道に上がって夜を通して行った。
三日で太白山に至り、義湘に身を投じて髪を剃って弟子となり、名を真定とした。
4七日のあいだ禅定に入る
居三年母之訃音至,定跏趺入定七日乃起.說者曰,“追傷哀毀之至,殆不能堪,故以定水滌之爾.”或曰,“以定觀察母之所生䖏也.”或曰,“斯乃如實理薦冥福也.”既出定以後,事告於湘.湘率門徒歸于小伯山之錐洞,結草爲廬㑹徒三千約九十日講華厳大典.門人智通隨講撮其樞要成两卷,名錐洞記流通於世.講畢,其母現於夢曰,“我已生天矣.”
留まって三年、母の訃報が至った。
真定は趺を組んで禅定に入り、七日して起きた。
説く者は「悲しみに身を傷めることが極まって、とても耐えられなかったので、禅定の水で洗い流しただけである」と言った。
あるいは「禅定によって母が生まれた所を見たのである」と言い、
あるいは「これはすなわち、あるがままの理によって冥途の福を祈ったのである」と言う。
禅定から出た後、事を義湘に告げた。
義湘は門徒を率いて小伯山の錐洞に行き、草を編んで小屋を建て、衆三千を集めて九十日を期して『華厳経』を講じた。
門人の智通が講義に従ってその要を抜き出して二巻を成し、『錐洞記』といって世に広まった。
講義を終えると、その母が夢に現れて言った。「わたしはすでに天に生まれた。」