縁会が名を避ける — 文殊岾緣會逃名文殊岾
1四季に萎れない蓮
縁㑹逃名文殊岾髙僧縁㑹甞隐居霊鷲,每讀蓮經修普賢觀行,庭池常有蓮数朶四時不萎.〔今霊鷲寺龍藏殿是縁㑹舊居.〕
縁会(えんえ)が名を避ける — 文殊岾(ぶんじゅてん)。
高僧の縁会はかつて霊鷲山に隠れ住み、常に『法華経』を読んで普賢の観行を修めた。
庭の池には常に蓮の花が数輪あって、四季に萎れなかった。〔今の霊鷲寺の龍蔵殿が、縁会がかつて住んだ所である。〕
夾注 1
今霊鷲寺龍藏殿是縁㑹舊居.
今の霊鷲寺の龍蔵殿が、縁会がかつて住んだ所である。
2ここでも売れるのに遠くへ売りに行くのか
國主元聖王聞其瑞異欲徴拜爲國師.師聞之乃棄庵而遁.行跨西嶺嵓間有一老叟今爾耕問,“師奚適.”曰“吾聞,邦家濫聽縻我以爵故避之爾.”叟聽曰,“於此可賈,何勞逺售.師之謂賣名無猒乎.”㑹謂其慢己不聽.遂行数里許溪邉遇一媪問,“師何徃.”荅如初.媪曰,“前遇人乎.”曰“有一老叟侮予之甚愠且来矣.”媪曰,“文殊大聖也,夫言之不聽何.”㑹聞即驚悚遽還翁所扣顙陳悔曰,“聖者之言敢不聞命乎.今且還矣.溪邉媪彼何人斯.”叟曰,“辯才天女也”,言訖遂隠.
国主の元聖王がその瑞祥と不思議を聞き、召して国師に任じようとした。
法師はこれを聞いて、そこで庵を捨てて逃げた。
行って西の嶺を越えると、巌のあいだで一人の老人がちょうど田を耕していて、問うた。「師はどこへ行かれるのか。」
「私が聞くに、国が軽々しく噂を聞いて、私を爵で縛ろうとするので、避けるだけだ。」
老人が聞いて言った。「ここでも売れるのに、なぜ苦労して遠くまで売りに行くのか。師こそ名を売ることに飽きないというものだ。」
縁会は、彼が自分を侮っているのだと思って聞き入れなかった。
ついに数里ばかり行って、川辺で一人の老婆に会うと、問われた。「師はどこへ行かれるのか。」
初めと同じように答えた。
老婆が言った。「前で人に会いましたか。」
「一人の老人がいて、私をひどく侮ったので、腹を立てて来るところだ。」
老婆が言った。「文殊大聖です。そのお言葉を聞き入れないとは、どうしたことですか。」
縁会は聞いてすぐに驚き恐れ、急いで老人のいた所へ戻り、額を地にすりつけて悔いを述べて言った。
「聖者のお言葉を、あえて承らないことがありましょうか。いますぐ帰ります。川辺の老婆はどなたですか。」
老人が言った。「弁才天女である。」
言い終えると、ついに隠れた。
3ついに国師となる
乃還庵中,俄有天使賷詔徴之.㑹知業已當受乃應詔赴闕,封爲國師.〔僧傳云,“憲安王封爲二朝王師号照,咸通四年卒,”与元聖年代相朩,未知孰是.〕師之感老叟處因名文殊岾,見女處曰阿尼岾.讃曰.倚市難藏久陸沉,囊錐旣露括難禁.自縁庭下青蓮誤.不是雲山固未深.
そこで庵に帰ると、やがて天の使いが詔(みことのり)を携えて来て召した。
縁会は業がすでに受けるべきものであることを知り、詔に応じて宮闕に赴き、国師に封じられた。〔『僧伝』には、憲安王が二代の朝廷の王師に封じ、号を照(しょう)としたが、咸通四年に卒したとあり、元聖王の年代と互いに食い違うので、どちらが正しいか分からない。〕
法師が老人に感応した所をこれによって文殊岾と名づけ、女を見た所を阿尼岾(あにてん)という。
讃じて言う。
市に寄りかかっては久しく身を隠しがたく 袋の中の錐がすでに現れれば包みおおいがたい。 庭の下の青い蓮のせいで誤っただけであって 雲のかかる山がもとより深くないからではない。
夾注 1
僧傳云, “憲安王封爲二朝王師号照, 咸通四年卒,” 与元聖年代相朩, 未知孰是.
『僧伝』には、憲安王が二代の朝廷の王師に封じ、照(しょう)と呼び、咸通四年に卒したとあるが、元聖王の年代と互いに食い違うので、どちらが正しいか分からない。