密本が邪を砕く密本摧邪
1著者の名がここに記されている
國尊曹溪宗迦智山下麟角寺住持圓鏡冲照大禪師一然撰宻本摧邪善徳王徳曼遘疾弥留,有興輪寺僧法惕應詔侍疾乆而無効.時有宻本法師以徳行聞於國左右請代之,王詔迎入内.本在宸仗外讀藥師経.卷軸纔周,所持六環飛入寢内,刺一老狐與法惕倒擲庭下.王疾乃瘳,時本頂上發五色神光覩者皆驚.
国尊、曹渓宗、迦智山下の麟角寺住持、円鏡冲照大禅師一然が撰する。
密本(みつほん)が邪を砕く。
善徳王徳曼が病を得て、長く治らなかった。
興輪寺の僧の法惕(ほうてき)が詔に応じて病を看たが、久しく効がなかった。
そのとき密本法師が徳行によって国に知られていたので、左右が代わらせることを請うと、王は詔して宮中に迎え入れた。
密本は王の座の外で『薬師経』を読んだ。
巻物をようやく読み終えると、手に持っていた六環の杖が寝室の中に飛び込み、年老いた狐一匹と法惕を刺して、庭の下に逆さまに投げ落とした。
王の病はこれで癒えた。そのとき密本の頂の上に五色の神なる光が放たれ、見る者はみな驚いた。
2鬼たちが色を失う
又承相金良啚爲阿孩時,忽口噤體硬不言不遂.每見一大鬼率群小鬼来家中几有盤肴皆啖甞之.巫覡来祭則群聚而争侮之.啚雖欲命撤而口不能言.家親請法流寺僧亡名来轉經,大鬼命小鬼以鑯槌打僧頭仆地嘔血而死.隔數日遣使邀本,使還言,“夲法師受我請将来矣.”衆鬼聞之皆失色.小鬼曰,“法師至将不利避之何幸.”大鬼侮慢自若曰,“何害之有.”俄而有四方大力神皆属金甲長戟来捉群鬼而縛去.次有無數天神環拱而待,須臾夲至不待開経,其疾乃治語通身解具說件事.良啚因此篤信釋氏一生無怠,塑成興輪寺吳堂主彌陁尊像左右菩薩并滿金畫其堂.本甞住金谷寺.
また承相の金良図(きんりょうと)が子どもであったとき、突然口が閉じ、体が硬くなって、言うこともできず動くこともできなくなった。
常に大きな鬼が一匹、小さな鬼たちを率いて家の中に来て、膳にある肴をみな食べ、味わうのが見えた。
巫(ふ)が来て祭りをすると、群れ集まって争って侮った。
良図は退けさせたくても、口で言うことができなかった。
家の親が法流寺の名の分からない僧を請うて来させ、経を読ませると、大きな鬼が小さな鬼に命じて鉄の槌で僧の頭を打たせ、地に倒れて血を吐いて死なせた。
数日の後、人を遣わして密本を迎えに行かせた。その人が帰って言った。「密本法師が私の請いを受け、すぐに来られるそうです。」
鬼たちはこれを聞いて、みな色を失った。
小さな鬼が言った。「法師が至れば不利でしょうから、避けてはいかがでしょう。」
大きな鬼はなお侮って平然と言った。「何の害があろうか。」
やがて四方の大力の神がみな金の鎧を着け、長い戟を持って来て、鬼たちを捕らえて縛って行った。
次に数えきれない天の神が囲んで立って待った。
またたく間に密本が至り、経を開くまでもなくその病は癒えた。言葉が通じ、体が解けて、これらのことを取りそろえて語った。
良図はこれによって仏を篤く信じ、一生怠らなかった。興輪寺の呉堂の主仏である弥陀尊像と左右の菩薩を塑って仕上げ、あわせてその堂に金の絵を満たした。
密本はかつて金谷寺に住んだ。
3指を一度弾くと
又金庾信甞與一老居士交厚,世人不知其何人.于時公之戚秀天乆染惡疾,公遣居士診衞.適有秀天之舊名因惠師者自中岳来訪之,見居士而慢侮之曰.“相汝形儀邪侫人也,何得理人之疾.”居士曰,“我受金公命不獲已爾.”恵曰,“汝見我神通”,乃奉爐呪香,俄頃五色雲旋遶頂上天花散落.士曰,“和尚通力不可思議.弟子亦有拙技請試之.願師乍立於前.”恵従之.士弹指一聲,恵倒迸於空高一丈許,良乆徐徐倒下頭卓地屹然如植撅.旁人推挽之不動.士出去,惠猶倒卓逹曙.明日秀天使扣於金公,公遣居士徃救乃解.因恵不復賣技.讃曰.紅紫紛紛㡬乱朱,堪嗟.魚目誑愚夫.不因居士軽彈指,多小巾箱襲碔砆.
また金庾信(きんゆしん)がかつて一人の年老いた居士と厚く交わったが、世の人は彼が何者か分からなかった。
そのころ公の親戚の秀天(しゅうてん)が長く悪い病にかかっていたので、公は居士を遣わして診て看させた。
ちょうど秀天の旧友で因恵(いんえ)という僧が中岳から訪ねて来て、居士を見て侮って言った。
「お前の姿を見れば、邪で諂(へつら)う人だ。どうして人の病を治せようか。」
居士が言った。「私は金公の命を受けて、やむを得ず来ただけだ。」
因恵が言った。「お前は私の神通を見よ。」
そこで香炉を捧げて香に呪を唱えると、またたく間に五色の雲が頂の上を巡り、天の花が散り落ちた。
居士が言った。「和尚の通力は思いはかれない。弟子にも拙い技があるので、試してみることを請う。師はしばらく前に立ってほしい。」
因恵はそのとおりにした。
居士が指を一度弾いて音を立てると、因恵は空中に逆さまに跳ね上がり、一丈ばかり昇った。
しばらくして徐々に逆さまに下りて来て、頭が地に突き刺さり、杭を立てたように屹立した。
傍らの人が押しても引いても動かなかった。
居士が出て行ってしまうと、因恵はそのまま逆さまに突き刺さったままで夜明けに至った。
翌日、秀天が金公に知らせさせると、公は居士を遣わして行って解かせた。
これによって因恵は二度と技を売らなかった。
讃じて言う。
紅と紫が入り乱れて朱を乱そうとし 嘆くに堪える、魚の目玉が愚かな者を欺くとは。 居士が軽く指を弾かなかったならば どれほど多くの箱に偽の玉を包んでいたことか。