第8章 — 易性易性
1最も善いものは水のようだ
上善若水。水善利萬物而不爭,處眾人之所惡,
最も善いものは水のようだ。水は万物を利しながら争わず、多くの人が嫌うところに身を置く。
注 4
人惡卑也。
人は低いところを嫌う。
上善之人,如水之性。
最も善い人は、水の性質のようである。
水在天為霧露,在地為源泉也。
水は天に有れば霧や露となり、地に有れば泉となる。
眾人惡卑濕垢濁,水獨靜流居之也。
多くの人は低く湿って汚れ濁ったものを嫌うが、水だけは静かに流れてそこに留まる。
2だから道に近い
故幾於道。
だから道に近い。
注 2
道無水有,故曰,幾也。
道は無であり、水は有である。だから「近い」と言ったのである。
水性幾於道同。
水の性質は、道と同じであることに近い。
3争わないから、咎が無い
居善地,心善淵,與善仁,言善信,正善治,事善能,動善時。夫唯不爭,故無尤。
住むには地が善く、心は深いのが善く、与えるには仁(じん)が善く、言葉は信(しん)が善く、治めるには治まることが善く、事は能(のう)が善く、動くには時(とき)が善い。ただ争わないからこそ、咎(とが)が無い。
注 10
言人皆應於治道也。
人は誰もが治めの道に応ずべきだという意味である。
水性善喜於地,草木之上即流而下,有似於牝動而下人也。
水の性質は地を好み、草や木の上に来ればすぐ流れて下りていき、牝(めす)が動いて人より低くするのに似ている。
水深空虛,淵深清明。
水が深ければ空(から)であり、深い淵は清らかで明るい。
萬物得水以生。與,虛不與盈也。
万物は水を得て生きる。与えるとは、空いているところに与え、満ちているところには与えないことである。
水內影照形,不失其情也。
水は内に影を映して形を現し、その実(じつ)のさまを損なわない。
無有不洗,清且平也。
洗えないものが無く、清らかでしかも平らである。
能方能圓,曲直隨形。
角(かど)にもなれ丸くもなれ、曲がりも直(すぐ)さも容(い)れ物の形に従う。
夏散冬凝,應期而動,不失天時。
夏には散り冬には凝(こ)り、時期に応じて動くので、天の時を失わない。
壅之則止,決之則流,聽從人也。
塞げば止まり、切り開けば流れ、人のするままに従う。
水性如是,故天下無有怨尤水者也。
水の性質がこうであるから、天下に水を怨み咎める者はいない。