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第五十一章 — 養徳養德

道徳経(道と徳を説く経典) 道德經 · 老子、注釈 王弼・河上公 · 紀元前4〜3世紀(王弼の注は3世紀) · 段落 6 · 漢字 72字 · 朗読 0.3分

道徳経(道と徳を説く経典) 徳経 八十一章、五千字。墓から出た帛書本は今日用いる版本と字が異なり、同じ句をめぐって読みの分かれる箇所が多い。王弼は哲学として、河上公は治めと養生として読む。

1道が生み、徳が養う

道生之,德畜之,物形之,勢成之。

道が生み、徳が養い、物が形づけ、勢(いきお)いが成す。

注 5
王弼

物生而後畜,畜而後形,形而後成,何由而生?道也;何得而畜?德也;何由而形?物也;何使而成,勢也。唯因也,故能無物而不形;唯勢也,故能無物而不成。凡物之所以生,功之所以成,皆有所由,有所由焉,則莫不由乎道也。故推而極之,亦至道也。隨其所因,故各有稱焉。

物は生まれたのちに養われ、養われたのちに形づけられ、形づけられたのちに成る。何によって生まれるのか。道である。何によって養われるのか。徳である。何によって形づけられるのか。物である。何が成らせるのか。勢いである。ただ従うだけなので、形づけられない物がなく、ただ勢いであるので、成らない物がない。およそ物が生まれるわけ、功が成るわけには、どれも由(よ)るところがあり、由るところがあるなら、道に由らないものはない。だから、推し進めて極めれば、やはり道に至る。その由るところに従って、それぞれに呼び名があるのである。

河上公

道生萬物。

道が万物を生む。

河上公

德,一也。一主布氣而蓄養。

徳とは一(いつ)である。一が気を布(し)いて蓄え養うことを主(つかさど)る。

河上公

一為萬物設形像也。

一が万物のために形と像(かたち)を設けるのである。

河上公

一為萬物作寒暑之勢以成之。

一が万物のために寒さと暑さの勢いを作り、それによって成らせるのである。

2道を尊び徳を貴ぶ

是以萬物莫不尊道而貴德。

だから万物は、道を尊び徳を貴ばないものがない。

注 2
王弼

道者,物之所由也。德者,物之所得也。由之乃得,故曰不得不失,尊之則害,不得不貴也。

道とは物が由(よ)るところであり、徳とは物が得るところである。由ってこそ得られるので、得ないわけにはいかないといい、尊ばなければ害があるので、貴ばないわけにはいかないのである。

河上公

道德所為,無不盡驚動,而尊敬之。

道と徳の為すことには、ことごとく驚き動かされないものがなく、それゆえにこれを尊び敬うのである。

3命じられなくても常におのずからそうである

道之尊,德之貴,夫莫之命而常自然。

道の尊さ、徳の貴さは、そもそも命(めい)じられなくても常におのずからそうなのである。

注 2
王弼

命並作爵。

命は爵(しゃく)とも書く。

河上公

道一不命召萬物,而常自然應之如影響。

道と一は万物を命じて召(よ)ばないのに、常におのずからそうであるように、影や響きのように応じる。

4覆い包む

故道生之,德畜之。長之育之,亭之毒之,蓋之覆之。

だから道が生み、徳が養い、育て伸ばし、留め熟させ、覆い包む。

注 2
王弼

謂成其實,各得其庇蔭,不傷其體矣。

その実(み)を成らせ、それぞれがその庇(ひ)と蔭(かげ)を得て、その体を傷めないようにすることをいう。

河上公

道之於萬物,非但生而已,乃復長養、成孰、覆育,全其性命。人君治國治身,亦當如是也。

道は万物に対して、ただ生むだけではなく、さらに育て養い、成らせ熟させ、覆い育てて、その性(さが)と命を全うさせる。君主が国を治め身を治めるのも、まさにこのようであるべきである。

5生んでも有たない

生而不有,為而不恃,

生んでも有(も)たず、為しても頼らず、

注 3
王弼

為而不有。

為しても有たないのである。

河上公

道生萬物,不有所取以為利也。

道が万物を生んでも、取って自分の利とするところがない。

河上公

道所施為,不恃望其報也。

道が施し為しても、その報いを望んで頼ることがない。

6これを玄なる徳という

長而不宰。是謂玄德。

育てても宰(つかさど)らない。これを玄(げん)なる徳という。

注 3
王弼

有德而不知其主也,出乎幽冥,是以謂之玄德也。

徳があってもその主(あるじ)を知ることができず、幽(かす)かで冥(くら)いところから出てくる。だから、これを玄なる徳というのである。

河上公

道長養萬物,不宰割以為利也。

道は万物を育て養っても、宰(さば)き割いて自分の利とすることがない。

河上公

道之所行恩德,玄闇不可得見。

道が施す恩徳は、玄(かす)かで暗く、見ることができない。