咸校勘子真の子石の硯に書く題咸校勘子眞子石硯
子石乃石中之石。精潤可愛。宜潑墨。江南人有以此作硯。寄玉堂李眉叟者。眉叟得之。輟贈咸公。咸公請予作詩。
子石は石の中の石である。細やかで艶があって愛らしく、墨がよく磨れる。江南の人がこれで硯を作り、玉堂の李眉叟に送った者があった。眉叟がそれを得て咸公に譲り渡した。咸公がわたしに詩を作ってほしいと頼んだ。
夾注 1
幷序
序を併せて付す。
君不見虎昌貞女眞可怜。一登蒼巘望夫廻。夫竟不廻身漸槁。化爲頑石立崔嵬。聞導當時抱兒去。兒應驚入阿孃懷。苔侵土蝕喪素質。歲久羌難辨頸腮。一夜雷公忽劃裂。中有麽石眞嬰孩。津津尙有流乳痕。縠理瓊肌宜硯材。南人斵作蟾蜍樣。題封寄與謫仙才。謫仙不忍自秘蓄。輟贈芸閣文章魁。謫仙此意似難負。君欲剩報宜何哉。濡毫潑墨贈之詩。一篇一字眞瓊瑰。
君は見なかったか、虎昌の貞女がまことに哀れだったのを 一度青い峰に登って夫の帰りを待ちながら 夫はついに帰らず、身は次第に枯れて 硬い石となって高く立った 聞けばその時、子を抱いて行ったというから 子もきっと驚いて母の懐に入ったのだろう 苔が侵し土が蝕んで元の姿を失い 歳月が長くて首と頬を見分けがたい ある夜、雷公が突然割り裂いたところ その中に小さな石があって、まことに幼子であった しっとりと今も乳の流れた跡があり 絹の肌理と玉のような肌が硯の材にふさわしい 南の人が削って蟾蜍の形に作り 上包みに書いて、流された仙人のような才子に送った 流された仙人は自分一人で秘めておくに忍びず 芸閣の文の第一人者に譲り渡した 流された仙人のこの思いは背きがたいようだから 君が十分に報いようとしても何でそうしようか 筆を浸し墨を散らして詩を贈れ 一編一字がまことに美しい玉である
夾注 1
武昌記云。有女抱兒望夫。因化石。
『武昌記』に、子を抱いて夫を待っていた女がいて、そのまま石になったとある。