いにしえの文 › 東国李相国集(東国の李相国の文集) › 前集 巻9
八月二十日、楞伽山の元暁房に書く八月二十日。題楞迦山元曉房。
東国李相国集(東国の李相国の文集) 前集 巻9 高麗の李奎報が生涯に作った文章を、子の李涵が1241年に編んで刻み、孫の李益培が1251年に改め補った文集。詩と賦、王に奉った表と箋、寺と塔に付けた記、碑銘と墓誌銘、手紙と序文、そしてモンゴルが攻め入った時に行き交った国書までが収められている。高句麗の始祖を歌った「東明王篇」が前集の巻3にあり、酒と琴と詩を友として自ら白雲居士と名のった人の一日一日が後集に残っている。書は、彼が目を病んで筆を置く最後の詩と、彼が死んだ後に他の人が作って付けた誄書・墓誌銘で閉じる。
邊山一名楞迦。昔元曉所居方丈。至今猶存。有一老比丘獨居修眞。無侍者。無鼎鐺炊爨之具。日於蘇來寺趁一齋而已。
辺山を楞伽山ともいう。昔元暁が住んだ方丈が今も残っている。老いた比丘が一人で住んで真を修めているが、侍者もなく、鼎や炊事の道具もない。日ごとに蘇来寺で斎の一食をもらうだけである。
夾注 1
幷序
序を併せた。
循山度危梯。疊足行線路。上有百仞巓。曉聖曾結宇。靈蹤杳何處。遺影留鵝素。茶泉貯寒玉。酌飮味如乳。此地舊無水。釋子難栖住。曉公一來寄。甘液湧巖竇。吾師繼高蹲。短葛此來寓。環顧八尺房。唯有一雙屨。亦無侍居者。獨坐度朝暮。小性復生世。敢不拜僂傴。
山に沿って危うい梯を渡り 足を重ねて糸のような路を行く 上に百仞の頂があって 元暁聖人がかつて家を結んだ 霊妙な跡は遥かにどこにあるのか 残された影が白絹に留まっている 茶を煮る泉に冷たい玉が貯まり 掬って飲むと味が乳のようだ この地には昔水がなく 僧が棲み住むのが難しかった 元暁公がひとたび来て身を寄せると 甘い水が岩の穴から湧いた わが師が高い座を継いで 短い葛の衣でここに来て住む 八尺の房を見回すと ただ履一足があるだけだ 侍って住む者もおらず ひとり座って朝夕を過ごす 小性居士がまた世に生まれたのだから どうして腰を屈めて拝まずにいられようか
夾注 1
曉師俗號小性居士。
元暁師の俗の号が小性居士である。