いにしえの文 › 東国李相国集(東国の李相国の文集) › 前集 巻11
全履之が訪ねて来て、ともに飲み、ひどく酔って贈る全履之見訪。與飮大醉贈之。
東国李相国集(東国の李相国の文集) 前集 巻11 高麗の李奎報が生涯に作った文章を、子の李涵が1241年に編んで刻み、孫の李益培が1251年に改め補った文集。詩と賦、王に奉った表と箋、寺と塔に付けた記、碑銘と墓誌銘、手紙と序文、そしてモンゴルが攻め入った時に行き交った国書までが収められている。高句麗の始祖を歌った「東明王篇」が前集の巻3にあり、酒と琴と詩を友として自ら白雲居士と名のった人の一日一日が後集に残っている。書は、彼が目を病んで筆を置く最後の詩と、彼が死んだ後に他の人が作って付けた誄書・墓誌銘で閉じる。
我家計拙酒錢空。我客才高交契密。貌甚閑暇來座隅。忍把淸談空遣日。典我身上藍縷衣。換此一壺淸且溢。觥船屢倒興復酣。有如狂馬泛駕欲奔軼。振搖林木我放歌。倒瀉江湖君縱筆。歌雪憤兮麁聲長。筆洩怒兮猛勢逸。何者是賢愚。何者是得失。得者未必賢。麞頭鼠目翔貴秩。失者未必愚。瑰意琦行栖蓬蓽。吾儕齷齪何足言。如子雄豪取爵不可必。神龍未起逋龍昇。左道乘時直道黜。與子論平生。平昔欝膓醉後盡嘔出。撫劒起舞坐更飮。一杯一杯聊復一。
我が家は暮らしが下手で酒代も尽き 我が客は才が高く、交わりは睦まじい いかにも暇そうな顔で座の隅にやって来たのに どうして清談だけでむなしく日を送れよう 我が身のぼろの衣を質に入れて この一壺の、澄んであふれる酒と換えた 大杯をたびたび傾けて興がまた酣になり 狂った馬が軛を外して走り出そうとするようだ 林の木を揺さぶって私は声を放って歌い 江湖を傾け注ぐように君は筆を振るう 歌で憤りを雪げば、荒い声が長く伸び 筆で怒りを洩らせば、猛る勢いが抜きん出る 何が賢く何が愚かなのか 何が得で何が失なのか 得た者が必ずしも賢いのではない 麞の頭に鼠の目をした者が高い位に翔ける 失った者が必ずしも愚かなのではない 立派な志と優れた行いが蓬の庵に隠れている 我らの小ささなど言うに足りないが 君のような豪傑でさえ、官を得られるとは限らない 神の竜が起たないうちに逃げた竜が昇り 邪な道が時を得て、直き道が退けられる 君と生涯を語り合い 日ごろ塞いでいた胸の内を、酔ったあとすっかり吐き出す 剣を撫でて立ち上がり舞い、座ってまた飲む 一杯、また一杯、そしてもう一杯