いにしえの文 › 東国李相国集(東国の李相国の文集) › 前集 巻17

黄驪の井泉寺の誼師の野景楼に題する題黃驪井泉寺誼師野景樓

東国李相国集(東国の李相国の文集) 東國李相國集 · 李奎報(イ・ギュボ) · 1241年(高麗・高宗28年)編 · 1251年に改め補う · 段落 1 · 漢字 168字 · 朗読 1.8分

東国李相国集(東国の李相国の文集) 前集 巻17 高麗の李奎報が生涯に作った文章を、子の李涵が1241年に編んで刻み、孫の李益培が1251年に改め補った文集。詩と賦、王に奉った表と箋、寺と塔に付けた記、碑銘と墓誌銘、手紙と序文、そしてモンゴルが攻め入った時に行き交った国書までが収められている。高句麗の始祖を歌った「東明王篇」が前集の巻3にあり、酒と琴と詩を友として自ら白雲居士と名のった人の一日一日が後集に残っている。書は、彼が目を病んで筆を置く最後の詩と、彼が死んだ後に他の人が作って付けた誄書・墓誌銘で閉じる。

吾師於物取之廉。獨向溪山不忌貪。幼出一樓高突兀。驅來萬景揔包含。耕犂細雨村情樂。樵笛殘陽野興酣。朝暮鳥聲門外樹。古今人影路傍潭。貼雲歸雁工先後。出水浮鷗忽兩三。壤品須看原膴膴。寺名都在井涵涵。月窺深室閑僧睡。谷答虛堂坐客談。陶暑涼軒何必北。召風巍榭最宜南。霽天霞色殷於火。曉店煙光翠似藍。早占淸幽君自適。晚逢佳勝我方慙。洗心投社如同隱。汲水煎茶尙可堪。儻有話頭鑽味處。不妨時喚老龐參。

わが師は物を取ることが廉いのに ひとり渓と山に対しては、貪ることを忌まない ひときわ高く、一つの楼を突兀と出し 万の景を駆り寄せて、すべて包み含めた 細い雨の中の耕しには、村の情趣が楽しく 沈む日の樵の笛には、野の興が熟れる 朝夕の鳥の声は、門の外の木にあり 今も昔も人の影は、路のほとりの潭に映る 雲に貼りついて帰る雁は、前後を巧みに並べ 水から出て浮かぶ鷗は、ふと二羽三羽 土の品は、やはり野が膴々と肥えているのを見るべきで 寺の名は、すべて井の涵々と湛えるところにある 月が深い室を覗くのに、閑かな僧は眠り 谷が虚ろな堂に応えるのに、座った客は語る 暑さを冶ます涼しい軒が、どうして必ず北でなければならぬのか 風を召ぶ高い榭は、南こそもっともふさわしい 晴れた天の霞の色は、火よりも殷く 暁の店の煙の光は、藍のように翠い 早くから清く幽かな処を占めて、君はみずから適っているが 遅れて佳い勝景に逢った私は、ちょうど恥ずかしい 心を洗って社に投じ、ともに隠れたようであるから 水を汲み茶を煎ることくらいは、なお堪えられる もし話頭を鑽って味わう処があるなら 時おり老いた龐居士を呼んで参じさせても差し支えない

夾注 1

師始作此樓。

師がこの楼を初めて建てた。