宗上人が南へ遊びに行くのを送って書いた序送宗上人南遊序
釋子有源宗者將南遊。來告行。乞詩與序甚勤。予謂之曰。道境至空。無有東西。凡浮屠者。必虛舟其心。浮雲其跡。不以東西去住爲想者也。子之告行於予。實空門之罪人也。予唯以目擊送之。猶爲道境之一點痕纇。況此區區者乎。雖然。子欲之。吾不可無辭以贈。請言之曰。夫我以忘懷待之。雖有情之物。泯然無情。我以有想傾之。雖無情之物。反爲有情。子以山水爲可賞。抑以江南爲山水之最者。而今有是遊也。若懸懸傾佇。持地往觀。則山益佳水益美。莫不含情作態。媚嫵於前後。煙岫焉呈翠眉之脩嫮。淸湖焉作淡粧之嬋妍。水樂交奏。松絃雜彈。上人於是應接不暇。忘寢廢食。雖欲豁斷而來。奈彼牽引不放何。然則其與世之嗜色耽聲者。何以別乎。情之所著。一也。子去觀之。若果有山水之牽於目著於心。將挽引而不放者。當以吾言酌損之。視山水如糞溷。悠悠然亟復人間。還與吾輩雜遊。視紅塵如靑山綠水。然後可謂得道者也。贈詩曰。一片白雲閑。隨風落底山。東西本無繫。好去好來還。
釈子のなかに源宗という者が、これから南へ遊びに行くというので、出立を告げ、詩と序をしきりに乞うた。私は彼に言った。
「道の境はきわめて空であって、東も西もない。およそ僧という者は、必ずその心を空の舟とし、その跡を浮雲として、東へ行き西へ行き留まることを思いとしない者だ。君が私に出立を告げるのは、まことに空門の罪人である。私がただ目で見送ることさえ、なお道の境に一点の傷となるのに、まして、このこまごまとしたことはどうか。
とはいえ君が望むのだから、私が言葉なしに贈ることはできない。言わせてもらおう。およそ私が心を忘れて向かえば、情のある物であってもはるかに情がなくなり、私が思いを寄せて傾けば、情のない物であってもかえって情が生じる。君は山水を愛でるに足ると思い、また江南を山水の第一と思って、いまこの旅がある。もし切に心を傾け、地を踏んで行って見るなら、山はいよいよ美しく水はいよいよ麗しく、情を含んで姿を作り、前後で媚びないものはないだろう。霧の峰は青い眉の長く美しいのを見せ、清い湖は薄化粧のあでやかさを作り、水の楽が奏で合い、松の弦が入り混じって鳴るだろう。上人はそこで応対にいとまなく、眠るのを忘れ食べるのをやめ、たとえからりと断ち切って帰ろうとしても、あれが引き留めて放さないのをどうしようか。それならば、世の色を好み音に溺れる者と、何で区別しようか。情が付くことは同じである。
君は行って見るがよい。もし本当に山水が目に引かれ心に付いて、これから引き留めて放すまいとするものがあれば、まさに私の言葉で量って減らせ。山水を見ることを糞や便所のようにし、ゆるゆると早く人の世に帰って、また私たちと混じって遊び、紅塵を見ることを青い山、緑の水のようにせよ。そうしてはじめて道を得た者といえる。」
詩を作って贈る。
一片の白い雲が閑かだが 風に従ってどの山に降りるのか 東も西ももとより繋がれたところがない よく行ってよく帰れ