いにしえの文 › 懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) › 巻8 辰巳錄

沈遊撃が過ぎ去った事柄と、諸陣に進んで討つ事を申し付けたこと、大きな軍が出て来るか否かを速やかに問うて指揮されることを請うた状啓沈遊擊過去辭緣及分付諸陣將爲進勦大兵出來與否速爲探問指揮狀

懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) 懲毖錄 · 柳成龍(リュ・ソンリョン) · 1633年刊行(壬辰倭乱の後に著す) · 段落 1 · 漢字 539字 · 朗読 4.7分

懲毖録(過ちを懲らし後の憂いを慎む記録) 巻8 辰巳錄 壬辰倭乱が終わった後、領議政の柳成龍が自らの目で見たものを記して残した記録。「過ぎたことを懲らして後の憂いを慎む」という意で名を付けた。戦争がどのように始まり、朝廷が何を見落としたかを言い逃れなく記した。李舜臣を推挙したこと、明の軍とのいざこざ、民が経た惨状がそのまま収められている。

昨日沈遊擊自林畔來宿定州今日向安州臣仍進去問安云聞老爺之行將到且聞大兵不遠亦來欲點檢一路芻糧且欲迎候老爺來此云則答云兵馬近將出來一路芻糧須多備閣老雖不得親去點檢別遣管下之員點檢云而不爲相見臣又令通事告之曰小邦人民渴望老爺之來久矣糧草當盡力措辦豈敢怠慢但老爺凡百之事明白分付軍馬之數及來到日期願詳示之遊擊答云馬草必須三百萬束可給俺同行徐相公當隨後來到專爲點視糧草願令此處官員眼同點檢云臣卽移文于調度使白惟咸使之進去良䇿等處若果徐相公稱號人來到卽便同爲點閱以副其言臣之愚昧固難察微知著然自前每疑唐將處置有不可知今見沈遊擊擧措亦甚可疑大扺自古救人與望梂於人其情不同。中國之欲討倭賊不過爲中國求息兵而已豈諒其憫迫如此乎臣近觀各陣將士皆有一戰之心且以冬節向盡事勢益蹙不可等待遷延故約束將士整理器械爲進取之計已分遣精卒勦擊於大同越邊且聞平壤之賊夏間所入室廬盡撤牆壁今則以糖禾藁草編排障遮正好火攻數日前巡察使李元翼親巡三縣諸陣約誓將士而回矣今又沈遊擊將又入城中若累日遷延而其間事變或出於意慮之外則將士之心未必不怠軍機重事亦不無漏泄之患不勝憂慮伏聞禮曹判書尹根壽已爲出來大兵出來與否亦必親見可知。朝廷以此等悶迫不容遷延辭緣明白說與主管唐將如宋侍郞之類聽其决語速有指揮毋令益失機會前頭之事庶有稅駕之所

昨日、沈遊撃が林畔から来て定州で泊まり、今日、安州へ向かいました。臣はそこで進んで問安し、「老爺のお越しがこれから至られると申し、また大きな軍がほどなく来ると申しますので、一つの路の草と糧を点検し、また老爺をお迎えしようとここに参りました」と申しました。すると答えて「軍馬が近く出て来るから、一つの路の草と糧を必ず多く備えよ。閣老が自ら行って点検することはできないが、別に管下の員を遣わして点検させよう」と申し、互いに会いませんでした。

臣はまた通事に告げさせて「小国の民が老爺のお越しを渇くように望んで久しいのです。糧と草は当然力を尽くして備えますから、どうして敢えて怠りましょうか。ただ老爺が諸事を明らかに申し付けられ、軍馬の数と至られる日付を詳しくお示しくださるよう望みます」と申しました。遊撃が答えて「馬の草は必ず三百万束あってこそ十分に給せる。私と同行する徐相公が後から至ってもっぱら糧と草を見るであろうから、この地の官員に共に目で点検させよ」と申しました。臣はすぐ調度使の白惟咸に移文して良策などの地へ進ませ、果たして徐相公と称する人が至ればただちに共に点閲してその言葉に副わせました。

臣は愚かで暗いのですから、まことに微かなものを察して顕かなものを知ることは難しいのです。しかし先から常に明の将の処置に知り得ないところがあると疑っておりましたが、今、沈遊撃の挙措を見ますと、これもひどく疑わしいのです。おおよそ昔から人を救うことと人に救いを望むことは、その情が同じではありません。中国が倭賊を討とうとするのは、中国のために兵を休ませようとするに過ぎませんから、どうして我らの悩ましく迫られることがこのようであることを量りましょうか。

臣が近ごろ各陣の将と士を見ますと、みな一度戦う心があります。また冬の節が尽きようとして事の形勢がいよいよ縮み、待って引き延ばすことはできませんので、将と士に約束し、器械を整えて進んで取る計策としました。すでに鋭い卒を分け遣わして大同江の向こう岸で撃ち殺しました。また聞きますに、平壌の敵が夏に入った家々は墻と壁をすべて撤し、今は唐黍の茎と藁で編み並べて障り遮っていると申しますので、まさに火で攻めるのに好いのです。数日前、巡察使の李元翼が自ら三県の諸陣を巡って将と士に誓いを約して帰りました。

今また沈遊撃がこれから城の中へ入ろうとしております。もし幾日も引き延ばすうちに、その間に事の変が思いの外から出れば、将と士の心が怠らないとは言えず、軍機の重い事も漏れ洩れる患いがないとは言えませんので、憂慮に堪えません。

伏して聞きますに、礼曹判書の尹根寿がすでに出て来たと申しますので、大きな軍が出て来るか否かも必ず自ら見て知ることができるでしょう。朝廷からこのような悩ましく迫って引き延ばせない事柄を、宋侍郎のような主管する明の将に明らかに申し与えられ、その決する言葉を聴いて速やかに指揮され、機会をこれ以上失わないようにしてください。そうすれば、これからの事にもほぼ軛を解く所があるでしょう。