沈遊撃が敵中から出て来た事を申し上げる状啓沈遊擊自賊中出來狀
昨日金至貴及本國通事金善慶等自龍山舟師到此沈遊擊則取道江華直向開城又有吳宗道者亦自龍山馳過皆云向宋經略所在處查總兵以沈遊擎不來見已而去責怒不已且謂譯官張翰等曰沈遊擊所爲我全不知之此意須言於體察使云云臣問善慶以遊擊所爲則云到船招平行長與言而淸正亦欲相見講和遊擊不肯因以書字往來問答而秘不得見但聞遊擊欲取禀於宋爺而定行長問還期則遊擊以來月初八日爲限而還云又據京畿水使李蘋馳報謄書周弘謨上提督書一紙其爲講解似非虛語前日。下送榜文都元帥金命元則欲卽入送于城中而臣意沈遊擊方在其處萬一此書傳於賊中如淸正者出示遊擊責其與行長等私約則恐天將大有慍怒而事有難處且此榜文大書踏印亦恐賊疑其行間而不爲深信則反致敗事故姑未發送觀勢處置計料臣自。天兵退去之後與都元帥金命元相議約束於諸將使丁傑李蘋金千鎰等以舟師橫截於江口夜間乘潮以各陣所造龜船載火炮攻破漢江浮橋使不得恣意往來而又令義兵將李山輝朴惟仁及秋義使禹性傳精抄軍人三江高陽等處詳知地形之人細探賊勢然後欲圖龍山先破倉糓屯守之賊則餘賊自衰雖未知果能成事與否而諸陣則皆受指揮方謀進取適又有沈遊擊往來之事軍心日解極爲痛悶且自今日至來月初八日中間更有二十日其間各處軍馬坐食之費亦無紀限而春盡夏來此後變故又安可預料臣晝夜憂慮不勝悶迫之至數日前得於道路聞全羅水使李舜臣邀擊出來倭船於釜山亂近處又爲勝捷多奪賊船軍糧云公文未到時未知虛實而此言果實則賊方運糧於其處兇謀所在實爲叵測而我國舟師適又撞破以挫其勢其幸實大緣係軍機先以所聞幷達
昨日、金至貴と我が国の通事金善慶らが龍山の水軍の陣からここへ至りました。沈遊撃は江華へ道を取ってまっすぐ開城へ向かい、呉宗道という者も龍山から馬を駆って通り過ぎましたが、みな宋経略のいる所へ行くと申しました。査総兵は、沈遊撃が来て会いもせずそのまま行ってしまったことを責め怒ってやまず、訳官張翰らに、「沈遊撃のすることはわたしがまったく知らない。この意を必ず体察使に言え」と申しました。
臣が金善慶に遊撃のしたことを問いますと、こう申しました。船に至って平行長を呼んで語り、清正も互いに会って和を語ろうとしたが遊撃は聞き入れず、それで書で遣り取りして問い答えたが、隠されて見ることができなかったとのことです。ただ、遊撃が宋爺に伺って定めようとしていると聞いており、行長が帰る期を問うと、遊撃は来月八日を限りとして帰ったとのことです。
また京畿水使李蘋が馬を駆って告げたところにより、周弘謨が提督へ上げた書一枚を写して上げ送ります。和を成そうとしているのは空言ではないように思われます。
先に下し送られた榜文を、都元帥金命元はただちに城の中へ入れ送ろうとしましたが、臣の考えますに、沈遊撃がまさにその地にいるのですから、もしこの書が敵中へ伝わって、清正のような者が遊撃に見せて、行長らと私かに約したことを責めるなら、明の将が大いに怒って事が処しがたくなるのではないかと恐れます。またこの榜文は大きな字で書いて印を押しましたので、敵がこれを間を入れようとするものだと疑って深く信じなければ、かえって事を誤ることになるのではないかと恐れます。ですからまだ送らず、形勢を見て処する考えでおります。
臣は明の軍が退いて行った後、都元帥金命元と互いに議して諸将に約束しました。丁傑・李蘋・金千鎰らに水軍で川口を横から遮らせ、夜中に潮時に乗じて各陣で造った亀船に火砲を載せ、漢江の舟橋を打ち壊して、敵が勝手に往き来できないようにしました。また義兵将李山輝・朴惟仁と秋義使禹性伝に兵を選び抜かせ、三江・高陽などの地の地形を詳しく知る人で敵の形勢を細かく察させた後、龍山を図って、倉の穀を置いて守る敵をまず破ろうとしました。そうすれば残った敵はおのずから衰えるでしょう。
果たして事を成し得るかはわかりませんが、諸陣がみな指揮を受けてまさに進んで取ることを謀っておりましたのに、たまたままた沈遊撃が往き来する事があって、兵たちの心が日ごとに緩みますので、きわめて心が焦がれます。また今日から来月八日までに、その間に改めて二十日がありますから、その間に処々の軍馬が座して食う費えも限りがなく、春が尽きて夏が来れば、この後の変事をまたどうして前もって計れましょうか。臣は夜も昼も憂えて、やりきれず差し迫った思いに堪えません。
幾日か前に路上で聞き得ましたに、全羅水使李舜臣が釜山の近くへ出て来た倭船を迎え撃ってまた勝ち、敵の船と軍糧を多く奪ったとのことです。公文が至っておらず、まだ虚実はわかりませんが、この言葉が果たして実であれば、敵はまさにその地へ糧を移しているのですから、凶い謀がどこにあるのか、まことに測りがたいのです。我が国の水軍がたまたままた衝き破ってその勢いを挫きましたので、その幸いはまことに大きいのです。軍の機に関わる事でありますから、まず聞いたところをあわせて申し上げます。
夾注 1
同日
同じ日。