咸鏡道の巡察使と北道の兵使に送った文移咸鏡道巡察使北道兵使文
有人來言本道之弊其中甲士正兵中凡赴防者幸有疾病事故輒不到防遷延一朔則倍退立二朔前番未畢後番隨之何暇治農業哉此人逃亡則侵漁一族一族逃亡則及於一族之一族切隣之切隣是以一人之故而民悉流亡退立闕番長在道上民寃不貲極爲寒心各別變通善爲處置俾無如此之弊北方守令等或拘一時之利害誘致藩胡之有罪者便加誅戮鎭將自以爲能事閫師亦以爲當然作爲常規每有是擧誠不知一再誘殺之後更無可欺之方誘術有限變生無竆他日之患未必不由於誘殺大槪邊和之失皆出於處置之失宜况加之以誘殺無理之事乎今後申勅如有誘殺藩胡自以爲功者逐一捉囚重論嚴明禁斷勿使激成邊釁
ある人が来て本道の弊を言った。そのうち甲士と正兵で、およそ守りに赴く者が、あるいは病や差し障りがあってたちまち守りに至れず、一月を引けば倍に繰り延べて立たせ、二月であれば前の番が終わる前に後の番が続くという。どの暇に農を治めるであろうか。この人が逃げれば一族を侵し取り、一族が逃げれば一族の一族、近い隣の近い隣にまで及ぶ。このため一人のために民がみな散り逃げ、繰り延べて立ち、番を空けて路の上に長くいるので、民の無念さを計ることができず、きわめて心寒い。格別に融通をつけ、よく処置してこのような弊がないようにせよ。
北方の守令らが、あるいは一時の利害に縛られて、藩胡のうち罪のある者を誘い連れて来てたちまち斬り殺す。鎭將は自ら能い事だと思い、閫師もまた当然だと思って常の規とし、いつもこのような挙を行う。一度二度誘い殺した後には、ふたたび欺く方途がないことを、まことに知らないのである。誘う術には限りがあり、変が生じることには際限がないので、後日の患いが誘い殺したことに由来しないとは言えない。おおむね辺境の和を失うことは、みな処置が宜しきを失ったことから出る。まして、そこに誘い殺す無理な事を加えるならばなおさらである。
今より後、重ねて戒め、もし藩胡を誘い殺して自ら功だと言う者があれば、一つ一つ捕らえ囚えて重く論じ、厳しく明らかに禁じ断って、辺境の隙を激して作らせるな。
夾注 1
「藩胡」は、辺境の近くに来て住んでいた女眞の部落を指す。