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火の神と伊耶那美の死迦具土神

古事記(古い事柄の記録) 古事記 · 太安万侶 · 712年(和銅5年) · 段落 3 · 漢字 565字 · 朗読 2.3分

古事記(古い事柄の記録) 上巻 日本で最も古い書物。天地が開けるところから始まり、神々の時代を経て推古天皇までの三巻。歌百五首が万葉仮名で記されており、漢字を意味ではなく音だけで用いた文章がまるごと残っている。日本書紀と同じ出来事を違えて記した箇所が多く、並べて読む値打ちが大きい。

1伊耶那岐が哭き、伊耶那美を葬る

故尒伊耶那岐命詔之:「愛我那迩妹命乎!謂易子之一木乎!」乃匍匐御枕方、匍匐御足方而哭時,於御淚所成神,坐香山之畝尾木本,名泣澤女神。故其所神避之伊耶那美神者,葬出雲國与伯伎國堺比婆之山也。

そうして伊耶那岐命(いざなきのみこと)は詔(みことのり)されました。「愛(いと)しいわが妹(いも)の命(みこと)よ。子の一つと易(か)えたというのか」。

御枕(みまくら)のほうに匍匐(はらば)い、御足(みあし)のほうに匍匐って哭(な)かれたとき、その御涙に成った神が、香山(かぐやま)の畝尾(うねお)の木の本(もと)に坐(ま)します。名は泣澤女神(なきさわめのかみ)です。

そうして神避(かむさ)り坐した伊耶那美神は、出雲國(いずものくに)と伯伎國(ははきのくに)の境の比婆之山(ひばのやま)に葬りました。

夾注 1

那迩二字以音。下效此

「那迩」の二字は音で読みます。以下もこれに倣(なら)います。

2刀から生まれた神々(底本に重ねて載る箇所)

於是伊邪那岐命。拔所御佩之十拳劔斬其子迦具土神之頸。爾著其御刀前之血。走就湯津石村。所成神名石拆神。次根拆神。次石筒之男神。次著御刀本血亦走就湯津石村。所成神名。甕速日神。次樋速日神。次建御雷之男神。亦名建布都神。亦名豐布都神。次集御刀之手上血。自手俣漏出。所成神名。闇淤加美神。次闇御津羽神。 上件自石拆神以下。闇御津羽神以前。并八神者。因御刀所生之神者也。

そこで伊耶那岐命(いざなきのみこと)は、お佩(は)きになっていた十拳剣(とつかのつるぎ)を抜いて、その子、迦具土神(かぐつちのかみ)の頸(くび)を斬られました。

その御刀(みはかし)の前(さき)に着いた血が、湯津石村(ゆついわむら=神聖な岩群)に走り着いて成った神の名は、石拆神(いわさくのかみ)、次に根拆神(ねさくのかみ)、次に石筒之男神(いわつつのおのかみ)です。

次に、御刀の本(もと)に着いた血が、これもまた湯津石村に走り着いて成った神の名は、甕速日神(みかはやひのかみ)、次に樋速日神(ひはやひのかみ)、次に建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)、別の名は建布都神(たけふつのかみ)、また別の名は豊布都神(とよふつのかみ)です。

次に、御刀の手上(つか)に集まった血が、手の俣(また)から漏(く)き出て成った神の名は、闇淤加美神(くらおかみのかみ)、次に闇御津羽神(くらみつはのかみ)です。

以上の石拆神から闇御津羽神まで、あわせて八神は、御刀によって生まれた神です。

夾注 5

三神

三神です。

布都二字以音。下效此

「布都」の二字は音で読みます。以下もこれに倣(なら)います。

三神

三神です。

訓漏云久伎

「漏」は「くき」と読みます。

淤以下三字以音。下效此

「淤」から下の三字は音で読みます。以下もこれに倣います。

3刀から生まれた神々と、迦具土の身から生まれた山の神々

於是伊耶那岐命,拔所御佩之十拳釼,斬其子迦具土神之頸。尒著其御刀前之血,走就湯津石村,所成神名: 石拆神、次根拆神、次石筒之男神。 次,著御刀本血,亦走就湯津石村,所成神名: 甕速日神、次樋速日神、次建御雷之男神,亦名建布都神,亦名豊布都神。次,集御刀之手上血,自手俣漏出,所成神名:闇淤加美神、次闇御津羽神。上件自石拆神以下、闇御津羽神以前,并八神者,因御刀所生之神者也。 所殺迦具土神之於頭所成神名,正鹿山津見神; 次,於胸所成神名,淤縢山津見神; 次,於腹所成神名,奧山津見神; 次,於陰所成神名,闇山津見神; 次,於左手所成神名,志藝山津見神; 次,於右手所成神名,羽山津見神; 次,於左足所成神名,原山津見神; 次,於右足所成神名,戶山津見神。 故所斬之刀名謂天之尾羽張,亦名謂伊都之尾羽張。

そこで伊耶那岐命(いざなきのみこと)は、お佩(は)きになっていた十拳剣(とつかのつるぎ)を抜いて、その子、迦具土神(かぐつちのかみ)の頸(くび)を斬られました。

その御刀(みはかし)の前(さき)に着いた血が、湯津石村(ゆついわむら=神聖な岩群)に走り着いて成った神の名は、石拆神(いわさくのかみ)、次に根拆神(ねさくのかみ)、次に石筒之男神(いわつつのおのかみ)です。

次に、御刀の本(もと)に着いた血が、これもまた湯津石村に走り着いて成った神の名は、甕速日神(みかはやひのかみ)、次に樋速日神(ひはやひのかみ)、次に建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)、別の名は建布都神(たけふつのかみ)、また別の名は豊布都神(とよふつのかみ)です。

次に、御刀の手上(つか)に集まった血が、手の俣(また)から漏(く)き出て成った神の名は、闇淤加美神(くらおかみのかみ)、次に闇御津羽神(くらみつはのかみ)です。

以上の石拆神から闇御津羽神まで、あわせて八神は、御刀によって生まれた神です。

殺された迦具土神の頭に成った神の名は正鹿山津見神(まさかやまつみのかみ)、胸に成った神の名は淤縢山津見神(おどやまつみのかみ)、腹に成った神の名は奧山津見神(おくやまつみのかみ)、陰(ほと)に成った神の名は闇山津見神(くらやまつみのかみ)、左手に成った神の名は志藝山津見神(しぎやまつみのかみ)、右手に成った神の名は羽山津見神(はやまつみのかみ)、左足に成った神の名は原山津見神(はらやまつみのかみ)、右足に成った神の名は戶山津見神(とやまつみのかみ)です。

そうして斬った刀の名を天之尾羽張(あめのおはばり)といい、別の名を伊都之尾羽張(いつのおはばり)といいます。

夾注 11

三神

三神です。

布都二字以音。下效此

「布都」の二字は音で読みます。以下もこれに倣(なら)います。

三神

三神です。

訓漏云久伎

「漏」は「くき」と読みます。

淤以下三字以音。下效此

「淤」から下の三字は音で読みます。以下もこれに倣います。

上

上げて読みます。

淤縢二字以音

「淤縢」の二字は音で読みます。

上

上げて読みます。

志藝二字以音

「志藝」の二字は音で読みます。

自正鹿山津見神,至戶山津見神,并八神

正鹿山津見神から戶山津見神まで、あわせて八神です。

伊都二字以音

「伊都」の二字は音で読みます。