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龍宮赴宴録龍宮赴宴錄

金鰲新話(金鰲山で書かれた新しい話) 金鰲新話 · 金時習(キム・シスプ) · 1465〜1470年頃 · 段落 35 · 漢字 4,036字 · 朗読 16.1分

金鰲新話(金鰲山で書かれた新しい話) 龍宮赴宴錄 韓国で最も古い漢文小説であり、この書架に入る最初の朝鮮の書である。金時習が世を背いて慶州の金鰲山に隠れ住みながら著した。五編はどれも生きている人と死んだ者、この世とあの世が出会う話である — 仏と樗蒲を投げて妻を得たところ、倭寇に殺された魂であり(萬福寺樗蒲記)、垣を越えて結んだ縁が紅巾賊に断たれ、魂となって帰ってきて(李生窺牆伝)、浮碧楼で出会った女は箕子の娘だと言い、衛満に国を失ったことを語る(醉遊浮碧亭記)。南炎浮洲志は儒者が閻羅王と向かい合って座り、鬼神と輪廻をめぐって論じ、龍宮赴宴録は龍王の宴に呼ばれて上棟文を作る。五編の主人公はいずれも官途を閉ざされた士であり、彼らを認めてくれる者はあの世にしかいない。

松都有天磨山。其山高揷而峭秀,故曰天磨山。中有龍湫,名曰瓢淵,窄而深,不知其幾丈,溢而爲瀑,可百餘丈。景槪淸麗,遊僧過客,必於此而觀覽焉。夙著異靈,載諸傳記,國家歲時,以牲牢祀之。

松都に天磨山がある。その山が高く突き立ってそびえ秀でているので、天磨山という。そのなかに龍の淵があって瓢淵という。狭くて深く、幾丈あるか分からない。あふれて滝となり、百丈あまりになる。景色が清らかで美しいので、遊ぶ僧や行き過ぎる客は必ずここで眺める。古くから霊異が知られて伝記に載せられており、国では折々に犠牲を供えて祀る。

前朝有韓生者,少而能文,著於朝廷,以文士稱之。嘗於所居室,日晩宴坐,忽有靑衫▩頭郞官二人,從空而下,俯伏於庭曰:「瓢淵神龍奉邀。」生愕然變色曰:「神人路隔,安能相及?且水府汗漫,波浪相囓,安可利往?」二人曰:「有駿足在門,願勿辭也。」遂鞠躬挽袂出門,果有驄馬,金鞍玉勒,蓋黃羅帕,而有翼者也。從者皆紅巾抹額,而錦袴者十餘人。扶生上馬,幢蓋前導,妓樂後隨,二人執笏從之。其馬緣空而飛,但見足下煙雲苒惹,不見地之在下也。

前の朝に韓生という者がいて、若くして文が巧みで朝廷に知られ、文の士と称された。

あるとき、住む部屋で日が暮れてくつろいで座っていると、ふいに青い衫に□の頭巾をした郎官が二人、空から下りてきて庭に伏していった。「瓢淵の神龍がお迎えするよう申しつけられました。」

韓生は驚いて顔色を変えていった。「神と人は道が隔たっているのに、どうして互いに行き来できよう。それに水の府は果てしなく、波が互いに噛み合っているのに、どうやって無事に行けよう。」

二人はいった。「駿馬が門にございます。どうかお断りなさいませんよう。」

そうして身をかがめ袖を引かれて門を出ると、たしかに驄馬がいて、金の鞍に玉の勒をつけ、黄の羅の帕を掛けていて、翼があった。従う者たちはみな赤い巾で額を結び、錦の袴をはいた者が十人あまりであった。

韓生を支えて馬に乗せると、幢と蓋が前を導き、妓と楽が後に従い、二人が笏を執って付き従った。その馬が空に沿って飛ぶと、ただ足の下に煙と雲がたなびくのが見えるだけで、地が下にあるのは見えなかった。

〔「青い衫に」の次の一字が底本に欠けている。〕

頃刻間,已至於宮門之外,下馬而立。守門者,皆著彭蜞鰲鱉之甲,矛戟森然,眼眶可寸許。見生皆低頭交拜,鋪牀請憩,似有預待。二人趨入報之,俄而靑童二人,拱手引入。生舒步而進,仰視宮門,榜曰含仁之門。生纔入門,神王戴切雲冠,佩劍秉簡而下,延之上階,升殿請坐,卽水晶宮白玉牀也。生屈伏固辭曰:「下土愚人,甘與草木同腐,安得干冒神威,濫承寵接?」神王曰。「久望令聞,仰屈尊儀,幸毋見訝。」遂揮手揖坐,生三讓而登。神王南向,踞七寶華牀,生西向而坐。

わずかのあいだに、もう宮門の外に着いて、馬を下りて立った。

門を守る者たちはみな蟛蜞や鰲や鱉の甲を着け、矛と戟が厳めしく、眼の窪みが一寸ほどもあった。韓生を見るとみな頭を下げて拝み合い、床を敷いて休むよう請うたので、あらかじめ待っていたようであった。

二人が小走りに入って知らせると、やがて青い衣の童が二人、手を組んで導き入れた。韓生はゆっくり歩いて進みながら宮門を仰ぎ見ると、榜に「含仁之門」とあった。

韓生がやっと門に入ると、神王が切雲の冠をかぶり、剣を帯び、簡を執って下りてきて、上の階に迎え、殿に上がって座るよう請うたが、それは水晶宮の白玉の床であった。

韓生は身を屈めて伏し、固く辞していった。「下の土の愚かな人が、草や木とともに朽ちるのを甘んじていますのに、どうして神の威を犯して、みだりに御寵愛の遇し方を受けられましょう。」

神王はいった。「よい評判を久しく仰いでいたので、尊いお身を屈めてお越しいただいた。どうか怪しまないでほしい。」

そうして手を振って揖し、座るよう請うたので、韓生は三度辞してから上がった。神王は南に向かって七宝の華やかな床に腰を据え、韓生は西に向かって座った。

坐未定,閽者傳言曰:「賓至。」王又出門迎接。見有三人,著紅袍,承綵輦,威儀侍從,儼若王者。王又延之殿上。生隱於牖下,欲竢其定而請謁。王勸三人,東向揖坐而告曰:「適有文士在陽界,奉邀,諸君勿相疑也。」命左右引入,生趨進禮拜,諸人皆俛首答拜。生讓坐曰:「尊神貴重,僕乃一介寒儒,敢當高座?」固辭。諸人曰:「陰陽路殊,不相統攝,而神王威重,鑑人惟明,子必人間文章鉅公,神王是命,請勿拒也。」神王曰:「坐。」三人一時就坐。生乃跼蹐而登,跪於席邊。神王曰:「安坐。」座定,行茶一巡。

席がまだ定まらないうちに、門番がことばを伝えた。「お客さまがお着きです。」

王はまた門に出て迎えた。見ると三人いて、紅の袍を着て彩りの輦に乗り、威儀と侍従が厳めしく王のようであった。王はまた殿の上に迎えた。

韓生は窓の下に隠れて、彼らが落ち着くのを待って拝謁を請おうとした。王は三人に勧めて東に向かって揖して座らせ、こう告げた。「ちょうど文の士が陽の界にいたので迎えました。皆さんは怪しまないでください。」

左右に命じて導き入れさせると、韓生は小走りに進んで礼をして拝んだ。人々はみな頭を下げて答え拝んだ。

韓生は席を辞していった。「尊い神々は貴く重くあられ、私はひとりの貧しい儒者ですのに、どうして高い座に当たれましょう。」こう固く辞した。

人々はいった。「陰と陽は道が異なり、互いに治め合うものでもない。けれども神王の威は重く、人を鑑ることはただ明らかであられる。あなたはきっと人の世の文章の大家であろう。神王がこう命じられるのだから、拒まないでほしい。」

神王はいった。「座りなさい。」

三人は一度に席に着いた。韓生はおずおずと上がって席の端にひざまずいた。神王はいった。「ゆっくり座りなさい。」

席が定まると、茶を一巡り回した。

神王告曰:「寡人止有一女,已加冠笄,將欲適人,而弊居僻陋,無迎待之館,花燭之房,今欲別構一閣,命名佳會,工匠已集,木石咸具,而所乏者,上梁文耳。側聞秀才,名著三韓,才冠百家,故特遠招,幸爲寡人製之。」言未旣,有二丫童,一捧碧玉之硯,湘竹之管,一捧氷綃一丈,跪進於前。生俛伏而起,染翰立成,雲煙相糺。

神王はこう告げた。

「寡人には娘が一人だけあって、もう髪を結う年になり、これから人に嫁がせようと思っている。ところが粗末な住まいは片隅で狭く、迎えて遇する館も、華燭をともす房もない。

いま別に一つの閣を建てて「佳会」と名づけようと思い、工匠はもう集まり、木と石もすべて揃ったが、足りないのは上梁の文だけだ。

かたわらに聞けば、秀才の名は三韓に知られ、才は百家に冠たりという。だからわざわざ遠くから招いたのだ。どうか寡人のために作ってほしい。」

ことばが終わらないうちに、髪を結った童が二人いて、一人は碧玉の硯と湘竹の筆の軸を捧げ、一人は氷のような絹一丈を捧げて、前にひざまずいて差し出した。

韓生は身を屈めて伏してから立ち上がり、筆を潤して立ったまま仕上げたが、雲と煙が互いにからみ合うようであった。

其詞曰:「切以堪輿之內,龍神最靈,人物之間,配匹至重,旣有潤物之功,可無衍福之基,是以關雎好逑,所以著萬化之始,飛龍利見,亦以象靈變之迹。是用新構阿房,昭揭盛號,集蜃鼉而作力,聚寶貝以爲材,竪水晶珊瑚之柱,掛龍骨琅玗之梁,珠簾捲而山靄靑葱,玉戶開而洞雲繚繞。宜室宜家,享胡福於萬年,鼓瑟鼓琴,毓金枝於億世。用資風雲之變,永補造化之功,在天在淵,蘇下民之渴望,或潛或躍,祐上帝之仁心,騰翥快於乾坤,威德洽于遐邇,玄龜赤鯉,踊躍而助唱,木怪山魈,次第而來賀,宜作短歌,用揭雕梁。

その詞にいう、

「つつしんで思いますに、天と地のうちで龍の神がもっとも霊しく、人と物のあいだで配り合わせることがもっとも重いことです。すでに物を潤す功があるのですから、どうして福を広げる基がないことがありましょう。

こうしたわけで「関雎」のよき連れが万の化の始まりを表し、「飛ぶ龍を見るのが利い」というのもまた霊しい変化の跡に象ったものです。

そこで新たに阿房のような館を構えて盛んな号を明らかに掲げ、蜃と鼉を集めて力を出させ、宝と貝を集めて材としました。水晶と珊瑚の柱を立て、龍の骨と琅玗の梁を掛けました。珠の簾を巻き上げれば山の靄が青々とし、玉の戸を開けば洞の雲がたなびきめぐります。

室もよろしく家もよろしく、大いなる福を万年に享け、瑟を鼓し琴を鼓して、金の枝を億の世に育てられますよう。

風と雲の変化を資け、永く造化の功を補い、天にあっても淵にあっても下の民の渇く望みを蘇らせ、潜んでも躍っても上帝の仁の心を祐けられますよう。騰り翔けることは乾坤に快く、威と徳は遠近にゆきわたり、玄い亀と赤い鯉が躍って唱和を助け、木の怪と山の魈が次々に賀しに来ます。

よろしく短い歌を作って、彫った梁に掲げましょう。

抛梁東,紫翠岧繞撑碧空。一夜雷聲喧繞澗,蒼崖萬仞珠玲瓏。抛梁西,征轉巖廻山鳥啼。湛湛深湫知幾丈,一泓春水似玻瓈。抛梁南,十里松杉橫翠嵐。誰識神宮宏且壯,碧琉璃底影相涵。抛梁北,曉日初升潭鏡碧。素練橫空三百丈,翻疑天上銀河落。抛梁上,手捫白虹遊莽蒼。渤海扶桑千萬里,顧視人寰如一掌。抛梁下,可惜春疇飛野馬。願將一滴靈源水,四海便作甘雨灑。

梁を東に抛てば 紫と翠がはるかにそびえて碧い空を支える。 ひと夜の雷の声が澗をめぐって喧しかったが 蒼い崖の万仞に珠が玲瓏とする。

梁を西に抛てば 道は曲がり巖はめぐって山の鳥が鳴く。 湛々と深い淵は幾丈あるのか ひと溜まりの春の水が玻瓈のようだ。

梁を南に抛てば 十里の松と杉に翠の嵐が横たわる。 誰が知ろう、神の宮が大きく壮んであることを 碧い琉璃の底に影が互いに浸る。

梁を北に抛てば 明け方の日が初めて昇って潭の鏡が碧い。 白い練絹が空を横切って三百丈 かえって天の上の銀河が落ちたと疑う。

梁を上に抛てば 手で白い虹を撫でてはるかな処を遊ぶ。 渤海と扶桑は千万里なのに 人の世を振り返れば一つの掌のようだ。

梁を下に抛てば 惜しいことだ、春の畝に陽炎が飛ぶのが。 願います、ひと滴の霊しい源の水を取って 四海にそのまま甘い雨として灑いでください。

伏願營室之後,合巹之晨,萬福咸臻,千祥畢至,瑤宮玉殿,挾卿雲之靉靆,鳳枕鴦衾,聳歡聲之騰沸,不顯其德,以赫厥靈。」

伏して願います。室を営んだ後、合巹の朝に、万の福がことごとく集まり、千の祥がすべて至り、瑶の宮玉の殿に卿雲がたなびき、鳳の枕鴦の衾に歓びの声が沸き立って、その徳を顕わし、その霊を赫やかにされますよう。」

書畢進呈,神王大喜。乃命三神傳閱,三神皆嘖嘖歎賞。於是,神王開潤筆宴。生跪曰:「尊神畢集,不敢問諱。」神王曰:「秀才陽人,固不知矣。一祖江神,二洛河神,三碧瀾神也。余欲與秀才光伴,故相邀爾。」酒盡樂作,有蛾眉十餘輩,搖翠袖,戴瓊花,相進相退,舞而歌碧潭之曲曰:

書き終えて差し出すと、神王は大いに喜んだ。そこで三人の神に命じて回し見させると、三神はみな舌を鳴らして感嘆し讃えた。

そこで神王は筆を潤した礼の宴を開いた。韓生はひざまずいていった。「尊い神々がみなお集まりですのに、あえてお名をお伺いできません。」

神王はいった。「秀才は陽の人だから、まことに知らないであろう。一人めは祖江の神、二人めは洛河の神、三人めは碧瀾の神である。私が秀才とともに晴れの席を同じくしたいと思って、互いに招いたのだ。」

酒が尽きて楽が起こると、蛾の眉のような女が十人あまり、翠の袖を揺らし瓊の花を戴いて、進んだり退いたりしながら舞い、「碧潭の曲」を歌った。

靑山兮蒼蒼,碧潭兮汪汪。飛澗兮泱泱,接天上之銀潢。若有人兮波中央,振環珮兮琳琅。威炎赫兮煌煌,羌氣宇兮軒昻。擇吉日兮辰良,占鳳鳴之鏘鏘。有翼兮華堂,有祥兮靈長。招文士兮製短章,歌盛化兮擧脩梁。酌桂酒兮飛羽觴,輕燕回兮踏春陽。獸口噴兮瑞香,豕服沸兮瓊漿。擊魚鼓兮郞當,吹龍笛兮趨蹌。神儼然而在牀,仰至德兮不可忘。

青い山よ、蒼々として 碧い潭よ、ゆたかにたたえる。 飛ぶ澗よ、勢い深く 天の上の銀の川につながる。 人がいるようだ、波の中央に 環と珮を振れば琳琅と鳴る。 威と炎が赫々と煌めき ああ、気宇が高く昂る。 吉い日を択び良い辰を占って 鳳の鳴く鏘々の音を占う。 翼があって華やかな堂であり 祥があって霊が長い。 文の士を招いて短い章を作らせ 盛んな化を歌って長い梁を挙げる。 桂の酒を酌んで羽の觴を飛ばし 軽い燕がめぐって春の陽を踏む。 獣の口から瑞の香を噴き 器では瓊の漿が沸き立つ。 魚の鼓を撃てば朗々と響き 龍の笛を吹けば趨り舞う。 神は厳かに床におられるので 至れる徳を仰いで忘れられない。

舞竟,復有總角十餘輩,左執籥,右執翿,相旋相顧,而歌回風之曲曰:

舞が終わると、また総角の者が十人あまり、左に籥を執り右に翿を執って、互いにめぐり互いに顧みながら、「回風の曲」を歌った。

若有人兮山之阿,披薛荔兮帶女蘿。日將暮兮淸波,生細紋兮如羅。風瓢瓢兮鬢鬖*사,雲冉冉兮衣婆娑。周旋兮委蛇,巧笑兮相過。損余褋兮鳴渦,解余環兮寒沙。露浥兮庭莎,煙暝兮嶔峨。望遠峰之嵾嵯,若江上之靑螺。疏擊兮銅鑼,醉舞兮傞傞。有酒兮如泥,有肉兮如坡。賓旣醉兮顔酡,製新曲兮酣歌。或相扶兮相拖,或相拍兮相呵。擊玉壺兮飮無何,淸興闌兮哀情多。

人がいるようだ、山の阿に 薜荔を被って女蘿を帯びている。 日が暮れようとして清らかな波に 細かな紋が立って羅のようだ。 風がひらひらと吹いて鬢がほつれ 雲がゆらゆらとして衣が翻る。 めぐり回ってうねうねと 巧みに笑って互いに行き過ぎる。 私の褋を鳴る渦に捨て 私の環を寒い沙に解き置く。 露が庭の莎を潤し 煙が険しい山を暗ませる。 遠い峰のぎざぎざを望めば 江の上の青い螺のようだ。 疎らに銅の鑼を撃ち 酔って傞々と舞う。 酒があって泥のようで 肉があって坡のようだ。 賓はもう酔って顔が赤いので 新しい曲を作って興に歌う。 あるいは互いに支え互いに引き あるいは互いに拍ち互いに呵る。 玉の壺を撃って飲むのをどうしよう 清らかな興が尽きて哀しい情が多い。

〔「鬢がほつれ」の末の字を、底本が漢字の代わりに音「사」をハングルで書き留めている。〕

舞竟,神王喜抃,洗爵捧觥,致於生前,自吹玉龍之笛,歌水龍吟一闋,以盡歡娛之情。其詞曰:

舞が終わると、神王は喜んで手を打ち、爵を洗って觥を捧げ、韓生の前に至らせ、自ら玉龍の笛を吹いて「水龍吟」一曲を歌い、歓びの情を尽くした。その詞にいう、

管絃聲裏傳觴,瑞麟口噴靑龍腦。橫吹片玉一聲,天上碧雲如掃。響激波濤,曲翻風月,景閑人老。悵光陰似箭,風流若夢,歡娛又生煩惱。西嶺綵嵐初散,喜東峰氷盤凝灝。擧杯爲問,靑天明月,幾看醜好?酒滿金罍,人頹玉峀,誰人推倒?爲佳賓,脫盡十載雲泥臺鬱,快登蒼昊。

管と絃の音のなかで觴を回すと 瑞の麟の口から青い龍脳を噴く。 片の玉を横に吹けばひと声で 天の上の碧い雲が掃かれたようだ。 響きが波濤を打ち 曲が風と月をひるがえすので 景色は閑かなのに人は老いる。 切ない、歳月は矢のようで 風流は夢のようで 歓びがまた煩悩を生む。 西の嶺の彩りの嵐が初めて散り 嬉しや、東の峰に氷の盤が清らかに凝った。 杯を挙げて問おう 青い天の明るい月よ 醜いも好いも幾度見てきたのか。 酒は金の罍に満ち 人は玉の峀のように崩れるが 誰が推し倒したのか。 佳い賓のために 十年の雲と泥のような鬱ぎをすべて脱ぎ 快く蒼い昊に登ろう。

歌竟,顧謂左右曰:「此間伎戱,不類人間,爾等爲嘉賓呈之。」有一人,自稱郭介士,擧足橫行。進而告曰:「僕巖中隱士,沙穴幽人,八月風淸,輸芒東海之濱,九天雲散,含光南井之傍,中黃外圓,被堅執銳。常支解以入鼎,縱摩頂而利人。滋味風流,可解壯士之顔,形摸郭索,終貽婦人之笑。趙倫雖惡於水中,錢昆常思於外郡,死入畢吏部之手,神依韓晉公之筆。且逢場而作戱,宜弄脚以周旋。」卽於席前,負甲執戈,噴沫瞪視,回瞳搖肢,蹣跚趨蹌,進前退後,作八風之舞,其類數十,折旋俯伏,一時中節,乃作歌曰。

歌が終わると、左右を顧みていった。「ここの技や戯れは人の世のものとは違う。おまえたちは佳い賓のために見せてさしあげよ。」

一人の者がいて、自ら郭介士と称し、足を挙げて横に歩いた。進み出てこう告げた。

「私は巖のなかの隠れた士、沙の穴の幽かな人です。八月に風が清らかになれば東の海の浜に芒を運び、九つの天に雲が散れば南の井のかたわらで光を含みます。中は黄で外は円く、堅いものを着て鋭いものを執っています。

つねに体を解かれて鼎に入り、頂を摩られても人を利します。味と風流は壮士の顔をほどかせるに足り、形は郭索としてのこのこ歩くので、しまいには婦人の笑いを残します。

趙倫は水のなかの私を憎みましたが、錢昆はいつも外の郡を思いました。死んでは畢吏部の手に入り、精神は韓晉公の筆に寄りました。

また場に出会ったのですから戯れを演じるべきで、よろしく脚を弄して巡り回りましょう。」

そうして席の前で甲を背負い戈を執り、沫を噴いて目を見張り、瞳をめぐらし肢を揺らし、よたよたと小走りに前へ進み後へ退いて、「八風の舞」を舞った。その仲間数十が折れめぐり伏して、一度に拍子に合わせた。そこで歌を作った。

依江海以穴處兮,吐氣宇與虎爭。身九尺而入貢,類十種而多名。喜神王之嘉會,羌頓足而橫行。愛淵潛以獨處,驚江浦之燈光。匪酬恩而泣珠,非報仇而橫槍。嗟濠梁之巨族,笑我謂我無腸。然可比於君子,德充腹而內黃。美在中而暢四肢兮,螯流玉而凝香。羌今夕兮何夕,赴瑤池之霞觴。神矯首而載歌,賓旣醉而彷徨。黃金殿兮白玉牀,傳巨觥兮咽絲簧。弄君山三管之奇聲,飽仙府九盌之神漿。山鬼趠兮翺翔,水族跳兮騰驤。山有榛兮濕有笭,懷美人兮不能忘。

江と海に寄って穴に処るので 気宇を吐くことは虎と争う。 身は九尺あって貢ぎに入り 類は十種あって名が多い。 神王の嘉い会を喜んで ああ、足を踏み鳴らして横に歩く。 淵に潜んで独りいるのを愛し 江の浦の灯の光に驚く。 恩に酬いて珠を泣くのでもなく 仇に報いて槍を横たえるのでもない。 ああ、濠梁の巨きな族よ 私を笑って腸がないという。 けれども君子に比べられよう 徳が腹に充ちて内が黄なのだ。 美が中にあって四肢に暢びるので 螯は玉を流して香を凝らす。 ああ、今宵はどんな宵か 瑶池の霞の觴に赴く。 神が首を挙げて歌を載せると 賓はもう酔って彷徨う。 黄金の殿、白玉の床で 巨きな觥を伝えれば絲と簧がむせぶ。 君山の三つの管の奇しい声を弄し 仙の府の九つの盌の神しい漿に飽きる。 山の鬼は跳って翔けめぐり 水の族は跳ねて躍り上がる。 山に榛があり湿に笭があるので 美しい人を懐って忘れられない。

於是,左旋右折,殿後奔前,滿座皆輾轉失笑。戱畢,又有一人,自稱玄先生,曳尾延頸,吐氣凝眸,進而告曰:「僕蓍叢隱者,蓮葉遊人,洛水負文,已旌夏禹之功,淸江被網,曾著元君之策。縱刳腸以利人,恐脫殼之難堪。山節藻梲,殼爲臧公之珍,石腸玄甲,胸吐壯士之氣。盧敖踞我於海上,毛寶放我於江中。生爲嘉世之珍,死作靈道之寶。宜張口而呵呻,聊以舒千年藏六之胸懷。」卽於席前,吐氣裊裊如縷,長百餘尺,吸之則無迹,或縮頸藏肢,或引頸搖項,俄而,進蹈安徐,作九功之舞,獨進獨退,乃作歌曰。

そこで左にめぐり右に折れ、後ろへ退き前へ走ったので、座に満ちた者がみな転げて笑いを抑えられなかった。

戯れが終わると、また一人の者がいて、自ら玄先生と称し、尾を引き首を伸ばし、気を吐き瞳を据えて進み出てこう告げた。

「私は蓍の叢の隠れた者、蓮の葉の遊ぶ人です。洛水で文を背負って出て、すでに夏の禹の功を旌し、清い江で網にかかって、かつて元君の策を成しました。

腸を刳られて人を利するとはいっても、殻を脱がされるのは堪えがたいのではと恐れます。山の節、藻の梲に、殻は臧公の珍となり、石の腸、玄い甲は、胸から壮士の気を吐きます。

盧敖は海の上で私に踞り、毛寶は江のなかに私を放ちました。生きては世に嘉い珍となり、死しては霊しい道の宝となります。

よろしく口を開いて息を吐き、ひとまず千年のあいだ六つを蔵めた胸のうちを伸べてみましょう。」

そうして席の前で気を吐くと、ゆらゆらと糸のようで長さが百尺あまりになり、吸い込むと跡もなかった。あるいは首を縮めて肢を蔵め、あるいは首を引き出して項を揺らし、やがて進んで踏むことを安らかにゆるやかにして、「九功の舞」を舞った。独り進み独り退いて、そこで歌を作った。

依山澤以介處兮,愛呼吸而長生。生千歲而五聚,搖十尾而最靈。寧曳尾於泥途兮,不願藏乎廟堂。匪鍊丹而久視,非學道而靈長。遭聖明於千載,呈瑞應之昭彰。我爲水族之長兮,助連山與歸藏。負文字而有數兮,告吉凶而成策。然而多智有所危困,多能有所不及。未免剖心而灼背兮,侶魚蝦而屛迹。羌伸頸而擧踵兮,預高堂之燕席。賀飛龍之靈變,玩呑龜之筆力。酒旣進而樂作,羌歡娛兮無極。擊鼉鼓而吹鳳簫兮,舞潛虯於幽壑。集山澤之魑魅,聚江河之君長。若溫嶠之燃犀,慚禹鼎之罔象。相舞蹈於前庭,或謔笑而撫掌。日欲落兮風生,魚龍翔兮波滃泱。時不可兮驟得,心矯厲而慨慷。

山と沢に寄って甲で処るので 呼吸を愛して長く生きる。 千歳を生きて五つが聚まり 十の尾を揺らしてもっとも霊しい。 むしろ泥の途に尾を引こうとも 廟堂に蔵められることは願わない。 丹を錬って久しく視るのでもなく 道を学んで霊が長いのでもない。 千載に聖く明るい人に遭って 瑞しい応えを昭らかに呈する。 私は水の族の長であるので 「連山」と「帰蔵」を助けた。 文字を背負って数があるので 吉と凶を告げて策を成した。 けれども智が多ければ危うく困ることがあり 能が多ければ及ばないところがある。 心を剖かれ背を灼かれるのを免れないで 魚と蝦を侶として迹を屛めた。 ああ、頸を伸べ踵を挙げて 高い堂の燕の席に預かった。 飛ぶ龍の霊しい変化を賀し 亀を呑む筆の力を玩でる。 酒がもう進んで楽が起こり ああ、歓びは極まりがない。 鼉の鼓を撃ち鳳の簫を吹けば 幽かな壑に潜む虯が舞う。 山と沢の魑魅を集め 江と河の君長を聚めた。 溫嶠が犀を燃やしたようで 禹の鼎の罔象に慚じる。 前の庭で互いに舞い踏み あるいは謔い笑って掌を撫つ。 日が落ちようとして風が生じ 魚と龍が翔けて波がわき立つ。 時は驟かには得られないので 心は矯り厲んで慨慷する。

曲終,夷猶恍惚,跳梁低昻,莫辨其狀,萬座嗢噱。戱畢,於是,木石魍魎,山林精怪,起而各呈所能,或嘯或歌,或舞或吹,或忭或踊,異狀同音,乃作歌曰:

曲が終わると、ためらいながら恍惚として跳ねたり低く高くしたりして、その姿を見分けられなかったので、座じゅうがどっと笑った。

戯れが終わると、そこで木や石の魍魎、山林の精や怪が立って、それぞれ能くするところを見せた。あるいは嘯き、あるいは歌い、あるいは舞い、あるいは吹き、あるいは手を打ち、あるいは躍って、姿は異なるが声は一つにして、そこで歌を作った。

神龍在淵,或躍于天。於千萬年,厥祚延綿。卑禮招賢,儼若神仙。玩彼新篇,珠玉相聯。琬琰以鑴,千載永傳。君子言旋,開此瓊筵。歌以採蓮,妙舞躚翩。伐鼓淵淵,和彼繁絃。一棹航船,鯨吸百川。揖讓周旋,樂且無愆。

神龍が淵にあって あるいは天に躍り上がる。 千万の年にわたって その祚が永く続くだろう。 礼を卑くして賢を招くと 厳めしく神仙のようだ。 あの新しい篇を玩でれば 珠と玉が互いにつながっている。 琬や琰に鑴って 千載に永く伝えよう。 君子が帰ろうとするので この瓊の筵を開いた。 歌では蓮を採り 妙なる舞が翩々と翻る。 鼓を伐てば淵々と鳴り あの繁き絃と和する。 一つの棹で船を航らせれば 鯨が百の川を吸う。 揖し譲って巡り回り 楽しくて、しかも過ちがない。

歌竟,於是。江河君長,跪而陳詩,其第一座曰:

歌が終わると、そこで江と河の君長たちがひざまずいて詩を述べた。その第一の座がいった。

碧海朝宗勢未休,奔波汨汨負輕舟。雲初散後月沈浦,潮欲起時風滿洲。日煖龜魚閑出沒,波明鳧鴨任沈浮。年年觸石多鳴咽,此夕歡娛蕩百憂。’

碧い海へ朝宗する勢いはやまず 走る波がこうこうと軽い舟を背負う。 雲が初めて散った後、月が浦に沈み 潮が起ころうとするとき、風が洲に満ちる。 日が暖かくて亀と魚が閑かに出入りし 波が明るくて鳧と鴨が心のまま浮き沈む。 年ごとに石に触れてむせび泣くことが多かったが この夕べの歓びが百の憂いを洗い流す。

第二座曰:

第二の座がいった。

五花樹影蔭重茵,籩豆笙簧次第陳。雲母帳中歌宛轉,水晶簾裏舞逡巡。神龍豈是池中物,文士由來席上珍。安得長繩繫白日,留連泥醉艶陽春。

五つの花の木の影が重ねた茵を覆い 籩と豆、笙と簧が次々に並べられた。 雲母の帳のなかで歌は宛転とめぐり 水晶の簾のうちで舞は逡巡する。 神龍がどうして池のなかの物であろう 文の士はもとより席の上の珍である。 どうすれば長い縄を得て白い日を繋ぎ とどまって艶やかな陽春に泥のように酔えよう。

第三座曰:

第三の座がいった。

神王酩酊倚金牀,山靄霏霏已夕陽。妙舞傞傞廻錦袖,淸歌細細遶彫梁。幾年孤憤翻銀島,今日同歡擧玉觴。流盡光陰人不識,古今世事太忽忙。

神王は酩酊して金の床に寄りかかり 山の靄がしきりに立つなか、もう夕日である。 妙なる舞は傞々と錦の袖をめぐらし 清らかな歌は細々と彫った梁を回る。 幾年の孤りの憤りが銀の島をひるがえしたか 今日はともに歓んで玉の觴を挙げる。 歳月がすべて流れ去るのを人は知らず 古今の世の事はあまりにも忙しい。

題畢進呈,神王笑閱,使人授生。生受之跪讀,三復賞玩,卽於座前,題二十韻,以陳盛事,詞曰:

題し終えて差し出すと、神王は笑って閲し、人に韓生へ渡させた。韓生は受けてひざまずいて読み、三度繰り返して玩で、そのまま座の前で二十の韻を題して、盛んな事を述べた。その詞にいう、

天磨高出漢,巖溜遠飛空。直下穿林壑,奔流作巨淙。波心涵月窟,潭底悶龍宮。變化留神迹,騰拏建大功。煙熅生細霧,駘蕩起祥風。碧落分符重,靑丘列爵崇。乘雲朝紫極,行雨駕靑驄。金闕開佳燕,瑤階奏別鴻。流霞浮茗椀,湛露滴荷紅。揖讓威儀重,周旋禮度豊。衣冠文璨爛,環珮響玲瓏。魚鼈來朝賀,江河亦會同。靈機何恍惚,玄德更淵沖。苑擊催花鼓,樽垂吸酒虹。天姝吹玉笛,王母理絲桐。百拜傳醪醴,三呼祝華嵩。煙沈霜雪果,盤映水晶葱。珍味充喉潤,恩波浹骨融。還如湌沆瀣,宛似到瀛蓬。歡罷應相別,風流一夢中。

天磨は高く漢に出て 巖の滴りが遠く空を飛ぶ。 直ちに下って林と壑を穿ち 奔り流れて巨きな淙を作る。 波の心に月の窟を涵し 潭の底に龍宮を隠す。 変化は神しい迹を留め 騰り拏んで大きな功を建てた。 煙がたちこめて細かな霧が生じ のびやかに祥しい風が起こる。 碧い落で符を分かつことは重く 青丘で爵を列ねることは崇い。 雲に乗って紫の極に朝し 雨を行らせて青い驄に駕する。 金の闕に佳い燕を開き 瑶の階に別れの鴻を奏する。 流れる霞が茗の椀に浮かび 湛えた露が荷の紅に滴る。 揖し譲って威儀は重く 巡り回って礼度は豊かだ。 衣と冠の文は璨爛とし 環と珮の響きは玲瓏とする。 魚と鼈が朝して賀しに来て 江と河もまた会い同じくする。 霊しい機はなんと恍惚として 玄い徳はさらに淵く沖い。 苑では花を催す鼓を撃ち 樽には酒を吸う虹を垂れる。 天の姝は玉の笛を吹き 王母は絲の桐を理べる。 百たび拝んで醪と醴を伝え 三たび呼んで華と嵩のように祝う。 煙に沈む霜と雪のような果 盤に映る水晶のような葱。 珍しい味が喉を充たして潤し 恩の波が骨に浹みて融ける。 かえって沆瀣を餐したようで まるで瀛と蓬に到ったようだ。 歓びが罷めばきっと別れることになる 風流はひとつの夢のなかだ。

詩進,滿座皆歎賞不已。神王謝曰:「當勒之金石,以爲弊居之寶。」

詩を差し出すと、座に満ちた者がみな感嘆し讃えてやまなかった。神王は謝していった。「かならず金と石に勒んで、粗末な住まいの宝としよう。」

生拜謝,進而告曰:「龍宮勝事,已盡見之矣。且宮室之廣,疆域之壯,可周覽不?」神王曰:「可」。生受命,出戶盱衡,但見綵雲繚繞,不辨東西。神王命吹雲者掃之。有一人,於殿庭,蹙口一吹,天宇晃朗,無山石巖崖,但見世界平闊,如碁局,可數十里,瓊花琪樹,列植其中,布以金沙,繚以金墉,其廊廡庭除,皆鋪碧琉璃塼,光影相涵。

韓生は拝して謝し、進み出てこう告げた。「龍宮のすぐれた事は、もうすべて見せていただきました。それに、宮室の広さ、疆域の壮んなさまを、ひととおり眺めることはできましょうか。」

神王はいった。「よい。」

韓生は命を受けて戸を出て目を上げて望んだが、ただ彩りの雲がたなびきめぐって東西を見分けられなかった。神王は雲を吹く者に命じて掃わせた。一人の者が殿の庭で口をすぼめてひと吹きすると、天はからりと明るくなった。

山も石も巖も崖もなく、ただ世界が平らに広く、碁の局のようなのが数十里ばかり見えた。瓊の花と琪の樹がそのなかに列ねて植えられ、金の沙が敷かれ、金の墉がめぐらされていた。その廊や庭や階は、どれも碧い琉璃の塼を敷いて、光と影が互いに浸っていた。

神王命二人,指揮觀覽,行到一樓,名曰朝元之樓,純是玻瓈所成,飾以珠玉,錯以金碧,登之若凌虛焉。其層十級。生欲盡登,使者曰:「神王以神力自登,僕等亦不能盡覽矣。」蓋上級,與雲霄幷,非塵凡可及,生登七層而下。

神王は二人に命じて、指して眺めさせた。行って一つの楼に着くと、名は朝元の楼であった。すべて玻瓈でできていて、珠と玉で飾り、金と碧を交えてあって、上がると虚を凌ぐようであった。その層は十であった。

韓生がすべて上がろうとすると、使者はいった。「神王は神の力で自ら上がられますが、私たちもすべてを眺めることはできません。」

おおよそ上の層は雲の霄と並んで、塵の世の者が及べるものではなかった。韓生は七つの層まで上がって下りた。

又到一閣,名曰凌虛之閣。生問曰:「此閣何用?」曰:「此神王朝天之時,整其儀仗,飾其衣冠之處。」生請曰:「願觀儀仗。」使者,引至一處,有一物,如圓鏡,燁燁有光,眩目不可諦視。生曰:「此何物也?」曰:「電母之鏡。」又有鼓,大小相稱。生欲擊之。使者止之曰:「若一擊,則百物皆震,卽雷公之鼓也。」又有一物,如橐籥。生欲搖之。使者復止之曰:「若一搖,則山石盡崩,大木斯拔,卽哨風之橐也。」又有一物,如拂箒,而水甕在邊。生欲灑之。使者又止之曰:「若一灑,洪水滂沱,懷山襄陵。」生曰:「然則何乃不置噓雲之器?」曰:「雲則神王,神力所化,非機括可做。」生又曰:「雷公電母,風伯雨師,何在?」曰:「天帝囚於幽處,使不得遊,王出則斯集矣。」其餘器具,不能盡識。

また一つの閣に着くと、名は凌虚の閣であった。韓生は問うた。「この閣は何に使うのですか。」

こう答えた。「これは神王が天に朝されるとき、その儀仗を整え、衣と冠を飾られる処です。」

韓生は請うた。「儀仗を見たいのですが。」

使者が導いて一つの処に至ると、一つの物があって、円い鏡のようで、きらきらと光があり、目が眩んで細かに見ることができなかった。

韓生はいった。「これは何の物ですか。」

こう答えた。「電母の鏡です。」

また鼓があって、大きいのと小さいのが釣り合っていた。韓生が撃とうとすると、使者が止めた。「もしひとたび撃てば、百の物がみな震えます。すなわち雷公の鼓です。」

また一つの物があって、橐籥のようであった。韓生が揺らそうとすると、使者はまた止めた。「もしひとたび揺らせば、山と石がことごとく崩れ、大きな木が抜けます。すなわち風を哨ぶ橐です。」

また一つの物があって、払子のようで、かたわらに水の甕があった。韓生が灑ごうとすると、使者はまた止めた。「もしひとたび灑げば、洪水が滂沱として、山を抱き陵を越えます。」

韓生はいった。「それならば、どうして雲を噓く器は置いていないのですか。」

こう答えた。「雲は神王の神の力で化されるもので、機のしかけで作れるものではありません。」

韓生はまたいった。「雷公と電母、風伯と雨師はどこにいるのですか。」

こう答えた。「天帝が幽かな処に囚えて、遊べないようにしておられます。王が出られればすぐに集まります。」

そのほかの器具は、すべて知ることができなかった。

又有長廊,連亘數里,戶牖鎖以金龍之鑰。生問:「此何處?」使者曰:「此神王,七寶之藏也。」周覽許時,不能遍見。生曰:「欲還。」使者曰:「唯。」生將還,其門戶重重,迷不知其所之,命使者而先導焉。

また長い廊があって数里に連なっていたが、戸と窓を金の龍の鑰で鎖していた。韓生は問うた。「ここはどこですか。」

使者はいった。「これは神王の七宝の蔵です。」

しばらく巡り眺めたが、すべては見られなかった。韓生はいった。「帰りたいのですが。」使者はいった。「はい。」

韓生が帰ろうとすると、その門と戸が幾重にもなっていて、行く先が分からなかったので、使者に命じて先に導かせた。

生到本座,致謝於王曰:「厚蒙恩榮,周覽佳境。」再拜而別。於是,神王以珊瑚盤,盛明珠二顆,氷綃二匹,爲贐行之資,拜別門外。三神同時拜辭,三神乘輦直返。復命二使者,持穿山簸水之角,揮以送之。一人謂生曰:「可登吾背,閉目半餉。」生如其言。一人揮角先導,恰似登空,唯聞風水聲,移時不絶,聲止開目,但偃臥居室而已。

韓生はもとの座に着いて、王に謝していった。「恩と栄えを厚く賜り、佳い境をひととおり眺めました。」二度拝んで別れた。

そこで神王は珊瑚の盤に明るい珠二顆と氷のような絹二匹を盛って、道行きの資とし、門の外で拝んで別れた。三神も同時に拝して暇を告げ、三神は輦に乗ってまっすぐ帰った。

また二人の使者に命じて、山を穿ち水を簸る角を持たせ、それを振って送らせた。一人が韓生にいった。「私の背にお乗りになって、しばらく目を閉じてください。」

韓生はそのことばのとおりにした。一人が角を振って先を導くと、ちょうど空に登るようであった。ただ風と水の音だけが聞こえてしばらく絶えなかったが、音がやんで目を開けると、ただ住む部屋に横になっていただけであった。

生出戶視之,大星初稀,東方向明,鷄三鳴而更五點矣。急探其懷而視之,則珠綃在焉。生藏之巾箱,以爲至寶,不肯示人。其後,生不以名爲懷,入名山,不知所終。

韓生が戸を出て見ると、大きな星が初めて疎らになり、東の方が明るんできて、鶏が三度鳴いて五更の五点であった。

急いで懐を探って見ると、珠と絹があった。韓生はそれを巾の箱に蔵めて至宝とし、人に見せようとしなかった。

その後、韓生は名を心にかけず、名のある山に入ったが、どこで終わったかは分からない。