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巻二元朝秘史 卷02

元朝秘史(モンゴルの秘められた歴史) 元朝秘史 · 作者未詳 · 子年(1228年頃)成立 · 明初の漢文本 · 段落 27 · 漢字 4,000字 · 朗読 16.0分

元朝秘史(モンゴルの秘められた歴史) 全一巻 「はじめ元の人の祖先は、天が生んだ青い色の狼一匹であった」 — モンゴルの人が自らの手で記した最も古い書。テムジンが九歳で父を失って捨てられたところから始まり、オノン川の水に顔だけを出して夜を越え、羊毛の車に隠されて生き延び、ついに九本脚の白い旗を立てるまでが収められている。母ホエルンが両の乳を出して息子たちを叱り、ジャムカが「四匹の犬」を並べ立て、血を流さずに殺してほしいと請う場面は、正史が消した声である。元史高麗伝と対になる位置に置かれる。

1ムンリクがテムジンを迎えに来る

蒙力克依也速該去對德薛禪說:「也速該想帖木真,好生心疼,教我來取。」德薛禪說:「既是想呵,教去見了便回。」遂引將回去了。

ムンリクはイェスゲイの言葉のままにデイ・セチェンのもとへ行って言った。「イェスゲイがテムジンを思ってひどく心を痛め、わたしを迎えに来させました」。デイ・セチェンが言った。「それほど思っているのなら、行って会ったらすぐに帰らせなさい」。そうして連れて帰った。

2祭りの肉をもらえなかったホエルン

那年春間,俺巴孩皇帝的兩個夫人斡兒伯、莎合臺祭祀祖宗時,訶額侖去得落後了,祭祀的茶飯不曾與。訶額侖對說:「也速該死了,我的兒子將來怕長不大麽道?大的每的胙肉分子為甚不與?眼看看的茶飯不與了,起營時不呼喚的光景做了也?」

その年の春、アンバガイ皇帝の二人の夫人オルベイとソカタイが祖先を祭ったとき、ホエルンが遅れて行ったので、祭りの食べ物を分けてもらえなかった。ホエルンが言った。「イェスゲイが死んだからといって、わたしの子らが先々大きくなれまいと思うのか。年長の者に分ける祭りの肉の分け前を、どうして与えないのか。目の前で見ていながら食べ物を与えないのは、営を移すときにも呼ばないつもりということか」。

3二人の夫人の言い返し

斡兒伯、莎合臺那兩個夫人道:「你行無請喚的禮,遇著茶飯呵便吃。俺巴孩皇帝死了麽道,被訶額侖這般說?

オルベイとソカタイの二人の夫人が言った。「おまえは請い招かれる礼もなく、食べ物があればすぐ食べようとする。アンバガイ皇帝が死んだからといって、ホエルンにこんなことを言われるとは」。

4置き捨てて去ったタイチウド — 槍に刺されたチャラカ老人

「論來呵,可將這母子每撇下在營盤裏,休將他行!」第二日起行時,塔兒忽吉乞鄰禿黑、脫朵延吉兒帖等,果然將他母子每撇下了。當有察剌合名字老人勸時,脫朵延吉兒帖說道:「深水幹了,明石碎了。」不從他勸,起子,又將察剌合老人脊背上刺了一槍。

「こうなった以上、この母子たちを営の跡に置き捨てて、連れて行くのはやめよう」。翌日立つとき、タルグタイ・キリルトゥクとトドエン・ギルテらは、まことにその母子たちを置き捨てて行った。チャラカという名の老人が諫めると、トドエン・ギルテが言った。「深い水は枯れ、明るい石は砕けた」。その諫めを聞かず、立ち去りながら、チャラカ老人の背を槍で刺した。

5ホエルンが自ら馬に乗って追う

察剌合老人被傷在家裏臥時,帖木真來看他。老人說:「你父親收的,並俺眾人的百姓,被他將去,因勸他的時分,被他傷了。」帖木真哭將出去。訶額侖親自上馬,教人拿了英槍,領著人去,將一半人邀下了。那一半邀下的人,也不肯停住,都隨著泰亦赤兀去了。

チャラカ老人が傷を受けて家に臥していたとき、テムジンが見に来た。老人が言った。「おまえの父が集めた、われら皆の民を彼らが連れて行くので、諫めたところ、このように傷つけられた」。テムジンは泣いて出て行った。ホエルンは自ら馬に乗り、人々に旗を付けた槍を持たせて率いて行き、その半ばを引き返させた。しかし引き返させたその半ばも留まろうとせず、みなタイチウドに従って行ってしまった。

6木の実を拾い草の根を掘って子らを育てる

泰亦赤兀惕兄弟每將他母子撇下時,訶額侖好生能事,拾著果子,撅著草根,將兒子每養活了。這般艱難時分,養得兒子每長成子,都有帝王的氣象。

タイチウドの兄弟たちがその母子を置き捨てたとき、ホエルンはまことに辛抱強く、木の実を拾い、草の根を掘って、子らを養い育てた。これほど苦しいときに育て上げた子らが成長して、みな帝王の気象があった。

7針を曲げて釣り針を作る

訶額侖菜蔬養來的兒子,都長進好子,敢與人相抗。為奉養他母親上頭,將針做鉤兒,於斡難河裏釣魚,又結網捕魚,將母親奉養了。

ホエルンが野の菜で育て上げた子らは、みなよく育って、人と張り合えるほどになった。母を養うために、針を曲げて釣り針を作り、オノン川で魚を釣り、また網を結んで魚を捕り、母を養った。

8金色の魚を奪われる

一日,帖木真、合撒兒、別克帖兒、別勒古臺四兄弟同坐釣魚。時帖木真釣得一個金色魚兒,他異母弟別克帖兒、別勒古臺兩個奪要了。帖木真、合撒兒二兄弟回家對母親說:「我釣得一個金色魚,被別克帖兒、別勒古臺奪了。」他母親說:「您兄弟每如何那般?」做譬諭說道:「除影兒外無伴當,除尾子外無鞭子。咱每受泰亦赤兀兄弟每的苦,報不得時,如何恰似在前阿闌娘娘的五個孩兒般不和順?您每休那般做!」

ある日、テムジン・カサル・ベクテル・ベルグテイの四人の兄弟がともに座って魚を釣った。そのときテムジンが金色の魚を一匹釣ったが、異母弟のベクテルとベルグテイの二人が奪い取った。テムジンとカサルの二人の兄弟が家に帰って母に言った。「わたしが金色の魚を一匹釣ったのに、ベクテルとベルグテイに奪われました」。母が言った。「おまえたち兄弟はどうしてそのようなことをするのか」。そして喩(たと)えて言った。「影のほかに伴(とも)はなく、尾のほかに鞭(むち)はない。われらはタイチウドの兄弟たちから受けた苦しみを返すこともできないのに、どうして昔のアラン母君の五人の子のように睦(むつ)まじくできないのか。おまえたちはそのようなことをするな」。

9ベクテルを射る

自那裏,帖木真、合撒兒兩兄弟,不喜他母親說,又說:「我昨前射得個雀兒,也被他奪了;今遭釣得個魚,又被他奪了。似這般呵,一處怎生過?」說了,兩兄弟將門簾子丟著出去。那時別克帖兒在小山上放馬坐著。帖木真自後隱著,合撒兒自前隱著,將箭抽著,要射他時,被別克帖兒見了,說:「泰亦赤兀兄弟的苦受不得,仇怎生能報?如何將我如眼中的毛,口中的梗,容不得?我死就死,您休將我別勒古臺棄了。」說訖,盤腳坐著,等他的箭。帖木真兩兄弟,自前自後,將別克帖兒射死了。

それから、テムジンとカサルの二人の兄弟は母の言葉を快く思わず、さらに言った。「わたしは先日、雀を一羽射て捕らえたのもあれに奪われ、今度は魚を釣ったのもまた奪われました。これでは一つところでどうして暮らせましょう」。そう言って、二人の兄弟は戸の垂れ幕をはねて出て行った。そのとき、ベクテルは小さな丘で馬を飼いながら座っていた。テムジンは後ろから隠れ、カサルは前から隠れて、矢を抜いて射ようとしたとき、ベクテルが見て言った。「タイチウドの兄弟たちの苦しみに耐えられぬのに、仇をどうして討とうというのか。どうしてわたしを目の中の塵(ちり)、口の中の棘(とげ)のように思って、堪えられないのか。わたしが死ぬなら死ぬだけだ。だがおまえたちは、わたしの弟ベルグテイだけは捨てるな」。言い終えると、あぐらをかいて座り、その矢を待った。テムジンら二人の兄弟は前と後ろからベクテルを射殺した。

10母が十二の獣に喩えて責める

帖木真、合撒兒回到家裏,他母親訶額侖見他兩個孩兒的顏色,心裏覺了,說道:「您初生時,手裏握著黑血塊生來。您每如吃胞衣的狗般,又如沖崖子的猛獸般,又如忍不得怒氣的獅子般,又如活吞物的蟒蛇般,又如影兒上沖的海青般,又如噤聲吞物的大魚般,又如咬自羔兒後跟的風駝般,又如靠風雪害物的狼般,又如趕不動兒子將兒子吃了的鴛鴦般,又如護窠的豺狼般,又如不疑貳拿物的虎般,又如妄沖物的禽獸般。您除影子外無伴,當尾子外無鞭子。泰亦赤兀惕兄弟每的苦受不得,仇怎生般報得?思想間,您怎生過了,又這般做?」如此將老人每的言語引證著,將他兒子每怪了。

テムジンとカサルが家に帰ると、母ホエルンは二人の子の顔色を見て心に気づき、こう言った。「おまえたちは生まれたとき、手に黒い血の塊を握って生まれて来た。おまえたちは自分の胞衣(えな)を食う犬のようであり、崖へ走り込む猛獣のようであり、怒りを抑えられぬ獅子のようであり、生き物を丸呑みする大蛇のようであり、自分の影に飛びかかる隼(はやぶさ)のようであり、音もなく呑み込む大魚のようであり、自分の仔の後脚を噛む荒れ駱駝(らくだ)のようであり、風雪を頼みに物を害する狼のようであり、仔を追えぬと仔を食ってしまう鴛鴦(おしどり)のようであり、巣を守る豺(やまいぬ)のようであり、ためらわずに物をつかむ虎のようであり、みだりに飛びかかる禽獣のようだ。おまえたちは影のほかに伴はなく、尾のほかに鞭はない。タイチウドの兄弟たちの苦しみにさえ耐えられぬのに、仇をどうして討てようか。それを思えばどう過ごすべきかも分かろうに、またこんなことをするのか」。このように昔の人々の言葉を引いて、子らを責めた。

11仔の羽毛が生えたころだ — タイチウドが来る

那般住間,泰亦赤兀惕乞鄰勒禿黑說道:「原撇下帖木真母子每,如今莫不似飛禽的雛兒般毛羽長了,走獸的羔兒般大了!」領著伴當來看。帖木真母子每見他每來,心上畏怕。別勒古臺於密林內將木頭折折,劄做寨子,又將合赤溫、帖木格、帖木侖三個小的,藏在崖縫裏。合撒兒與泰亦赤兀惕每相射鬥間,泰亦赤兀惕大聲叫著說:「只將你哥哥帖木真來,其余的人我不要。」因此帖木真畏怕,上馬走入山林裏去,被泰亦赤兀惕看見了,隨後趕到帖兒古捏名字的山行。帖木真鉆入密林裏去了,泰亦赤入惕每不能入去,周圍守著。

そのように暮らしているうちに、タイチウドのキリルトゥクが言った。「置き捨てたテムジンの母子は、いまでは飛ぶ鳥の雛のように羽毛が生え、走る獣の仔のように大きくなっているのではないか」。そうして伴を率いて見に来た。テムジンの母子は彼らが来るのを見て心に怖れた。ベルグテイは深い林の中で木を折って砦(とりで)を結び、またカチウン・テムゲ・テムルンの小さい三人を崖の割れ目に隠した。カサルがタイチウドと射合って戦う間に、タイチウドが大声で叫んで言った。「おまえの兄テムジンだけを出せ。ほかの者はいらぬ」。これにテムジンは怖れて、馬に乗って山の林へ逃げ込んだ。タイチウドがそれを見て、後から追ってテルグネという名の山まで来た。テムジンが深い林に潜り込んだので、タイチウドは入ることができず、周りを囲んで守った。

12林での九日 — 鞍が落ち、白い岩が塞ぐ

帖木真在密林內過了三宿,牽著馬出來時,將韝的鞍子脫落在地。回去看呵,扳胸肚帶,依舊扣著。說道:「肚帶扣著,鞍子脫落呵,猶可。扳帶扣著,鞍子如何脫落的?莫不是天止,當住我麽?」復回去住了三日。又出來時,密林口子,帳房般一塊大白石倒下塞著。帖木真說:「莫不是天止當我麽?」又復回去住了三日。前後共住了九日,無吃的茶飯,說道:「這般無名如何死了,不如出去。」將塞住口子石邊的木,用削箭刀子割開,牽著馬下山來,被泰亦赤兀惕守的人拿將去了。

テムジンは深い林の中で三晩を過ごし、馬を引いて出ようとしたとき、括(くく)っていた鞍が地に落ちた。戻って見ると、胸懸(むながい)も腹帯ももとのまま締まっていた。テムジンが言った。「腹帯が締まっていて鞍が落ちたのなら、まだあり得よう。胸懸まで締まっていて、鞍がどうして落ちようか。天がわたしを止めているのではないか」。そうして引き返して三日いた。また出ようとすると、林の入口に幕屋ほどの大きな白い岩が一つ転がり落ちて塞いでいた。テムジンが言った。「天がわたしを止めているのではないか」。また引き返して三日いた。前後あわせて九日いて、食べる物がなくなったので言った。「このように名もなく死ぬくらいなら、出て行くほうがよい」。入口を塞ぐ岩のそばの木を、矢を削る小刀で切り開き、馬を引いて山を下りて来たところ、タイチウドの守っていた者たちに捕らえられて行った。

13オノン川の流れに臥してソルカン・シラに出会う

塔兒忽臺乞鄰勒禿黑將帖木真拿去,於他百姓內傳了號令,教每營裏住一宿,徇著行。時正當四月十六日,泰亦赤兀惕每於斡難河岸上做筵會,日頭落時散了。此時教一個年小軟弱的人守著帖木真。帖木真見人散了,將那年小弱的人用枷梢於頭上打倒,走了,走到斡難河邊林內臥著,恐怕人見,又入斡難河水的溜道裏仰臥著,身在水裏,但露出面來。那個失了人的人大聲叫著說:「拿住的人脫走了麽道!」叫時,散了的泰亦赤兀惕聚來著,白日般月明裏,斡難河邊樹林裏挨排著尋。帖木真在溜道裏臥著,速勒都孫姓氏鎖兒罕失剌名字的人經過尋時,正見著,說道:「正為你這般有見識了,所以上泰亦赤兀惕兄弟每妒害你。你謹慎,只那般臥著,我不告你。」那般說了,過去了。

タルグタイ・キリルトゥクはテムジンを捕らえて行き、自分の民に令を伝えて、営ごとに一晩泊めて回らせた。時はちょうど四月十六日であった。タイチウドがオノン川の岸で宴を張り、日が落ちるころ散った。このとき、年若く弱い者一人にテムジンを守らせた。テムジンは人々が散ったのを見て、その年若く弱い者の頭を首枷の端で打ち倒して逃げた。オノン川のほとりの林へ行って臥していたが、人に見られるのを怖れて、さらにオノン川の流れの中に入って仰向けに臥し、体は水の中に置いて顔だけを出した。人を逃がしたその者が大声で叫んだ。「捕らえた者が逃げたぞ」。その声に、散っていたタイチウドが集まって来て、昼のように明るい月の下、オノン川のほとりの林を並んで探した。テムジンが流れの中に臥していると、スルドス氏のソルカン・シラという名の人が通りがかって探すうちに、まさに彼を見つけて言った。「まさにおまえがこれほど見識があるからこそ、タイチウドの兄弟たちはおまえを妬(ねた)んで害そうとするのだ。気をつけて、そのまま臥していよ。わたしは告げはしない」。そう言って通り過ぎた。

14二度目に通りがかって告げた言葉

泰亦赤兀惕每再回排尋共說時,鎖兒罕失剌再說:「你每白日裏失了人,如今黑夜裏如何尋的?再回原行的路上去,將不曾見處仔細排尋了,散著,明日再聚著尋,這帶枷的人那裏去?」這般說了,再回去尋時,鎖兒罕失剌再經過,對帖木真說:「我每只這一遍排尋,回去了,明日再來尋。如今我每散了後,你自尋你母親、兄弟去,若見人時,休說我見你來。」說訖,過去了。

タイチウドがまた戻って並んで探そうと相談したとき、ソルカン・シラがまた言った。「おまえたちは昼に人を逃がしたのだ。この暗い夜にどうして見つけられよう。来た道を引き返して、まだ見ていないところを念入りに探して散り、明日また集まって探そう。首枷をはめた者がどこへ行けよう」。そう言って、引き返して探すときにソルカン・シラがまた通りがかり、テムジンに言った。「われらはこの一度だけ並んで探して帰り、明日また来て探す。いまわれらが散った後、おまえは自分で母と弟たちを探しに行け。人に会っても、わたしがおまえを見たとは言うな」。言い終えて通り過ぎた。

15チンバイとチラウンを思い出す

他每散了後,帖木真心裏想著說:「昨前每營裏輪流著教看守我時,鎖兒罕失剌家裏宿呵,他的沈白、赤老溫名字的兩個兒子,心裏憐憫我,夜裏與我脫了枷,教散宿來。如今鎖兒罕失剌將我見了,又不肯對人說,幾次經過去了。如今只他那裏去,必救了我。」所以順著斡難河,尋鎖兒罕失剌去了。

彼らが散った後、テムジンは心の中で思った。「先日、営ごとに回して自分を守らせたとき、ソルカン・シラの家で泊まったが、そのチンバイとチラウンという名の二人の子はわたしを哀れんで、夜に首枷を外し、楽に寝かせてくれた。いまソルカン・シラはわたしを見ても人に告げず、幾度も通り過ぎて行った。いま彼のもとへ行けば、きっとわたしを助けてくれるだろう」。そこでオノン川に沿って、ソルカン・シラを探しに行った。

16馬乳を搗く音をたどる

他家的記號,打馬奶子,自夜到明。聽著這記號行呵,聽得打馬奶子聲,到他家裏。入去呵,鎖兒罕失剌說:「我教你尋你母親、兄弟去,你如何又來?」他的沈白、赤老溫兩個兒子說:「雀兒被龍多兒趕入叢草去呵,叢草也能救他性命。草尚能如此,咱每行來的人不能救他呵,反不如叢草?」所以將帖木真枷開著燒了,於他後面盛羊毛的車子裏藏丁,分付他合答安名字的妹子看著,說:「任誰行,休對他說。」

その家の目印は、夜から明け方まで馬乳を搗(つ)くことであった。その目印を頼りに行くと、馬乳を搗く音が聞こえてその家に着いた。入ると、ソルカン・シラが言った。「わたしはおまえに母と弟たちを探しに行けと言ったのに、どうしてまた来たのか」。そのチンバイとチラウンの二人の子が言った。「雀が鷹に追われて草むらに入れば、草むらもその命を救います。草でさえそうなのに、訪ねて来た人をわれらが救えないなら、かえって草むらにも劣るではありませんか」。そこでテムジンの首枷を外して焼き捨て、家の後ろの羊毛を積んだ車の中に隠し、カダアンという名の妹に見張らせて言った。「だれにも言うな」。

17羊毛の車を探られる

第三日,泰亦赤兀惕兄弟每說:「帖木真莫不是人藏了他,將俺自火裏搜一搜!」於是搜到鎖兒罕失剌家,房裏、車裏、床下都搜遍了,落後搜到載羊毛的車上,將車門內的羊毛掀出,掀到車後時,鎖兒罕失剌說:「似這般熱天氣,羊毛裏若有人,如何當的?」搜的人所以下車去了。

三日目、タイチウドの兄弟たちが言った。「テムジンは誰かが隠したのではないか。われらの身内を一度探ってみよう」。そうしてソルカン・シラの家まで探り、家の中も車の中も寝床の下もすべて探り、最後に羊毛を積んだ車に上がって、車の前の羊毛をかき出し、車の後ろまで達した。そのときソルカン・シラが言った。「これほど暑い日に、羊毛の中に人がいたらどうして堪えられよう」。探していた者たちはそれで車から下りて行った。

18鞍のない馬と仔羊を得て去る

搜的人去了後,鎖兒罕失剌對帖木真說:「你險些將我斷送得煙消火滅,如今你母親、兄弟行尋去。」與了他一個無鞍子甘草黃白口不生駒的騍馬,再煮熟了一個吃兩母乳得肥羔兒,皮桶裏盛著,與了馬奶子,更與了一張弓、兩只箭,不曾與他火鐮,這般打發教去了。

探していた者たちが去った後、ソルカン・シラはテムジンに言った。「おまえのために、わたしは煙も火も消え果てるところだった。さあ、母と弟たちを探しに行け」。そうして、鞍のない、仔を産んだことのない甘草色の黄の牝馬で口の白いものを一頭与え、二頭の母の乳を飲んで肥えた仔羊を一頭煮て皮の桶に入れて与え、馬乳を与え、さらに弓一張と矢二本を与えた。火打ち金は与えず、そのように仕立てて行かせた。

19コルチュクイ山で母に会う

帖木真去了,到他原把的寨子處蹤跡,逆著斡難河踏將去了。有乞沐兒合名字的河,西通著斡難河。見那小河邊,有行的蹤跡,就逆那小河尋將去。那小河邊,有別帖兒名字的山,那山根前有豁兒出恢名字的孤山,那裏與他母親、兄弟每相遇著了。

テムジンは去って、以前に結んだ砦の跡の痕(あと)をたどり、オノン川を遡って行った。キムルカという名の川があって、西でオノン川に通じていた。その小さな川のほとりに人の通った痕があったので、その小さな川を遡って探して行った。その小さな川のほとりにベデルという名の山があり、その山の下にコルチュクイという名の独り山があって、そこで母と弟たちに出会った。

20サングル川のほとりに腰を落ち着ける

帖木真那裏相遇著丁,又去不兒罕山前有古連勒古名字的山,那山裏有桑沽兒河,河邊有合剌只魯格名字的小山,有個青海子,做營盤住其間,打捕土撥鼠、野鼠,吃著過活了。

テムジンはそこで出会った後、さらにブルカン山の前にあるグレルグという名の山へ行った。その山にサングル川があり、川のほとりにカラ・ジルゲという名の小さな山と、青い池が一つあった。そこを営として住み、マルモットや野ねずみを捕って食べて暮らした。

21ボオルチュに出会い、八頭の馬を取り戻す

一日,帖木真的慘白騸馬八匹在家被賊劫將去了。又有一個甘草黃馬,他兄弟別勒古臺騎著,捕土撥鼠去了。到晚馱著土撥鼠回來。帖木真說:「我的馬被人劫去了。」說了,別勒古臺說:「我趕去。」合撒兒說:「你不能,我趕去。」帖木真又說:「您都不能,我去。」就騎著那甘草黃馬,踏著那八個馬的掃道,襲將去,行了三宿。那一日清早,路上多馬群中,見一個爽利後生擠馬乳,問他:「你曾見慘白騸馬八匹來麽?」那後生說:「今早日未出時,有這樣八匹馬自這裏趕過去了。去的蹤跡,我指與你!」說了,他將帖木真騎的馬放了,換與他一個黑脊白馬騎丁。他也不去自家裏,將他擠乳的皮桶、皮鬥著草蓋了,對帖木真說:「你來好生艱難,男子的艱難都一般,我與你做伴,一同趕去。我的父名字喚做納忽伯顏,止有我一個兒子,我的名喚做孛斡兒出。」說了後,踏著蹤跡,又行了三宿。至日晚時,到一個百姓圈子行,見他那八個馬在圈子外立著。帖木真說:「伴當!你這裏立著,我去把這馬趕出來。」孛斡兒出說:「我既與做伴來了,如何我這裏立?」一同跑著馬入去,將馬趕出來了。

ある日、テムジンの白茶けた去勢馬八頭が家から盗人に奪われて行った。また甘草色の黄の馬が一頭あり、弟のベルグテイが乗ってマルモットを捕りに行っていた。夕方にマルモットを積んで帰って来た。テムジンが言った。「わたしの馬が人に奪われた」。ベルグテイが言った。「わたしが追います」。カサルが言った。「おまえにはできない。わたしが追う」。テムジンがまた言った。「おまえたちはみなできない。わたしが行く」。そうしてその甘草色の黄の馬に乗り、八頭の馬が掃いて行った痕をたどって追い、三晩行った。その日の早朝、道のほとりの多くの馬の群れの中で、きりっとした若者が一人、馬乳を搾っているのを見て尋ねた。「白茶けた去勢馬八頭が通ったのを見たか」。その若者が言った。「今朝、日の出前に、そういう馬八頭がここから追われて行きました。行った痕をお教えしましょう」。そう言って、テムジンの乗っていた馬を放し、背の黒い白馬一頭に乗り換えさせた。彼は自分の家にも行かず、乳を搾っていた皮の桶と皮の斗(ます)を草で覆っておいて、テムジンに言った。「ここまで来るのはずいぶん苦しかったでしょう。男の苦しみはみな同じです。わたしがあなたの伴となって、一緒に追いましょう。わたしの父の名はナク・バヤンといい、子はわたし一人です。わたしの名はボオルチュといいます」。そう言って、痕をたどってさらに三晩行った。日暮れどきに、ある民の囲い場に着き、その八頭の馬が囲いの外に立っているのを見た。テムジンが言った。「伴よ、あなたはここに立っていてください。わたしが行ってこの馬を追い出して来ます」。ボオルチュが言った。「わたしはもう伴となって来たのに、どうしてここに立っていましょう」。ともに馬を駆けて入り、馬を追い出した。

22白い馬の者が投げ縄の竿を向ける

隨後人每陸續趕將來,一個騎白馬的人,手裏執著套馬竿,將次趕到根前。孛斡兒出說:「你弓箭將來,我與他廝射!」帖木真說:「為我的上頭,恐傷著你,我與他廝射!」便回去與他廝射。那騎白馬的人,將套馬竿指著帖木真說:「立住了。」隨後那賊每的伴當,也都趕將來。見日落黃昏,天色黑了,那後來的人都立住著,落後了。

後から人々が次々に追って来た。白い馬に乗った者が一人、手に投げ縄の竿を持って、次第に目の前まで追いついて来た。ボオルチュが言った。「弓矢をこちらへ。わたしがあれと射合いましょう」。テムジンが言った。「わたしのためにあなたが傷つくのが怖い。わたしが射合おう」。そうして振り返って射合った。その白い馬に乗った者は投げ縄の竿でテムジンを指して「止まれ」と言った。後からその盗人たちの伴もみな追って来た。日が落ちて黄昏(たそがれ)となり、空が暗くなると、後から来た者たちはみな立ち止まって遅れた。

23ボオルチュが分け前を断る

那夜兼行了三晝夜,回到納忽伯顏處,帖木真對孛斡兒出說:「不是你呵,我這馬如何得?咱兩人可以分,你要多少?」孛斡兒出說:「我見你辛苦著來,所以濟助做伴去,如何做外財般要你的?我父親只我一個兒子,置的家財與我盡勾。我不要你的!若要你的呵,與你做伴來的濟甚事?」說了。

その夜から三日三晩続けて行き、ナク・バヤンのもとへ帰った。テムジンがボオルチュに言った。「あなたがいなければ、この馬をどうして取り戻せたでしょう。われら二人で分けられます。いくら取りますか」。ボオルチュが言った。「あなたが苦労して来たのを見て、助けて伴となって行っただけです。どうして思いがけない財のようにあなたのものを受け取れましょう。わたしの父には子はわたし一人なので、備えた家財はわたしに十分です。わたしはあなたのものを受け取りません。あなたのものを受け取るなら、伴となって行ったことが何の甲斐になりましょう」。

24ナク・バヤンが子を責め、道中の糧を仕立てる

到納忽伯顏家裏,見他為失了兒子孛斡兒出,垂著淚哭。忽然見他每到了,將他兒子看著,一邊廂哭,一邊廂怪。他兒子孛斡兒出說:「我不知為甚麽?見這好伴當艱難著來,便與他做伴去了來,如今來了也。」說訖,走著馬去,將原蓋下的擠乳的皮桶、皮鬥來了,殺了一個吃二母乳的肥羔兒,又皮桶裏盛了馬奶子,馱的般整治了,與帖木真做行糧。納忽伯顏說:「你兩個年小的,常相顧盼,明後休相棄!」帖木真辭去,行了三晝夜,到桑沽兒河邊家裏。他母親訶額侖並合撒兒兄弟每正愁間,見他回來,好生歡喜了。

ナク・バヤンの家に着くと、彼は子のボオルチュを失ったと思って涙を流して泣いていた。ふいに彼らが着いたのを見て、子を見つめながら、一方では泣き、一方では責めた。その子ボオルチュが言った。「何事かと思われたでしょう。この良い伴が苦労して来るのを見て、すぐに伴となって行き、いま帰って来ました」。言い終えると、馬を駆けて行き、覆っておいた乳を搾る皮の桶と皮の斗を取って来て、二頭の母の乳を飲んだ肥えた仔羊を一頭殺し、皮の桶に馬乳を入れて、積めるように仕立てて、テムジンの道中の糧とさせた。ナク・バヤンが言った。「おまえたち二人の若者は、いつも互いに目をかけ合い、これからも互いに捨てるな」。テムジンは暇(いとま)を告げて去り、三日三晩行ってサングル川のほとりの家に着いた。母ホエルンとカサルら弟たちがちょうど心配していたところに、彼が帰って来たのを見て、ひどく喜んだ。

25ボルテを迎えて来る

初,帖木真九歲時,與德薛禪的女兒孛兒帖兀真相離了來。此時與弟別勒古臺順著客魯漣河尋去,到扯克徹兒、赤忽兒忽山兩間,尋著德薛禪家。德薛禪見了帖木真,好生大歡喜,說:「知得泰亦赤兀兄弟每嫉妒你,我好生愁著,絕望了來,今日僅得見你。」說了,將孛兒帖女兒與帖木真做了妻。德薛禪與他妻搠壇同送帖木真夫妻回去了。到客魯漣河兀剌黑啜勒的邊隅,德薛禪回家來了。搠壇直送他女兒到帖木真家裏。

はじめ、テムジンが九歳のとき、デイ・セチェンの娘ボルテ・ウジンと別れて来たのであった。このとき、弟のベルグテイとともにケルレン川に沿って探しに行き、チェクチェルとチクルグの二つの山の間に至って、デイ・セチェンの家を探し当てた。デイ・セチェンはテムジンを見てひどく大いに喜び、言った。「タイチウドの兄弟たちがあなたを妬んでいると聞いて、わたしはひどく心配し、望みも絶えたと思っていたが、今日やっとあなたに会えた」。そう言って、娘ボルテをテムジンの妻として与えた。デイ・セチェンはその妻チョタンとともに、テムジン夫妻を送って行った。ケルレン川のウラク・チョルの隅まで来て、デイ・セチェンは家に帰った。チョタンは娘をそのままテムジンの家まで送って行った。

26ボオルチュがまた来て、二度と離れない

搠壇送他女兒到帖木真家,回去了。後帖木真欲要孛斡兒出做伴,使別勒古臺喚去。孛斡兒出見了別勒古臺,又不對他父說,騎著個拱脊黃馬,馱著個青毛襖子,與別勒古臺一同來了。自那裏做伴,後再不曾相離。

チョタンは娘をテムジンの家まで送って帰って行った。その後、テムジンはボオルチュを伴にしたいと思い、ベルグテイを遣わして呼びに行かせた。ボオルチュはベルグテイを見ると、父に告げもせず、背の反った黄の馬に乗り、青い毛の上着を積んで、ベルグテイとともに来た。そのときから伴となって、後に二度と離れることはなかった。

27黒い貂の皮衣をオン・カンに献じる

自桑古兒河邊起了,到客魯漣河源頭不兒吉名字的地岸根前,做下營盤住了,搠壇的女孛兒帖兀真行上見公姑的禮物,將一個黑貂鼠襖子有來。帖木真說:「在前俺的父也速該皇帝與客列亦惕種姓的王罕契合,便是父一般,他如今在土兀剌河邊黑林子裏住著,我將這襖子與他。」於是帖木真兄弟三個,將著那襖子送去。見於王罕,帖木真說:在前日子,你與我父親契合,便是父親一般,今將我妻上見公姑的禮物,將來與父親。」隨即將黑貂鼠襖子與了。王罕得了襖子,大歡喜著說道:「你離子的百姓,我與你收拾;漫散了的百姓,我與你完聚。我心下好生記著。」說了。

サングル川のほとりから移り、ケルレン川の源のブルギという名の岸の前に営を据えて住んだ。チョタンの娘ボルテ・ウジンが、舅(しゅうと)姑(しゅうとめ)に差し上げる贈り物として、黒い貂(てん)の皮衣を一つ持って来ていた。テムジンが言った。「昔、われらの父イェスゲイ皇帝はケレイト氏のオン・カンと誼(ぎ)を結び、父同様であった。彼はいまトーラ川のほとりの黒い林に住んでいるから、わたしはこの皮衣を彼に差し上げよう」。そこでテムジンら兄弟三人が、その皮衣を持って行った。オン・カンに会って、テムジンが言った。「昔、あなたはわれらの父と誼を結び、父同様でした。いまわたしの妻が舅姑に差し上げる贈り物を持って来て、父上に差し上げます」。そうしてすぐに黒い貂の皮衣を差し上げた。オン・カンは皮衣を受けて大いに喜んで言った。「離れて行ったおまえの民は、わたしが集めてやろう。散り散りになった民は、わたしがまとめてやろう。わたしの心によく留めておく」。