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黒羽黑羽

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 奥の細道 · 松尾芭蕉 · 元禄15年(1702年)刊 · 1689年の旅 · 段落 1 · 漢字 241字 · 朗読 0.6分

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 全一巻 「月日は百代の過客であり、行き交う年もまた旅人です」 — 芭蕉が四十六歳で江戸を離れ、奥州と北陸を五か月かけて歩いた紀行文。夏草に武士たちの夢を見、岩にしみ入る蝉の声を聞き、一つ屋根の下に眠る遊女を萩と月に見立てる。散文が終わるところごとに俳句が一句置かれる。法顕・玄奘・慧超の求法記と並ぶ、この書斎のもう一つの道である。

1黒羽 — 与一が弓を引いた神社

やがて人里に至ればあたひを鞍壺に結付て馬をかへしぬくろはねの舘代淨坊寺何某の方に音づる思ひかけぬ主の悅び日夜語づゝけて其弟桃翠などいふが朝夕勤とふらひ自の家にも伴ひて親屬の方にも招かれ日をふるまゝにひとひ郊外に逍遙して犬追物の跡を一見し那須の篠原を分て玉藻の前の古墳をとふそれより八幡宮に詣つ與市扇の的を射し時別しては我國氏神正八幡とちかひしも此神社にて侍と聞ば感應殊にしきりに覺らるくるれば桃翠か家にかへる 修驗光明寺と云有りそこにまねかれて行者堂を拜す 夏山に足駄を拜む首途かな

やがて人里に着いたので、代金を鞍壺に結びつけて馬を返しました。黒羽の館代、浄坊寺何某(なにがし)の所を訪ねると、思いがけない客を主人は喜んで、日夜語り続け、その弟の桃翠(とうすい)などという人が朝夕まめに訪ねてきて、自分の家にも連れて行き、親類の家にも招いてくれました。

日が過ぎるにつれて、ある日は郊外を歩いて犬追物の跡を見、那須の篠原を分けて玉藻の前の古墳を訪ねました。それから八幡宮に参詣しました。与一が扇の的を射たとき、「とりわけ我が国の氏神、正八幡」と誓ったのもこの神社だと聞くと、感応がいっそう身に迫って感じられます。日が暮れると桃翠の家に帰りました。

修験光明寺という寺があり、そこに招かれて行き、行者堂を拝みました。

夏山で / 足駄を拝んで旅立ちます

夾注 1

一本かナシ

異本には「か」がありません。