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金沢金澤
奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 全一巻 「月日は百代の過客であり、行き交う年もまた旅人です」 — 芭蕉が四十六歳で江戸を離れ、奥州と北陸を五か月かけて歩いた紀行文。夏草に武士たちの夢を見、岩にしみ入る蝉の声を聞き、一つ屋根の下に眠る遊女を萩と月に見立てる。散文が終わるところごとに俳句が一句置かれる。法顕・玄奘・慧超の求法記と並ぶ、この書斎のもう一つの道である。
1金沢 — 塚も動け
卯花山くりから谷を越て金澤は七月中の五日也爰に大坂よりかよふ商人何處といふ者はそれが旅宿をともにす一笑といふもの此道にすける者のほの〴〵聞へて世にしる人も待しに去年の冬早世したりとて其兄追善をもよほすに 塚も動け我泣聲は秋の風 ある艸庵にいざなはれて 秋凉し手每にむけや瓜茄子 あか〳〵と日はつれなくも秋の風
卯花山・くりから谷を越えて金沢に着いたのは、七月十五日です。
ここに大坂から通う商人の何某という人がいて、その旅宿を一緒にしました。一笑という人がこの道を好む者としてほのかに聞こえ、世に知る人もいたので待っていましたが、去年の冬に早世したということで、その兄が追善を催す席で。
塚も動け / 私の泣く声は秋の風
ある草庵に誘われて
秋が涼しい / 手ごとに剥きましょう 瓜や茄子
赤々と / 日はつれなくも照る 秋の風
夾注 3
處ハ某ノ誤リナリ
「何處」の「處」は「某」の誤りです。
一本いふ者ありトアリ
異本には「いふ者あり」とあります。
一本はヲ入レタリ
異本には「は」を入れています。