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全昌寺

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 奥の細道 · 松尾芭蕉 · 元禄15年(1702年)刊 · 1689年の旅 · 段落 5 · 漢字 259字 · 朗読 0.6分

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 全一巻 「月日は百代の過客であり、行き交う年もまた旅人です」 — 芭蕉が四十六歳で江戸を離れ、奥州と北陸を五か月かけて歩いた紀行文。夏草に武士たちの夢を見、岩にしみ入る蝉の声を聞き、一つ屋根の下に眠る遊女を萩と月に見立てる。散文が終わるところごとに俳句が一句置かれる。法顕・玄奘・慧超の求法記と並ぶ、この書斎のもう一つの道である。

1曾良が先に旅立つ

曾良は腹をいたみていせの國長島といふ所に先立て行くに 行〳〵て倒れふすとも萩の原曾良

曾良は腹を痛めて、伊勢の国の長島という所へ先に立って行くとき

行き行きて / 倒れ伏すとしても萩の原 — 曾良

2今日からは笠の露

とかき置たり行くものゝ悲しみ殘る者のうらみ隻鳧のわかれて雲にまよふがごとし予も又 けふよりや書付けさん笠の露

と書き置いていきました。行く者の悲しみ、残る者の心残りが、一対の鳧(かも)が別れて雲の中で迷うようです。私もまた

今日からは / 書き付けを消しましょう 笠の露

3全昌寺 — 一夜の隔てが千里と同じ

大聖持の城外今昌寺といふ寺に泊る猶加賀の地也曾良も前の夜このてらにとまりて 終夜秋風きくやうらの山

大聖寺の城外、全昌寺という寺に泊まりました。まだ加賀の地です。曾良も前の夜この寺に泊まって

夜通し / 秋風を聞くのでしょうか 裏の山で

夾注 2

寺ノ誤ナリ

「大聖持」の「持」は「寺」の誤りです。

全ノ誤ナリ

「今昌寺」の「今」は「全」の誤りです。

4明け方の読経の声

と殘す一夜のへたて千里に同じわれも秋風を聞つゝ衆寮に臥せは明ほのゝ空近う讀經聲すむまゝに鐘板鳴て食堂に入る

と残していきました。一夜の隔てが千里と同じです。私もまた秋風を聞きながら衆寮に横になっていると、明け方の空が近づいて読経の声が澄んでいくまま、鐘と板が鳴って、食堂に入りました。

夾注 1

一本讀經のトアリ

異本には「讀經の」とあります。

5庭を掃いて出る寺の柳

けふは越前國へと心早卒にして堂下に下るを若き僧ども紙硯をかゝへ階の下まで追來る折ふし庭中の柳ちれば 庭箒て出るや寺にちる柳

今日は越前の国へと心が急いて堂の下に下りると、若い僧たちが紙と硯を抱えて、階段の下まで追ってきます。ちょうど庭の柳が散っているので

庭を掃いて / 出かけましょう 寺に散る柳よ