いにしえの文 › 奥の細道(奥州へ向かう細道の記) › 全一巻

大垣

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 奥の細道 · 松尾芭蕉 · 元禄15年(1702年)刊 · 1689年の旅 · 段落 1 · 漢字 180字 · 朗読 0.5分

奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 全一巻 「月日は百代の過客であり、行き交う年もまた旅人です」 — 芭蕉が四十六歳で江戸を離れ、奥州と北陸を五か月かけて歩いた紀行文。夏草に武士たちの夢を見、岩にしみ入る蝉の声を聞き、一つ屋根の下に眠る遊女を萩と月に見立てる。散文が終わるところごとに俳句が一句置かれる。法顕・玄奘・慧超の求法記と並ぶ、この書斎のもう一つの道である。

1大垣 — 蛤が蓋と身に分かれるように

其日の有まし等栽に筆とらせて寺にのこす路通も此みなとまで出むかひてみのゝ國へと伴なふ駒にたすけられて大垣の庄に入れば曾良も伊勢より來り合ひ越人も馬をはせて如行が家に入りあつまる前川子荊口父子その外したしき人々とぶらひて蘇生の者に逢ふがごとく且悅ひ且いたはる旅のものうさもいまだやまざるに長月六日になれば伊勢の遷宮拜まんとまた舟にのりて 蛤のふた見にわかれ行秋ぞ

その日のありようを等栽に筆を執らせて、寺に残しました。

路通もこの港まで出迎えて、美濃の国へと同行しました。駒に助けられて大垣の庄に入ると、曾良も伊勢から来て合流し、越人も馬を走らせて来て、如行の家にみな集まりました。前川子や荊口父子、そのほか親しい人々が訪ねてきて、蘇生した者に会うように、一方では喜び、一方ではいたわってくれました。

旅の物憂さがまだ止まないうちに長月六日になったので、伊勢の遷宮を拝もうと、また舟に乗って

蛤が / 蓋と身に分かれるように二見へ別れて行く秋よ

夾注 1

一本馬をとばせてトアリ

異本には「馬をとばせて」とあります。