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種の浜種の濱
奥の細道(奥州へ向かう細道の記) 全一巻 「月日は百代の過客であり、行き交う年もまた旅人です」 — 芭蕉が四十六歳で江戸を離れ、奥州と北陸を五か月かけて歩いた紀行文。夏草に武士たちの夢を見、岩にしみ入る蝉の声を聞き、一つ屋根の下に眠る遊女を萩と月に見立てる。散文が終わるところごとに俳句が一句置かれる。法顕・玄奘・慧超の求法記と並ぶ、この書斎のもう一つの道である。
1種の浜 — 須磨にまさる浜の秋
十六日空晴たればますほの小貝ひろはんと種の濱に舟を走らす海上七里有り天屋何某といふもの破籠小竹筒などこまやかにしたゝめさせ僕あまた舟に取のせて追風時の間に吹つけぬ濱はわづかなる蜑の小家にて侘しき法花寺有りこゝに茶をのみ酒を煖めて夕昏の淋しき感にたへたり 寂しさや須磨に勝たる濱の秋 浪の間や小貝もましる萩の塵
十六日、空が晴れたので、ますほの小貝を拾おうと種の浜へ舟を走らせました。海上七里あります。天屋何某という人が破籠や小竹筒などをこまやかに調えさせ、僕(しもべ)を多く舟に乗せてくれたので、追風がわずかの間に吹き着けてくれました。
浜はわずかな海人の小家があるだけで、わびしい法花寺があります。ここで茶を飲み、酒を温めて、夕暮れの淋しい感に堪えました。
寂しさよ / 須磨にまさる浜の秋
波の間よ / 小貝も混じる萩の塵