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照知麻立干

三国史記(三国時代の正史) 三國史記 · 金富軾(キム・ブシク)ほか · 1145年(高麗・仁宗23年) · 段落 20 · 漢字 998字 · 朗読 4.0分

三国史記(三国時代の正史) 新羅本紀 現存する最も古い韓国の歴史書。新羅・高句麗・百済の本紀と、志・表・列伝から成る。金富軾が随所に「論曰」として自らの評を付けているので、編者が何を疑い何を責めたかがそのまま残っている。

1照知麻立干が即位する

照知麻立干立,慈悲王長子。母,金氏,舒弗邯未斯欣之女;妃,善兮夫人,乃宿伊伐飡女也。照知幼有孝行,謙恭自守,人咸服之。

照知麻立干が位に就いた。慈悲王の長子である。母は金氏で舒弗邯の未斯欣の娘、妃は善兮夫人で乃宿伊伐飡の娘である。照知は幼いころから孝行があり、謙しく恭しくみずからを守ったので、人はみな従った。

夾注 1

一云毗處。

毗處ともいう。

2元年 — 官位を一級ずつ上げる

元年,大赦,賜百官爵一級。

元年、大赦を行い、百官に官位一級を与えた。

3二年 — 靺鞨が北の辺境を侵す

二年,春二月,祀始祖廟。夏五月,京都旱。冬十月,民飢,出倉穀賑給之。十一月,靺鞨侵北邊。

二年の春二月、始祖の廟に祭った。夏五月、都に旱があった。冬十月、民が飢えたので、倉の穀物を出して分け与えた。十一月、靺鞨が北の辺境を侵した。

4三年 — 百済・加耶の援けで泥河の西に破る

三年,春二月,幸比列城,存撫軍士,賜征袍。三月,高句麗與靺鞨入北邊,取狐鳴等七城,又進軍於彌秩夫。我軍與百濟,加耶援兵,分道禦之。賊敗退,追擊破之泥河西,斬首千餘級。

三年の春二月、比列城に行幸して兵をいたわり、戦の衣を与えた。三月、高句麗が靺鞨とともに北の辺境に入り、狐鳴など七つの城を取り、さらに彌秩夫まで軍を進めた。新羅の軍は百済・加耶の援軍とともに道を分けて防いだ。敵が敗れて退いたので追い撃ち、泥河の西で破り、千余りの首を斬った。

5四年 — 倭人が辺境を侵す

四年,春二月,大風拔木。金城南門火。夏四月,久雨,命内外有司慮囚。五月,倭人侵邊。

四年の春二月、大風が吹いて木が抜けた。金城の南門が焼けた。夏四月、雨が長く降ったので、内外の担当の官に命じて囚人を調べさせた。五月、倭人が辺境を侵した。

6五年 — 大水と疫病

五年,夏四月,大水。秋七月,大水。冬十月,幸一善界,存問遘災百姓,賜穀有差。十一月,雷,京都大疫。

五年の夏四月、大水が出た。秋七月、大水が出た。冬十月、一善の境に行幸し、災いに遭った民を見舞い、穀物を差をつけて与えた。十一月、雷が鳴り、都に大きな疫病が流行った。

7六年 — 百済とともに母山城の下で破る

六年,春正月,以烏含爲伊伐飡三月,土星犯月,雨雹,秋七月,高句麗侵北邊,我軍與百濟,合擊於母山城下,大破之

六年の春正月、烏含を伊伐飡とした。三月、土星が月を犯し、雹が降った。秋七月、高句麗が北の辺境を侵したので、新羅の軍は百済とともに母山城の下で撃ち、大いに破った。

8七年 — 廟を守る家を増やす

七年,春二月,築仇伐城。夏四月,親祀始祖廟,增置守廟二十家。五月,百濟來聘。

七年の春二月、仇伐城を築いた。夏四月、みずから始祖の廟に祭り、廟を守る家二十戸を増やして置いた。五月、百済が使者として来た。

9八年 — 倭人が辺境を侵す

八年,春正月,拜伊飡實竹爲將軍。徵一善界丁夫三千,改築三年、屈山二城。二月,以乃宿爲伊伐飡,以參國政。夏四月,倭人犯邊。秋八月,大閱於狼山之南。

八年の春正月、伊飡の實竹を将軍とした。一善の境の壮丁三千を徴し、三年城と屈山城の二城を造り替えた。二月、乃宿を伊伐飡として国政に参与させた。夏四月、倭人が辺境を侵した。秋八月、狼山の南で大いに閲兵した。

10九年 — 神宮を置き、郵驛を置く

九年,春二月,置神宮於奈乙,奈乙始祖初生之處也。三月,始置四方郵驛,命所司修理官道。秋七月,葺月城。冬十月,雷。

九年の春二月、奈乙に神宮を置いた。奈乙は始祖が初めて生まれた所である。三月、はじめて四方に郵驛を置き、担当の役所に命じて官道を修理させた。秋七月、月城を葺き直した。冬十月、雷が鳴った。

11十年 — 目が六つある亀

十年,春正月,王移居月城。二月,幸一善郡,存問鰥寡孤獨,賜穀有差。三月,至自一善,所歷州郡獄囚,除二死,悉原之。夏六月,東陽獻六眼龜,腹下有文字。秋七月,築刀那城。

十年の春正月、王は月城に移って住んだ。二月、一善郡に行幸し、寡夫・寡婦・孤児・頼る子のない老人を見舞い、穀物を差をつけて与えた。三月、一善から帰る道で、通った州や郡の獄の囚人のうち、二つの死罪を除いてことごとく赦し放った。夏六月、東陽が目の六つある亀を献じたが、腹の下に文字があった。秋七月、刀那城を築いた。

12十一年 — 遊んで食う民を農に戻す

十一年,春正月,驅游食百姓歸農。秋九月,高句麗襲北邊,至戈峴。冬十月,陷狐山城。

十一年の春正月、遊んで食う民を駆り立てて農に帰らせた。秋九月、高句麗が北の辺境を襲い、戈峴に至った。冬十月、狐山城を落とした。

13十二年 — 都に市を開く

十二年,春二月,重築鄙羅城。三月,龍見鄒羅井。初開京師市肆,以通四方之貨。

十二年の春二月、鄙羅城を造り替えた。三月、龍が鄒羅の井戸に現れた。はじめて都に市を開き、四方の物資を通わせた。

14十四年 — 王がみずからをとがめる

十四年,春夏旱,王責己,減常膳。

十四年の春と夏に旱があった。王はみずからをとがめ、日ごろの膳を減らした。

15十五年 — 臨海・長嶺の二鎮を置いて倭賊に備える

十五年,春三月,百濟王牟大,遣使請婚,王以伊飡伐比智女,送之。秋七月,置臨海、長嶺二鎭,以備倭賊。

十五年の春三月、百済の王の牟大が使者を遣わして婚を請うたので、王は伊飡の伐比智の娘を送った。秋七月、臨海と長嶺の二鎮を置いて倭賊に備えた。

16十六年 — 百済が三千を送って囲みを解く

十六年,夏四月,大水。秋七月,將軍實竹等與高句麗,戰薩水之原,不克,退保犬牙城,高句麗兵圍之,百濟王牟大,遣兵三千,救解圍。

十六年の夏四月、大水が出た。秋七月、将軍の實竹らが高句麗と薩水の原で戦ったが勝てず、退いて犬牙城を守った。高句麗の兵が囲んだので、百済の王の牟大が兵三千を遣わして救い、囲みを解いた。

17十七年 — 百済を救う

十七年,春正月,王親祀神宮。秋八月,高句麗圍百濟雉壤城,百濟請救。王命將軍德智,率兵以救之,高句麗衆潰。百濟王遣使來謝。

十七年の春正月、王はみずから神宮に祭った。秋八月、高句麗が百済の雉壤城を囲んだので、百済が救いを請うた。王が将軍の德智に命じて兵を率いて救わせると、高句麗の軍勢は崩れた。百済の王は使者を遣わして礼を言った。

18十八年 — 實竹が泥河で破る

十八年,春二月,加耶國送白雉,尾長五尺。三月,重修宮室。夏五月,大雨,閼川水漲,漂沒二百餘家。秋七月,高句麗來攻牛山城,將軍實竹出擊,泥河上破之。八月,幸南郊觀稼。

十八年の春二月、加耶国が白い雉を送ったが、尾の長さは五尺であった。三月、宮室を造り直した。夏五月、大雨が降って閼川の水があふれ、二百余戸が流され水に浸かった。秋七月、高句麗が来て牛山城を攻めたので、将軍の實竹が出て撃ち、泥河のほとりで破った。八月、南の郊に行幸して作物を見た。

19十九年 — 高句麗が牛山城を落とす

十九年,夏四月,倭人犯邊。秋七月,旱蝗。命羣官,擧才堪牧民者各一人。八月,高句麗攻陷牛山城。

十九年の夏四月、倭人が辺境を侵した。秋七月、旱と蝗があった。群官に命じて、民を治めるに足る才ある者をそれぞれ一人推挙させた。八月、高句麗が牛山城を攻め落とした。

20二十二年 — 老婆が王をとがめる

二十二年,春三月,倭人攻陷長峰鎭。夏四月,暴風拔木。龍見金城井。京都黄霧四塞。秋九月,王幸捺已郡。郡人波路有女子,名曰碧花,年十六歲,眞國色也,其父衣之以錦繡,置轝冪以色絹,獻王。王以爲饋食,開見之,斂然幼女,怪而不納。及還宮,思念不已,再三微行,往其家幸之。路經古抒郡,宿於老嫗之家。因問曰:「今之人,以國王爲何如主乎?」嫗對曰:「衆以爲聖人,妾獨疑之。何者?竊聞王幸捺已之女,微服而來。夫龍爲魚服,爲漁者所制。今王以萬乘之位,不自愼重,此而爲聖,孰非聖乎?」王聞之大慙,則潛迎其女,置於別室,至生一子。冬十一月,王薨。

二十二年の春三月、倭人が長峰鎮を攻め落とした。夏四月、暴風が吹いて木が抜けた。龍が金城の井戸に現れた。都に黄色い霧が四方を塞いだ。

秋九月、王は捺已郡に行幸した。その郡の人の波路に娘があり、名を碧花といった。年は十六で、まことに国中の美しさであった。その父は錦の衣を着せ、輿に乗せて色絹で覆い、王に献じた。王は食べ物を贈ってきたのだと思って開けて見たところ、しとやかな少女であった。あやしんで受け入れなかった。

宮に帰ってからも思いがやまず、二度三度ひそかに出かけてその家に行き、近づいた。道で古抒郡を通り、老婆の家に泊まったとき、尋ねて言った。「いまの人々は、国王をどのような君主だと思っているか。」

老婆が答えて言った。「多くの者は聖人だと思っておりますが、わたくしだけは疑っております。なぜかといえば、ひそかに聞きますに、王は捺已の娘のもとへ身をやつして通われるとのこと。そもそも龍が魚の衣を着れば、漁る者に捕らえられるものです。いま王は万乗の位にありながら、みずから慎み重んじない。これで聖人であるなら、誰が聖人でないことがありましょうか。」

王はこれを聞いて大いに恥じ、そこでその娘をひそかに迎えて別の室に置き、やがて子を一人生むに至った。冬十一月、王が亡くなった。