大荒西経大荒西經
西北海之外,大荒之隅,有山而不合,名曰不周,有兩黄獸守之。有水曰寒暑之水,水西有濕山,水東有幕山。有禹攻共工國山。
西北の海の外、大荒の隅に山があって、かみ合わずに開いている。名を不周という。二匹の黄色い獣がこれを守っている。水があって寒暑の水という。水の西に湿山があり、水の東に幕山がある。禹が共工の国を攻めた山がある。
有國名曰淑士,顓頊之子。
国があって名を淑士という。顓頊の子である。
有神十人,名曰女媧之腸,化為神,處栗廣之野,横道而處。
神が十人いて、名を女媧の腸という。体が変わって神となり、栗広の野にいて、道を横切って並んでいる。
有人名曰石夷,來風曰韋,處西北隅以司日月之長短。
人がいて名を石夷という。来る風を韋という。西北の隅にいて日と月の長短を司る。
有五采之鳥,有冠,名曰狂鳥。
五色の鳥がいて、とさかがあり、名を狂鳥という。
有大澤之長山,有白民之國。
大沢の長山があり、白民の国がある。
西北海之外,赤水之東,有長脛之國。
西北の海の外、赤水の東に長脛の国がある。
有西周之國,姬姓,食榖。有人方耕,名曰叔均。帝俊生后稷,稷降以百榖。稷之弟曰台璽,生叔均。叔均是代其父及稷播百榖,始作耕。有赤國妻氏。有雙山。
西周の国があり、姫という姓で、穀物を食べる。人がいて、まさに畑を耕している。名を叔均という。帝俊が后稷を生み、后稷はあらゆる穀物を持って降りて来た。后稷の弟を台璽といい、叔均を生んだ。叔均はその父と后稷に代わってあらゆる穀物をまき、はじめて耕作を起こした。赤国の妻氏がいる。双山がある。
西海之外,大荒之中,有方山者,上有青樹,名曰柜格之松,日月所出入也。
西海の外、大荒の中に方山というものがあり、上に青い木があって名を柜格の松という。日と月が出入りする所である。
西北海之外,赤水之西,有天民之國,食榖,使四鳥。
西北の海の外、赤水の西に天民の国があり、穀物を食べ、四つの鳥を使う。
有北狄之國。黄帝之孫曰始均,始均生北狄。
北狄の国がある。黄帝の孫を始均といい、始均が北狄を生んだ。
有芒山。有桂山。有榣山,其上有人,號曰太子長琴。顓頊生老童,老童生祝融,祝融生太子長琴,是處榣山,始作樂風。
芒山がある。桂山がある。榣山があり、その上に人がいて太子長琴と称する。顓頊が老童を生み、老童が祝融を生み、祝融が太子長琴を生んだ。この者が榣山にいて、はじめて楽の調べを作った。
有五采鳥三名:一曰皇鳥,一曰鸞鳥,一曰鳳鳥。
五色の鳥に三つの名がある。一つは皇鳥、一つは鸞鳥、一つは鳳鳥である。
有蟲狀如菟,胷以後者裸不見,青如猨狀。
虫がいて、形は兎のようで、胸より後ろは裸で見えず、青いさまは猿のようである。
大荒之中,有山名曰豐沮玉門,日月所入。
大荒の中に山があり、名を豊沮玉門という。日と月が入る所である。
有靈山,巫咸、巫即、巫朌、巫彭、巫姑、巫真、巫禮、巫抵、巫謝、巫羅十巫,從此升降,百藥爰在。
霊山があり、巫咸・巫即・巫朌・巫彭・巫姑・巫真・巫礼・巫抵・巫謝・巫羅の十人の巫が、ここから上り下りする。あらゆる薬がここにある。
西有王母之山、壑山、海山。有沃民之國,沃民是處。沃之野,鳳鳥之卵是食,甘露是飲。凡其所欲,其味盡存。爰有甘華、甘柤、白栁、視肉、三騅、璇瑰、瑶碧、白木、琅玕、白丹、青丹,多銀鐵。鸞鳥自歌,鳳鳥自舞,爰有百獸,相群是處,是謂沃之野。
西に王母の山・壑山・海山がある。沃民の国があり、沃民がここにいる。沃の野では鳳鳥の卵を食べ、甘い露を飲む。およそ望むものは、その味がすべてそろっている。ここには甘華・甘柤・白柳・視肉・三騅・璇瑰・瑶碧・白木・琅玕・白丹・青丹があり、銀と鉄が多い。鸞鳥はひとりで歌い、鳳鳥はひとりで舞う。ここにはあらゆる獣がいて、群れをなしている。これを沃の野という。
有三青鳥,赤首黒目,一名曰大鵹,一名少鵹,一名曰青鳥。
三羽の青い鳥がいて、頭は赤く目は黒い。一つは大鵹といい、一つは少鵹といい、一つは青鳥という。
有軒轅之臺,射者不敢西鄉,畏軒轅之臺。
軒轅の台がある。射る者が西を向こうとしないのは、軒轅の台を畏れるからである。
大荒之中,有龍山,日月所入。
大荒の中に龍山があり、日と月が入る所である。
有三澤水,名曰三淖,昆吾之所食也。
三つの沢の水があり、名を三淖という。昆吾が食べた所である。
有人衣青,以袂蔽面,名曰女丑之尸。
人がいて青い衣を着て、袖で顔を覆っている。名を女丑の尸という。
有女子之國。
女子の国がある。
有桃山。有䖟山。有桂山。有于土山。
桃山がある。䖟山がある。桂山がある。于土山がある。
有丈夫之國。
丈夫の国がある。
有弇州之山,五采之鳥仰天,名曰鳴鳥。爰有百樂歌儛之風。
弇州の山があり、五色の鳥が天を仰ぐ。名を鳴鳥という。ここにはあらゆる楽と歌と舞の調べがある。
有軒轅之國。江山之南棲為吉。不壽者乃八百歲。
軒轅の国がある。江山の南に住めば吉である。長生きしない者でも八百歳になる。
西海陼中,有神,人面鳥身,珥兩青蛇,踐兩赤蛇,名曰弇茲。
西海の渚の中に神がいて、顔は人、体は鳥で、二匹の青い蛇を耳に掛け、二匹の赤い蛇を踏んでいる。名を弇茲という。
大荒之中,有山名曰日月山,天樞也。吴姖天門,日月所入。有神,人面無臂,兩足反屬于頭上,名曰嘘。顓頊生老童,老童生重及黎,帝令重獻上天,令黎印下地。下地是生噎,處于西極,以行日月星辰之行次。
大荒の中に山があり、名を日月山という。天の枢である。呉姖天門であり、日と月が入る所である。神がいて、顔は人で腕がなく、両足が裏返って頭の上についている。名を嘘という。顓頊が老童を生み、老童が重と黎を生んだ。天帝は重に命じて天をささげ上げさせ、黎に命じて地を押し下げさせた。下の地でこの者が噎を生み、西の果てにいて日と月と星辰の運行の順序を司る。
有人反臂,名曰天虞。
人がいて腕が裏返っている。名を天虞という。
有女子方浴月。帝俊妻常羲,生月十二,此始浴之。
女子がいて、まさに月を浴させている。帝俊の妻の常羲が月を十二生み、この者がはじめてそれを浴させた。
有玄丹之山。有五色之鳥,人面有髮。爰有青鴍、黄鷔、青鳥、黄鳥,其所集者其國亡。
玄丹の山がある。五色の鳥がいて、顔は人で髪がある。ここには青鴍・黄鷔・青鳥・黄鳥がいて、それらが集まる国は滅びる。
有池,名孟翼之攻顓頊之池。
池があり、名を孟翼が顓頊を攻めた池という。
大荒之中,有山,名曰鏖鏊鉅,日月所入者。
大荒の中に山があり、名を鏖鏊鉅という。日と月が入る所である。
有獸,左右有首,名曰屏蓬。
獣がいて、左右に首があり、名を屏蓬という。
有巫山者。有壑山者。有金門之山,有人名曰黄姖之尸。有比翼之鳥,有白鳥,青翼,黄尾,玄喙。有赤犬,名曰天犬,其所下者有兵。
巫山というものがある。壑山というものがある。金門の山があり、人がいて名を黄姖の尸という。比翼の鳥がいる。白い鳥がいて、翼は青く尾は黄色く、くちばしは黒い。赤い犬がいて、名を天犬という。それが降りた所には兵乱が起こる。
西海之南,流沙之濱,赤水之後,黒水之前,有大山,名曰崑崙之丘。有神,人面虎身,有文有尾,皆白,處之。其下有弱水之淵環之,其外有炎火之山,投物輒然。有人,戴勝,虎齒,有豹尾,穴處,名曰西王母。此山萬物盡有。
西海の南、流沙の岸辺、赤水の後ろ、黒水の前に大きな山があり、名を崑崙の丘という。神がいて、顔は人、体は虎で、文があり尾があって、どれも白い。そこにいる。その下には弱水の淵がこれを巡り、その外に炎火の山があって、物を投げ入れるとたちまち燃える。人がいて、勝をかぶり、歯は虎で、豹の尾があり、穴に住む。名を西王母という。この山には万物がすべてある。
大荒之中,有山名曰常陽之山,日月所入。
大荒の中に山があり、名を常陽の山という。日と月が入る所である。
有寒荒之國。有二人女祭、女薎。
寒荒の国がある。二人の人、女祭と女薎がいる。
有壽麻之國。南嶽娶州山女,名曰女虔。女虔生季格,季格生壽麻。壽麻正立無景,疾呼無響。爰有大暑,不可以往。
寿麻の国がある。南嶽が州山の娘を妻に迎え、名を女虔という。女虔が季格を生み、季格が寿麻を生んだ。寿麻はまっすぐ立っても影がなく、急に呼んでも響きがない。ここには大きな暑さがあって、行くことができない。
有人無首,操戈盾立,名曰夏耕之尸。故成湯伐夏桀于章山,克之,斬耕厥前。耕既立,無首,走厥咎,乃降于巫山。
人がいて首がなく、戈と盾を持って立っている。名を夏耕の尸という。昔、成湯が夏の桀を章山で攻めて勝ち、耕をその前で斬った。耕は立ち上がったが首がなく、その咎から逃れて、そこで巫山に下った。
有人名曰吴回,竒左,是無右臂。
人がいて名を呉回という。左だけがあって、右の腕がない。
有蓋山之國。有樹,赤皮支幹,青葉,名曰朱木。
蓋山の国がある。木があって、皮と枝と幹が赤く、葉は青い。名を朱木という。
有一臂民。
一臂の民がいる。
大荒之中,有山名曰大荒之山,日月所入。有人焉三面,是顓頊之子,三面一臂,三面之人不死,是謂大荒之野。
大荒の中に山があり、名を大荒の山という。日と月が入る所である。そこに顔が三つの人がいて、これは顓頊の子である。顔が三つで腕が一つで、顔が三つの人は死なない。これを大荒の野という。
西南海之外,赤水之南,流沙之西,有人珥兩青蛇,乗兩龍,名曰夏后開。開上三嬪于天,得九辯與九歌以下。此天穆之野,髙二千仞,開焉得始歌九招。
西南の海の外、赤水の南、流沙の西に人がいて、二匹の青い蛇を耳に掛け、二匹の龍に乗る。名を夏后開という。開は三度天に客として上り、『九弁』と『九歌』を得て下って来た。ここが天穆の野で、高さは二千仞である。開はここではじめて『九招』を歌った。
有氐人之國。炎帝之孫名曰靈恝,靈恝生氐人,是能上下于天。
氐人の国がある。炎帝の孫を名づけて霊恝といい、霊恝が氐人を生んだ。この者たちは天を上り下りすることができる。
有魚偏枯,名曰魚婦。顓頊死即復蘇。風道北来,天乃大水泉,蛇乃化為魚,是謂魚婦。顓頊死即復蘇。
魚がいて半身が枯れている。名を魚婦という。顓頊は死んでもすぐに生き返った。風が北から吹いて来ると、天はそこで大いに水を降らせ、蛇はそこで体が変わって魚になった。これを魚婦という。顓頊は死んでもすぐに生き返った。
有青鳥,身黄,赤足,六首,名曰𪇆鳥。
青い鳥がいて、体は黄色く足は赤く、首が六つある。名を𪇆鳥という。
有大巫山。有金之山。西南,大荒之隅,有偏句、常羊之山。
大巫山がある。金の山がある。西南、大荒の隅に偏句・常羊の山がある。