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海内経海內經

山海経(山と海の彼方を記した経) 山海經 · 作者未詳 · 郭璞 注 · 戦国〜前漢(注は4世紀) · 段落 39 · 漢字 1,535字 · 朗読 6.1分

山海経(山と海の彼方を記した経) 海経・海内経 山の彼方と海の外の国々を記した最も古い地理書であり、神話の蔵である。一人が作ったものではなく、戦国時代から漢まで多くの手を経てできあがり、4世紀に郭璞が注を付けた。九尾の狐、精衛、夸父、刑天、西王母はみなここから出た。「東海の内、北海の隅に国があり、その名を朝鮮という」 — 朝鮮という名が残る最も早い記録の一つがこの書にある。

東海之内,北海之隅,有國名曰朝鮮;天毒,其人水居,偎人愛人。

東海の内、北海の隅に国があって名を朝鮮という。天毒があり、その人々は水辺に住み、人をいとおしみ人を愛する。

夾注 2

朝鮮今樂浪郡也。天毒即天竺,國貴道德,有文書、金銀、錢貨,浮屠出此國中也。晉大興四年,天竺胡王獻珍寶

朝鮮は今の楽浪郡である。天毒は天竺のことで、その国は道徳を貴び、文書と金銀と銭貨があり、仏はこの国から出た。晋の大興四年に、天竺の胡王が珍しい宝を献じた。

偎,亦愛也,音隱隈

偎もまた愛するという意味である。隱と隈の反切である。

西海之内,流沙之中,有國名曰壑市。

西海の内、流沙の中に国があって名を壑市という。

夾注 1

音郝

壑は郝と同じ音である。

西海之内,流沙之西,有國名曰氾葉。

西海の内、流沙の西に国があって名を氾葉という。

夾注 1

音如氾濫之氾

氾は氾濫の氾と同じ音である。

流沙之西,有鳥山者,三水出焉。爰有黄金、璿瑰、丹貨、銀鐵,皆流于此中。又有淮山,好水出焉。

流沙の西に鳥山というものがあり、三つの水がここから出る。ここには黄金・璿瑰・丹貨・銀・鉄があって、どれもこの中に流れ込む。また淮山があり、好水がここから出る。

夾注 2

三水同出一山也

三つの水はどれも一つの山から出る。

言其中有雜珍奇寶也

その中にさまざまな珍しい宝があるという意味である。

流沙之東,黑水之西,有朝雲之國、司彘之國。黄帝妻嫘祖,生昌意。昌意降處若水,生韓流。韓流擢首、謹耳、人面、豕喙、麟身、渠股、豚止,取淖子曰阿女,生帝顓頊。

流沙の東、黒水の西に朝雲の国と司彘の国がある。黄帝の妻の嫘祖が昌意を生んだ。昌意は降りて若水にいて、韓流を生んだ。韓流は頭が長く、耳が小さく、顔は人、くちばしは豚、体は麟、股は車の輪縁のようで、足は豚である。淖子の娘の阿女を妻に迎え、帝顓頊を生んだ。

夾注 6

《世本》云:黃帝娶于西陵氏之纍祖,產青陽及昌意

『世本』に「黄帝は西陵氏の纍祖を妻に迎え、青陽と昌意を産んだ」とある。

《竹書》云:昌意降居若水,產帝乾荒,乾荒即韓流也,生帝顓頊

『竹書』に「昌意は降りて若水に住み、帝乾荒を産んだ」とある。乾荒がすなわち韓流で、帝顓頊を生んだ。

擢首長咽,謹耳未聞

擢首とは首が長いことである。謹耳については聞いたことがない。

渠,車輞,言跡腳也。《天傳》曰:大如車渠

渠は車の輪縁で、足跡を指す。『天伝』に「大きさは車の渠ほどである」とある。

止足

止は足である。

《世本》云:顓頊母,濁山氏之子,名昌僕

『世本』に「顓頊の母は濁山氏の娘で、名は昌僕である」とある。

流沙之東,黑水之閒,有山名不死之山。

流沙の東、黒水の間に山があって名を不死の山という。

夾注 1

即員邱也

すなわち員邱である。

華山青水之東,有山名曰肇山。有人名曰柏子高,柏子高上下於此,至于天。

華山の青水の東に山があって名を肇山という。人がいて名を柏子高といい、柏子高はここを上り下りして天に至る。

夾注 2

柏子高,仙者也

柏子高は仙人である。

言翱翔雲天,徃來此山也

雲の天を飛び回り、この山を行き来するという意味である。

西南黑水之閒,有都廣之野,后稷葬焉。其城方三百里,蓋天地之中,素女所出也。爰有膏菽、膏稻、膏黍、膏稷,百榖自生,冬夏播琴。鸞鳥自歌,鳯鳥自儛,靈壽實華,草木所聚。爰有百獸,相羣爰處。此草也,冬夏不死。

西南の黒水の間に都広の野があり、后稷がここに葬られている。その城は四方三百里で、おおむね天地の中心であり、素女が出た所である。ここには肥えた豆・肥えた稲・肥えた黍・肥えた稷があって、あらゆる穀物がおのずと生え、冬も夏も種をまく。鸞鳥はひとりで歌い、鳳鳥はひとりで舞う。霊寿は実を結び花を咲かせ、草木が集まる。ここにはあらゆる獣がいて、群れをなしている。この草は冬も夏も枯れない。

夾注 5

其城方三百里,蓋天下之中素女所出也。《離騷》曰:絕都廣野而直指號

その城は四方三百里で、おおむね天下の中心であり、素女が出た所である。『離騒』に「都広の野を過ぎてまっすぐに指す」とある。

播琴猶播殖,方俗言耳

播琴は播殖と同じで、その土地の言葉であるだけだ。

靈壽,木名也,似竹,有枝節

霊寿は木の名で、竹に似て枝と節がある。

在此業殖也

ここで育つ。

於此羣聚也

ここに群れ集まる。

南海之内,黑水青水之閒,有水名曰若木,若水出焉。

南海の内、黒水と青水の間に水があって名を若木といい、若水がここから出る。

有禺中之國。有列襄之國。有靈山,有赤蛇在木上,名曰蝡蛇,木食。

禺中の国がある。列襄の国がある。霊山があり、赤い蛇が木の上にいて、名を蝡蛇といい、木を食べる。

有鹽長之國。有人焉鳥首,名曰鳥民。

塩長の国がある。そこに頭が鳥の人がいて、名を鳥民という。

有九丘,以水絡之,名曰陶唐之丘、叔得之丘、孟盈之丘、昆吾之丘、黑白之丘、赤望之丘、參衛之丘、武夫之丘、神民之丘。有木,青葉紫莖,玄華黄實,名曰建木,百仭無枝,上有九欘,下有九枸,其實如麻,其葉如芒。大皥爰過,黄帝所為。

九つの丘があって水がこれを巡っており、名を陶唐の丘・叔得の丘・孟盈の丘・昆吾の丘・黒白の丘・赤望の丘・参衛の丘・武夫の丘・神民の丘という。木があって、葉は青く茎は紫、花は黒く実は黄色い。名を建木という。百仞まで枝がなく、上に九つの曲がった枝があり、下に九つの曲がった根がある。その実は麻のようで、その葉は芒のようである。大皥がここを通り、黄帝が作ったものである。

夾注 1

一作:有叔得之丘

「叔得の丘がある」と記したものもある。

有窫窳,龍首,是食人。有青獸,人面,名曰猩猩。

窫窳がいて、頭は龍で、人を食べる。青い獣がいて顔は人で、名を猩猩という。

西南有巴國。大皥生咸鳥,咸鳥生乘釐,乘釐生後照,後照是始為巴人。

西南に巴の国がある。大皥が咸鳥を生み、咸鳥が乗釐を生み、乗釐が後照を生んだ。後照がはじめて巴の人となった。

有國名曰流黄辛氏,其域中方三百里,其出是塵。有巴遂山,澠水出焉。

国があって名を流黄辛氏という。その境の内は四方三百里で、そこから出るものは塵である。巴遂山があり、澠水がここから出る。

又有朱卷之國。有黑蛇,青首,食象。

また朱巻の国がある。黒い蛇がいて、頭は青く、象を呑む。

南方有贑巨人,人面長脣,黑身有毛,反踵,見人則笑,唇蔽其目,因可逃也。

南方に贑巨人がいて、顔は人で唇が長く、体は黒く毛がある。踵が後ろ向きで、人を見ると笑い、唇がその目を覆うので、その間に逃げることができる。

夾注 1

一作:見人笑亦笑

「人が笑うのを見ると自分も笑う」と記したものもある。

又有黑人,虎首鳥足,兩手持蛇,方啗之。

また黒い人がいて、頭は虎、足は鳥で、両手に蛇を持ち、まさにそれを噛んでいる。

有羸民,鳥足,有封豕。

羸民がいて、足は鳥である。大きな猪がいる。

有人曰苖民。有神焉,人首蛇身,長如轅,左右有首,衣紫衣,冠旃冠,名曰延維,人主得而饗食之,伯天下。

人がいて苖民という。神がいて、頭は人、体は蛇で、長さは轅のようで、左右に首がある。紫の衣を着て、赤い毛氈の冠をかぶる。名を延維という。君主がこれを得て食べれば、天下の覇者となる。

有鸞鳥自歌,鳯鳥自儛。鳯鳥首文曰德,翼文曰順,膺文曰仁,背文曰義,見則天下和。

鸞鳥がいてひとりで歌い、鳳鳥がいてひとりで舞う。鳳鳥の頭の文を徳といい、翼の文を順といい、胸の文を仁といい、背の文を義という。これが現れると天下は和らぐ。

又有青獸如莵,名曰𡹤狗。有翠鳥。有孔鳥。

また青い獣がいて兎のようで、名を𡹤狗という。カワセミがいる。クジャクがいる。

南海之内有衡山,有菌山,有桂山。有山名三天子之都。

南海の内に衡山があり、菌山があり、桂山がある。山があって名を三天子の都という。

南方蒼梧之丘,蒼梧之淵,其中有九嶷山,舜之所葬,在長沙零陵界中。

南方の蒼梧の丘、蒼梧の淵、その中に九嶷山があり、舜が葬られた所である。長沙の零陵の境の内にある。

北海之内,有蛇山者,蛇水出焉,東入于海。有五彩之鳥,飛蔽一鄉,名曰翳鳥。又有不鉅之山,巧倕葬其西。

北海の内に蛇山というものがあり、蛇水がここから出て、東へ海に入る。五色の鳥がいて、飛ぶと一つの郷を覆う。名を翳鳥という。また不鉅の山があり、巧倕がその西に葬られている。

北海之内,有反縛盗械,帶戈常倍之佐,名曰相顧之尸。

北海の内に、後ろ手に縛られて刑具をはめられ、戈を帯びたまま常に背を向けている者がいる。名を相顧の尸という。

伯夷父生西岳,西岳生先龍,先龍是始生氐羌,氐羌乞姓。

伯夷父が西岳を生み、西岳が先龍を生んだ。先龍がはじめて氐と羌を生んだ。氐と羌は乞という姓である。

北海之内,有山,名曰幽都之山,黑水出焉。其上有玄鳥、玄蛇、玄豹、玄虎、玄孤蓬尾。有大玄之山。有玄丘之民。有大幽之國。有赤脛之民。

北海の内に山があり、名を幽都の山という。黒水がここから出る。その上に黒い鳥・黒い蛇・黒い豹・黒い虎・尾のふさふさした黒い狐がいる。大玄の山がある。玄丘の民がいる。大幽の国がある。脛の赤い民がいる。

有釘靈之國,其民從䣛已下有毛,馬蹏善走。

釘霊の国があり、その民は膝から下に毛があり、馬の蹄で、よく走る。

炎帝之孫伯陵,伯陵同吳權之妻阿女緣婦,緣婦孕三年,是生鼓、延、殳。殳始為侯,鼓、延是始為鍾,為樂風。

炎帝の孫の伯陵が、呉権の妻の阿女縁婦と通じ、縁婦は三年はらんで、鼓・延・殳を生んだ。殳がはじめて的を作り、鼓と延がはじめて鐘を作って、楽の調べを作った。

黄帝生駱明,駱明生白馬,白馬是為鯀。

黄帝が駱明を生み、駱明が白馬を生んだ。白馬がすなわち鯀である。

帝俊生禺號,禺號生淫梁,淫梁生番禺,是始為舟。番禺生奚仲,奚仲生吉光,吉光是始以木為車。

帝俊が禺号を生み、禺号が淫梁を生み、淫梁が番禺を生んだ。番禺がはじめて舟を作った。番禺が奚仲を生み、奚仲が吉光を生んだ。吉光がはじめて木で車を作った。

少皥生般,般是始為弓矢。

少皥が般を生んだ。般がはじめて弓と矢を作った。

帝俊賜羿彤弓素矰,以扶下國,羿是始去恤下地之百艱。

帝俊は羿に赤い弓と白い矢を賜わって下の国を助けさせた。羿がはじめて下の地のあらゆる苦難を救いに行った。

帝俊生晏龍,晏龍是為琴瑟。

帝俊が晏龍を生んだ。晏龍が琴と瑟を作った。

帝俊有子八人,是始為歌舞。

帝俊に八人の子があり、この者たちがはじめて歌と舞を作った。

帝俊生三身,三身生義均,義均是始為巧倕,是始作下民百巧。后稷是播百榖。稷之孫曰叔均,始作牛耕。大比赤隂,是始為國。禹、鯀是始布土,均定九州。

帝俊が三身を生み、三身が義均を生んだ。義均がはじめて巧倕となり、下の民のあらゆる技を作った。后稷はあらゆる穀物をまいた。后稷の孫を叔均といい、はじめて牛で耕すことを作った。大比赤陰がはじめて国を建てた。禹と鯀がはじめて土を広げ、九州を等しく定めた。

夾注 1

一作:是始作牛耕

「はじめて牛で耕すことを作った」と記したものもある。

炎帝之妻,赤水之子聽訞生炎居,炎居生節竝,節竝生戲器,戲器生祝融,祝融降處於江水,生共工。共工生術器,術器首方顚,是復土穰,以處江水。共工生后土,后土生噎鳴,噎鳴生歳十有二。

炎帝の妻、赤水の娘の聴訞が炎居を生み、炎居が節並を生み、節並が戯器を生み、戯器が祝融を生んだ。祝融は降りて江水にいて、共工を生んだ。共工が術器を生んだ。術器は頭が四角く頂もそうで、土を盛って江水にいた。共工が后土を生み、后土が噎鳴を生んだ。噎鳴は十二の歳を生んだ。

洪水滔天。鯀竊帝之息壤以堙洪水,不待帝命。帝令祝融殺鯀于羽郊。鯀復生禹。帝乃命禹卒布土以定九州。

洪水が天まであふれた。鯀は天帝の息壌を盗んで洪水をふさいだが、天帝の命を待たなかった。天帝は祝融に命じて鯀を羽の郊で殺させた。鯀はふたたび禹を生んだ。天帝はそこで禹に命じて、ついに土を広げて九州を定めさせた。