朝鮮 二 — 二人の将軍が互いに食い違う朝鮮列傳 二
1二手に分かれて進み、どちらも敗れる
天子募罪人擊朝鮮。其秋,遣樓船將軍楊仆從齊浮渤海;兵五萬人,左將軍荀彘出遼東:討右渠。右渠發兵距險。左將軍卒正多率遼東兵先縱,敗散,多還走,坐法斬。樓船將軍將齊兵七千人先至王險。右渠城守,窺知樓船軍少,即出城擊樓船,樓船軍敗散走。將軍楊仆失其眾,遁山中十餘日,稍求收散卒,復聚。左將軍擊朝鮮浿水西軍,未能破自前。
天子は罪人を募って朝鮮を討たせた。その秋、楼船将軍の楊僕を遣わして斉から渤海を渡らせ、左将軍の荀彘には兵五万を率いて遼東から出撃させ、右渠を討たせた。右渠は兵を出して険しい地によって防いだ。
左将軍の卒正である多が遼東の兵を率いて先に攻めかかったが、敗れて散り、多は引き返して逃げたので、法に問われて斬られた。
楼船将軍は斉の兵七千人を率いて先に王険に至った。右渠は城を守っていたが、楼船の軍が少ないのを見て取ると、すぐに城を出て楼船を攻め、楼船の軍は敗れて散り散りに逃げた。将軍の楊僕はその軍勢を失い、十日余り山中に隠れ、やがて散った兵を少しずつ集めてまた軍をまとめた。左将軍は朝鮮の浿水西の軍を攻めたが、押し進んで破ることはできなかった。
2太子が浿水まで来て引き返す
天子為兩將未有利,乃使衛山因兵威往諭右渠。右渠見使者頓首謝:「願降,恐兩將詐殺臣;今見信節,請服降。」遣太子入謝,獻馬五千匹,及饋軍糧。人眾萬餘,持兵,方渡浿水,使者及左將軍疑其為變,謂太子已服降,宜命人毋持兵。太子亦疑使者左將軍詐殺之,遂不渡浿水,復引歸。山還報天子,天子誅山。
天子は二人の将軍に成果がないと見て、衛山を遣わし、兵の威勢を借りて右渠を諭させた。右渠は使者に会うと頭を地につけて謝った。「降伏したいと思っていましたが、二人の将軍が偽って私を殺すのではないかと恐れていました。いま信義の割符を見ましたので、服して降伏することをお願いします。」
そして太子を遣わして入朝して謝らせ、馬五千匹を献じ、軍の食糧も送ることにした。人は一万余りで、みな武器を持っていた。まさに浿水を渡ろうとしたとき、使者と左将軍は変事があるのではないかと疑い、「太子はすでに服して降伏したのだから、人々に武器を持たせないよう命じるべきだ」と言った。太子もまた、使者と左将軍が偽って自分を殺すのではないかと疑い、とうとう浿水を渡らず、兵を引いて帰ってしまった。衛山が帰って天子に申し上げると、天子は衛山を殺した。
3城を囲んだが、数か月たっても落とせない
左將軍破浿水上軍,乃前,至城下,圍其西北。樓船亦往會,居城南。右渠遂堅守城,數月未能下。
左将軍は浿水のほとりの軍を破り、そこで前進して城の下に至り、その西北を囲んだ。楼船も行って合流し、城の南に陣を置いた。右渠はそのまま城を固く守り、数か月たっても城を落とすことはできなかった。
4二人の将軍が食い違い、正しに来た者まで死ぬ
左將軍素侍中,幸,將燕代卒,悍,乘勝,軍多驕。樓船將齊卒,入海,固已多敗亡;其先與右渠戰,因辱亡卒,卒皆恐,將心慚,其圍右渠,常持和節。左將軍急擊之,朝鮮大臣乃陰閒使人私約降樓船,往來言,尚未肯決。左將軍數與樓船期戰,樓船欲急就其約,不會;左將軍亦使人求閒卻降下朝鮮,朝鮮不肯,心附樓船:以故兩將不相能。左將軍心意樓船前有失軍罪,今與朝鮮私善而又不降,疑其有反計,未敢發。天子曰將率不能,前(及)[乃]使衛山諭降右渠,右渠遣太子,山使不能剸決,與左將軍計相誤,卒沮約。今兩將圍城,又乖異,以故久不決。使濟南太守公孫遂往(征)[正]之,有便宜得以從事。遂至,左將軍曰:「朝鮮當下久矣,不下者有狀。」言樓船數期不會,具以素所意告遂,曰:「今如此不取,恐為大害,非獨樓船,又且與朝鮮共滅吾軍。」遂亦以為然,而以節召樓船將軍入左將軍營計事,即命左將軍麾下執捕樓船將軍,并其軍,以報天子。天子誅遂。
左将軍はもともと侍中として天子の寵愛を受け、燕と代の兵を率いていたが、その兵は荒く、勝ちに乗って軍はすっかり驕っていた。楼船は斉の兵を率いて海から入ったが、すでに敗れて死んだ者が多く、先に右渠と戦って恥をかき兵を失っていたので、兵はみな恐れ、将軍も心に恥じていた。右渠を囲んではいても、いつも和議の割符を手もとに持っていた。
左将軍が激しく攻めかかると、朝鮮の大臣はひそかに人を遣わして、内々に楼船へ降伏する約束をした。行き来して話し合ったが、まだ決着はつかなかった。左将軍は何度も楼船と戦う日を取り決めたが、楼船はその約束を早く成立させたいと思って、会おうとしなかった。左将軍も人を遣わして隙をうかがい、朝鮮を降伏させようとしたが、朝鮮は応じず、心は楼船に傾いていた。こうして二人の将軍は互いに折り合わなかった。左将軍は心のうちで、楼船には先に軍を失った罪があるのに、いまは朝鮮と内々に親しくしながらなお降伏させもしないと考え、背く企てがあるのではないかと疑ったが、思い切って事を起こすことはできなかった。
天子は言った。「将軍たちは役に立たない。先に衛山を遣わして右渠を諭して降伏させようとしたところ、右渠は太子を遣わしてきたが、衛山は使者として決断することができず、左将軍との思惑が食い違って、とうとう約束をだめにしてしまった。いま二人の将軍は城を囲みながら、また互いに食い違っている。そのためにいつまでも決着がつかないのだ。」そこで済南太守の公孫遂を遣わしてこれを正させ、都合に応じて自分の判断で事を処理できるようにした。
公孫遂が着くと、左将軍は言った。「朝鮮はとうに落ちているはずなのに、落ちないのには理由があります。」そして楼船が何度も日を取り決めながら会わなかったことを話し、日ごろ思っていたことを一つ一つ公孫遂に告げて言った。「いまこのまま放っておいて捕らえなければ、大きな害になるのではないかと恐れます。楼船だけのことではありません。やがて朝鮮と手を組んで、我が軍を滅ぼすことになるでしょう。」
公孫遂もそのとおりだと思い、割符をもって楼船将軍を呼び、左将軍の陣営に入って事を相談させることにし、そのうえで左将軍の配下に命じて楼船将軍を捕らえさせ、その軍を併せた。そしてこれを天子に申し上げた。天子は公孫遂を殺した。