いにしえの文 › 大唐西域記(大唐の西域をめぐる記) › 第10巻
恭御陁国恭御陁國
大唐西域記(大唐の西域をめぐる記) 第10巻 玄奘が十七年のあいだ西域とインドの百三十八か国を踏んで帰り、唐の太宗に奉った記録。西遊記のもとになった書だが、ここにあるのは妖怪ではなく、国ごとの広さと気候と言葉と信仰である。法顕より二百年後、慧超より八十年前の道である。
恭御陁國周千餘里,國大都城周二十餘里。濱近海隅,山阜隱軫,土地墊濕,稼穡時播。氣序溫暑,風俗勇烈。其形偉,其貌黑,粗有禮義,不甚欺詐。至於文字,同中印度,語言風調,頗有異焉。崇敬外道,不信佛法。天祠百餘所,異道萬餘人。國境之內,數十小城,接山嶺,據海交,城既堅峻,兵又敢勇,威雄鄰境,遂無強敵。國臨海濱,多有奇寶,螺貝珠璣,斯為貨用。出大青象,超乘致遠。
恭御陁国は周り千余里である。国の大都城は周り二十余里である。海の隅に近く浜し、山や阜が隠れ連なっている。土地は低く湿っており、植え収めることを時に合わせて行う。気候は温かく暑く、風俗は勇ましく烈しい。その形は偉く、その貌は黒い。礼儀がおおよそあり、あまり欺き詐らない。文字に至っては中インドと同じであるが、言葉と調子にはかなり異なるところがある。外道を崇め敬い、仏法を信じない。天祠は百余ヶ所、異道の者は万余人である。国の境の内に数十の小城があり、山や嶺に接し、海の交わるところに拠っている。城はすでに堅く峻しく、兵もまた敢く勇ましいので、隣の境に威が雄しく、ついに強い敵がない。国は海の浜に臨んで奇しい宝が多く、螺・貝・珠・璣を貨として用いる。大きな青い象が出て、これに乗って遠くに至る。
從此西南入大荒野,深林巨木,幹霄蔽日,行千四五百里,至羯𩜁伽國。
ここから西南へ大きな荒野に入る。深い林と巨きな木が霄を幹き日を蔽う。千四、五百里行くと、羯𩜁伽国に至る。
夾注 2
力甑反。
力と甑の反である。
南印度境。
南インドの境である。