商弥国商彌國
商彌國周二千五六百里。山川相間,堆阜高下。穀稼備植,菽麥彌豐,多蒲萄。出雌黃,鑿崖析石,然後得之。山神暴惡,屢為災害,祀祭後入,平吉往來。若不祈禱,風雹奮發。氣序寒,風俗急。人性淳質,俗無禮義,智謀寡狹,伎能淺薄。文字同睹貨邏國,語言別異。多衣氈褐。其王釋種也,崇重佛法,國人從化,莫不淳信。伽藍二所,僧徒寡少。
商弥国は周り二千五、六百里である。山と川が相い間り、堆と阜が高く低い。穀の稼を備えて植え、菽と麦がいよいよ豊かで、葡萄が多い。雌黄が出るが、崖を鑿ち石を析いた後にこれを得る。山の神が暴く悪しく、しばしば災いと害をなすので、祀り祭った後に入れば、平らかに吉く往き来する。もし祈り禱らなければ、風と雹が奮い発つ。気候は寒く、風俗は急しい。人の性質は淳く質であるが、風俗に礼義がなく、智と謀は寡なく狭く、伎と能は浅く薄い。文字は睹貨邏国と同じであるが、言語は別に異なっている。多く氈と褐を衣る。その王は釈の種であり、仏法を崇め重んじているので、国の人は化に従い、淳く信じない者はない。伽藍は二ヶ所、僧徒は寡ない。
2波謎羅川
國境東北,逾山越谷,經危履險,行七百餘里,至波謎羅川。東西千餘里,南北百餘里,狹隘之處不逾十里。據兩雪山間,故寒風淒勁,春夏飛雪,晝夜飄風。地堿鹵,多礫石,播植不滋,草木稀少,遂致空荒,絕無人止。
国の境の東北へ、山を踰え谷を越え、危きを経て険しきを履み、七百余里行くと波謎羅川に至る。東西千余里、南北百余里で、狭く隘いところは十里を越えない。二つの雪の山の間に拠っているので、寒い風が淒しく勁しく、春と夏にも雪が飛び、昼も夜も風が飄る。地は堿く鹵く、礫と石が多く、播き植えても滋らず、草と木は稀く少ないので、ついに空しく荒れ果てて、止まる人が絶えて無い。
3大きな龍の池 — 水が派れて東西に流れるところ
波謎羅川中有大龍池,東西三百餘里,南北五十餘里,據大蔥嶺內,當贍部洲中,其地最高也。水乃澄清皎鏡,莫測其深,色帶青黑,味甚甘美。潛居則鮫、螭、魚、龍、黿、鼉、龜、鱉,浮遊乃鴛鴦、鴻雁、駕鵝、鹔、鴇。諸鳥大卵,遺荒野,或草澤間,或沙渚上。池西派一大流,西至達摩悉鐵帝國東界,與縛芻河合而西流,故此已右,水皆西流。池東派一大流,東北至佉沙國西界,與徙多河合而東流,故此已左,水皆東流。
波謎羅川の中に大きな龍の池があり、東西三百余里、南北五十余里である。大きな蔥嶺の内に拠り、贍部洲の中に当たって、その地は最も高い。水は澄み清んで皎い鏡のようで、その深さを測ることができず、色は青く黒きを帯び、味は甚だ甘く美しい。潜んで居るものは鮫・螭・魚・龍・黿・鼉・龜・鱉であり、浮かび遊ぶものは鴛鴦・鴻雁・駕鵝・鹔・鴇である。諸々の鳥の大きな卵が荒れた野に遺され、あるいは草と澤の間に、あるいは沙の渚の上にある。池の西から一つの大きな流れが派れ、西へ達摩悉鉄帝国の東の界に至り、縛芻河と合して西へ流れる。だからここより右は、水がみな西へ流れる。池の東から一つの大きな流れが派れ、東北へ佉沙国の西の界に至り、徙多河と合して東へ流れる。だからここより左は、水がみな東へ流れる。
4缽露羅国
波謎羅川南,越山有缽露羅國,多金銀,金色如火。
波謎羅川の南、山を越えると缽露羅国があり、金と銀が多く、金の色は火のようである。
自此川中東南,登山履險,路無人裏,唯多冰雪。行五百餘里,至朅盤陁國。
ここから川の中を東南へ、山に登り険しきを履むが、路に人の里がなく、ただ氷と雪が多いばかりである。五百余里行くと朅盤陀国に至る。