いにしえの文 › 大唐西域記(大唐の西域をめぐる記) › 第12巻
屍棄尼国屍棄尼國
大唐西域記(大唐の西域をめぐる記) 第12巻 玄奘が十七年のあいだ西域とインドの百三十八か国を踏んで帰り、唐の太宗に奉った記録。西遊記のもとになった書だが、ここにあるのは妖怪ではなく、国ごとの広さと気候と言葉と信仰である。法顕より二百年後、慧超より八十年前の道である。
屍棄尼國周二千餘里,國大都城周五六里。山川連屬,沙石遍野。多宿麥,少穀稼,林樹稀疏,花果寡少。氣序寒烈,風俗獷勇,忍於殺戮,務於盜竊,不知禮義,不識善惡,迷未來禍福,懼現世災殃。形貌鄙陋,皮褐為服。文字同睹貨邏國,語言有異。
屍棄尼国は周り二千余里、国の大都城は周り五、六里である。山と川が連なり続き、沙と石が野に遍く広がっている。宿麦が多く穀の稼は少ない。林の樹は稀く疏らで、花と果は寡ない。気候は寒く烈しく、風俗は獷く勇ましい。殺戮を忍び、盗竊に務め、礼義を知らず、善悪を識らない。未来の禍福に迷いながら、現世の災殃を懼れる。形貌は鄙しく陋しく、皮と褐を服とする。文字は睹貨邏国と同じであるが、言語には異なるところがある。
越達摩悉鐵帝國大山之南,至商彌國。
達摩悉鉄帝国の大山の南を越えると商弥国に至る。