僧伽施国
1僧伽施国 — 仏が天から下りた三つの階
從此東南行十八由延,有國名僧仂施。佛上忉利天三月爲母說法來下處。佛上忉利天,以神通力,都不使諸弟子知。未滿七日,乃放神足。阿那律以天眼遙見世尊,即語尊者大目連,汝可往問訊世尊。目連即往,頭面禮足,共相問訊。問訊已,佛語目連︰「吾却後七日,當下閻浮提。」目連既還,于時八國大王及諸臣民,不見佛久,咸皆渴仰,雲集此國以待世尊。時優鉢羅比丘尼即自心念︰「今日國王、臣民皆當迎佛,我是女人,何由得先見佛?」即以神足,化作轉輪聖王,最前禮佛。佛從忉利天上東向下。下時,化作三道寶階:佛在中道七寶階上行;梵天王亦化作白銀階,在右邊執白拂而侍;天帝釋化作紫金階,在左邊執七寶蓋而侍。諸天無數從佛來下。佛既下,三階俱没於地,餘有七級而現。後阿育王欲知其根際,遣人掘看,下至黃泉,根猶不盡。王益敬信,即於階上起精舍,當中階作丈六立像,精舍後立石柱,高二十肘,上作師子,柱內四邊有佛像,內外映徹,淨若琉璃。有外道論師與沙門諍此住處,時沙門理屈,於是共立誓言︰「此處若是沙門住處者,今當有靈驗。」作是言已,柱頭師子乃大鳴吼見證,於是外道懼怖,心伏而退。佛以受天食三月故,身作天香,不同世人。即便浴身,後人於此處起浴室,浴室猶在。優鉢羅比丘尼初禮佛處今亦起塔。佛在世時,有翦髮、爪作塔,及過去三佛并釋迦文佛坐處、經行處,及作諸佛形像處,盡有塔,今悉在。天帝釋、梵天王從佛下處亦起塔。
ここから東南へ十八由延行くと、僧伽施という国がある。仏が忉利天に上って三月のあいだ母のために法を説き、下りてきた所である。仏が忉利天に上るときは、神通力によって弟子たちの誰にも知らせなかったが、七日が満ちないうちに神足を放って示した。阿那律が天眼で遠く世尊を見つけ、尊者大目連に「あなたが行って世尊に問訊しなさい」と言った。目連はすぐに上って、頭を地につけて足に礼拝し、互いに問訊した。問訊が終わると、仏は目連に「わたしは七日の後に閻浮提へ下りよう」と言った。目連が戻ると、このとき八つの国の大王や臣民が、長く仏を見ていなかったので、みな渇くように仰ぎ慕い、この国に雲のように集まって世尊を待った。そのとき優鉢羅比丘尼は心の中で思った。「今日は国王も臣民もみな仏をお迎えするだろう。わたしは女人であるから、どうして先にお目にかかれようか。」そこで神足によって転輪聖王の姿に変じ、いちばん先に仏を礼拝した。仏は忉利天から東を向いて下りてきた。下りるとき、三筋の宝の階が化してあらわれた。仏は中央の七宝の階の上を歩き、梵天王も白銀の階を化作して、右の側で白い払子を持って侍り、天帝釈は紫金の階を化作して、左の側で七宝の天蓋を持って侍った。無数の諸天が仏に従って下りてきた。仏が下りてしまうと、三つの階はともに地に沈み、七つの段だけが残って見えていた。のちに阿育王がその根もとがどこまであるのかを知ろうとして、人を遣わして掘らせてみたが、黄泉に届くまで掘っても根は尽きなかった。王はいよいよ敬いと信を深め、すぐに階の上に精舎を建て、中央の階に当たる所に一丈六尺の立像を造った。精舎の後ろには石の柱を立て、高さは二十肘で、上に獅子を据えてある。柱の内の四面に仏像があり、内も外も透き通って、瑠璃のように清らかである。かつて外道の論師が沙門とこの住処を争ったことがあり、そのとき沙門の側が理に詰まったので、互いに誓いを立てて言った。「この所がもし沙門の住む所であるなら、今まさに霊験があるはずだ。」そう言い終わると、柱の頭の獅子が大きく吼えて証を示したので、外道は恐れて、心から服して退いた。仏は三月のあいだ天の食を受けたので、身から天の香りがして世の人と同じでなかった。そこで身を洗ったが、後の人がその所に浴室を建て、浴室は今も残っている。優鉢羅比丘尼が初めて仏を礼拝した所にも、今は塔が建てられている。仏が在世のとき、剃った髪や爪で建てた塔、また過去の三仏および釈迦文仏が座った所、歩き回った所、諸仏の形像を造った所には、どこにも塔があり、今もみな残っている。天帝釈と梵天王が仏に従って下りた所にも塔が建てられている。
2千人の僧と尼
此處僧及尼可有千人,皆同衆食,雜大、小乘學。
この所には僧と尼が千人ほどいて、みな同じ衆の食をとり、大乗と小乗をまじえて学ぶ。
3白い耳の竜王の布施
住處一白耳龍,與此衆僧作檀越,令國內豐熟,雨澤以時,無諸災害,使衆僧得安。衆僧感其惠,故爲作龍舍,敷置坐處,又爲龍設福食供養。衆僧日日衆中別差三人,到龍舍中食。每至夏坐訖,龍輒化形作一小蛇,兩耳邊白。衆僧識之,銅杅盛酪,以龍置中。從上座至下座行之,似若問訊,遍便化去,年年一出。
その住処に白い耳の竜がいて、この僧たちの施主となり、国の中を豊作にし、雨の恵みを時に合わせて降らせ、さまざまな災害をなくして、僧たちを安らかにさせる。僧たちはその恵みに感じて、竜のために舎を造り、座る所を設け、また竜のために福を願う食を供えて供養する。僧たちは日ごとに衆の中から三人を別に選び、竜の舎に行って食事をさせる。夏の安居が終わるたびに、竜はたちまち小さな蛇に姿を変えるが、両の耳のあたりが白い。僧たちはそれと見分けて、銅の器に乳酪を盛り、竜をその中に入れる。上座から下座まで順に回してゆくと、まるで問訊をしているようである。ひと回りすると、そのまま化して去る。年に一度あらわれる。
4豊かな国
其國豐饒,人民熾盛,最樂無比。諸國人來,無不經理,供給所須。
その国は豊かで、人民は栄えさかえ、楽しいことは比べようもない。諸国の人が来れば、世話をしないことはなく、必要なものを供給する。
5火境 — 鬼神が掃く塔
寺西北五十由延,有一寺名火境。火境者,惡鬼名也。佛本化是惡鬼。後人於此處起精舍,以精舍布施阿羅漢,以水灌手,水瀝滴地,其處故在。正復掃除,常現不滅。此處別有佛塔,善鬼神常掃灑,初不須人功。有邪見國王言︰「汝能如是者,我當多將兵衆住此,益積糞穢,汝復能除不?」鬼神即起大風,吹之令淨。此處有百枚小塔。人終日數之,不能得知。若至意欲知者,便一塔邊置一人,已復計數。人人或多或少,其不可得知。有一僧伽藍,可六七百僧。此中有辟支佛食處、泥洹地,大如車輪。餘處生草,此處獨不生。及曬衣地處,亦不生草。衣條著地跡,今故現在。
寺の西北五十由延のところに、火境という名の寺が一つある。火境とは悪鬼の名である。仏がもともとこの悪鬼を教化したので、後の人がその所に精舎を建てた。精舎を阿羅漢に布施するとき、水を手に注いだが、その水が滴り落ちた地の跡が、今も残っている。いくら掃き払っても、いつも現れて消えない。この所には別に仏塔が一つあり、善い鬼神がいつも掃いて水をまくので、はじめから人手を必要としない。邪な見を持つ国王が言った。「おまえがそのようにできるのなら、わたしは兵を大勢連れてここに居すわり、糞や汚れをますます積み上げよう。それでもなお除けるか。」すると鬼神はすぐに大風を起こし、吹き払って清らかにした。この所には小さな塔が百基ある。人が一日かけて数えても、数を知ることができない。どうしても知ろうとする者が、塔ごとに一人ずつ人を立てて、それから数えさせても、人の数が多くなったり少なくなったりして、ついに知ることができない。僧伽藍が一つあり、僧は六、七百人ほどである。この中には辟支仏が食事をした所と、涅槃に入った地があり、大きさは車輪ほどである。ほかの所には草が生えるのに、この所だけは生えない。衣を干した地の所にも、草が生えない。衣の裾が地に触れた跡が、今もそのまま残っている。
6竜精舎の安居
法顯在龍精舍夏坐。
法顕は竜精舎で夏の安居を過ごした。