成道の地 伽耶
1伽耶城
從此西行四由延,到伽耶城,城內亦空荒。
ここから西へ四由延行って、伽耶城に至ったが、城の中もやはり空しく荒れていた。
2六年の苦行の跡、乳粥を受けた跡
復南行二十里,到菩薩本苦行六年處,處有林木。從此西行三里,到佛入水洗浴,天按樹枝得攀出池處。又北行二里,得彌家女奉佛乳糜處。從此北行二里,佛於一大樹下石上,東向坐食糜,樹、石今悉在,石可廣、長六尺,高二尺許。中國寒暑均調,樹木或數千歲,乃至萬歲。
さらに南へ二十里行くと、菩薩がもともと六年のあいだ苦行した所に至る。その所には林がある。ここから西へ三里行くと、仏が水に入って身を洗われたとき、天が木の枝を押し下げてくれ、それにつかまって池から出られた所に至る。また北へ二里行くと、弥家の女が仏に乳粥を献じた所に出る。ここから北へ二里行くと、仏が大きな木の下の石の上に東を向いて座り、粥を召し上がった所がある。木も石も今もみな残っていて、石は幅と長さが六尺、高さは二尺ほどである。中国は寒さ暑さがほどよいので、木が数千年、ひいては万年も生きることがある。
3石窟に映った影 — ここではない
從此東北行半由延,到一石窟。菩薩入中,西向結加趺坐,心念:「若我成道,當有神驗。」石壁上即有佛影現,長三尺許,今猶明亮。時天地大動,諸天在空中白言:「此非是過去、當來諸佛成道處,去此西南行,減半由延,到貝多樹下,是過去、當來諸佛成道處。」諸天說是語已,即便在前唱導,導引而去。菩薩起行。離樹三十步,天授吉祥草,菩薩受之。復行十五步,五百青雀飛來,繞菩薩三帀而去。
ここから東北へ半由延行くと、一つの石窟に至る。菩薩がその中に入り、西を向いて結跏趺坐し、心の中で「わたしが道を成じるのであれば、霊妙なしるしがあるはずだ」と思うと、石の壁の上にすぐ仏の影が現れた。長さは三尺ほどで、今もなお明らかである。そのとき天も地も大きく動き、諸天が空の中から申し上げた。「ここは過去と未来の諸仏が道を成じる所ではありません。ここから西南へ、半由延に足りないほど行った貝多樹の下が、過去と未来の諸仏が道を成じる所です。」諸天はこう言い終わると、すぐ前に立って歌いながら導き、先に立って行った。菩薩が起って歩き出し、木から三十歩離れた所で、天が吉祥草を差し出したので、菩薩はこれを受けた。さらに十五歩行くと、五百羽の青い雀が飛んできて、菩薩を三度めぐってから去った。
4菩提樹の下 — 魔王を退けて道を成じる
菩薩前到貝多樹下,敷吉祥草,東向而坐。時魔王遣三玉女從北來試,魔王自從南來試,菩薩以足指按地,魔兵退散,三女變老。自上苦行六年處,及此諸處,後人皆於中起塔立像,今皆在。佛成道已,七日觀樹受解脫樂處。佛於貝多樹下東西經行七日處。諸天化作七寶臺供養佛七日處。文鱗盲龍七日繞佛處。佛於尼拘律樹下方石上東向坐,梵天來請佛處。四天王奉鉢處。五百賈人授麨蜜處。度迦葉兄弟師徒千人處。此諸處亦起塔。佛得道處有三僧伽藍,皆有僧住。衆僧民戶供給饒足,無所乏少。戒律嚴峻,威儀、坐起、入衆之法,佛在世時聖衆所行,以至於今。
菩薩は進んで貝多樹の下に至り、吉祥草を敷いて、東を向いて座った。そのとき魔王は三人の玉女を遣わして北から来て試させ、自分は南から来て試した。菩薩が足の指で地を押すと、魔の兵は退いて散り、三人の女は老いた姿に変わった。先の六年の苦行をした所から、このあたりの諸所まで、後の人がみなその中に塔を建て像を立てたが、今もみな残っている。仏が道を成じられたのち、七日のあいだ樹を眺めて解脱の楽しみを受けられた所。仏が貝多樹の下を東西に七日歩き回られた所。諸天が七宝の台を化作して七日のあいだ仏に供養した所。文鱗という盲の竜が七日のあいだ仏を取り巻いた所。仏が尼拘律樹の下の四角い石の上に東を向いて座られたとき、梵天が来て願った所。四天王が鉢を献じた所。五百人の商人が麦こがしと蜜を献じた所。迦葉の兄弟とその師弟千人を導かれた所 — これらの所にも塔が建てられている。仏が道を成じられた所には僧伽藍が三つあって、どれにも僧が住んでいる。僧たちにも民家にも供給が足りていて、欠けるものがない。戒律が厳しく、威儀や、座り立つ作法、衆に加わる作法は、仏が在世のころ聖衆が行っていたままで、今に至っている。
5四大塔は絶えていない
佛泥洹已來,四大塔處相承不絶。四大塔者:佛生處,得道處,轉法輪處,般泥洹處。
仏が涅槃に入られてこのかた、四大塔の所は受け継がれて絶えていない。四大塔とは、仏が生まれた所、道を得た所、法輪を転じた所、涅槃に入った所である。
6阿育王と地獄の話 — 一握りの土の果報
阿育王昔作小兒時,當道戲。過迦葉佛行乞食,小兒歡喜,即以一掬土施佛。佛持還,泥經行地。因此果報,作鐵輪王,王閻浮提。乘鐵輪案行閻浮提,見鐵圍兩山間地獄治罪人。即問羣臣:「此是何等?」答言︰「是鬼王閻羅王治罪人。」王自念言︰「鬼王尚能作地獄治罪人,我是人主,何不作地獄治罪人耶?」即問臣等:「誰能爲我作地獄主治罪人者?」臣答言︰「唯有極惡人能作耳。」王即遣臣遍求惡人。見池水邊有一人,長壯、黑色、髮黃、目青,以脚鉤魚,口呼禽獸,禽獸來便射殺,無得脫者。得此人已,將來與王。王密勑之:「汝作四方高墻,內殖種種華果,作好浴池,莊嚴校餝,令人渴仰。牢作門戶,有人入者輒捉,種種治罪,莫使得出。設使我入,亦治罪莫放。今拜汝作地獄王。」有比丘。次第乞食入其門。獄卒見之,便欲治罪。比丘惶怖,求請須臾,聽我中食。俄頃,復有人入,獄卒內置碓臼中擣之,赤沫出。比丘見已,思惟此身無常、苦、空,如泡如沫,即得阿羅漢。既而獄卒捉內鑊湯中,比丘心顏欣悅,火滅,湯冷,中生蓮華,比丘坐上。獄卒即往白王,獄中奇怪,願王往看。王言:「我前有要,今不敢往。」獄卒言︰「此非小事,王宜疾往。」更改先要,王即隨入。比丘爲說法,王得信解,即壞地獄,悔前所作衆惡。由是信重三寶,常至貝多樹下,悔過自責,受八齋。王夫人問:「王常遊何處?」羣臣答言︰「恒在貝多樹下。」夫人伺王不在時,遣人伐其樹倒。王來見之,迷悶躃地。諸臣以水灑面,良久乃蘇。王即以塼累四邊,以百甖牛乳灌樹根。身四布地,作是誓言:「若樹不生,我終不起。」誓已,樹便即根上而生,以至於今。高減十丈。
阿育王は昔、まだ子どもであったとき、道で遊んでいて、乞食して歩く迦葉仏に出会い、喜んで土を一握り仏に献じた。仏はそれを持ち帰って、歩き回る地に塗った。この果報によって、彼は鉄輪王となり、閻浮提を治めた。鉄輪に乗って閻浮提を見回っていると、鉄囲の二つの山のあいだに、罪人を責める地獄があるのを見て、群臣に「これは何であるか」と尋ねた。「鬼王の閻羅が罪人を責める所です」と答えた。王は心の中で思った。「鬼王でさえ地獄を造って罪人を責めているのに、わたしは人の主でありながら、どうして地獄を造って罪人を責めないでいられよう。」そこで臣たちに「誰がわたしのために地獄を造り、罪人を責める役を引き受けるか」と尋ねると、「きわめて悪い人でなければできません」と答えた。王はすぐに臣を遣わして、広く悪人を探させた。池のほとりに一人の男がいるのを見つけた。背が高く逞しく、肌は黒く、髪は黄色く、目は青く、足で魚を引っかけ、口で鳥や獣を呼び、やって来ると射殺して、逃れられるものがなかった。この男を得て連れてきて王に差し出すと、王はひそかに命じた。「おまえは四方に高い垣を築き、中にさまざまな花や果実を植え、よい浴みの池を造り、厳かに飾り立てて、人が渇くように慕うようにせよ。門は堅く造り、入ってくる者があればすぐに捕らえて、種々に罪を責め、外へ出さないようにせよ。たとえわたしが入ったとしても、やはり罪を責めて放してはならぬ。今、おまえを地獄の王に任ずる。」一人の比丘が、順に乞食をしていてその門に入った。獄卒がこれを見て罪を責めようとしたので、比丘は恐れおののき、しばらく昼の食事をとらせてほしいと願った。少しして、また一人の人が入ってくると、獄卒は臼の中に入れて搗いたので、赤い泡が噴き出した。比丘はそれを見て、この身は無常であり苦であり空であって、泡のようなものだと思いつめ、すぐに阿羅漢を得た。やがて獄卒は彼を捕らえて煮えたつ釜の中に入れたが、比丘は心も顔も喜ばしく安らかで、火は消え、湯は冷め、その中に蓮華が生じて、比丘はその上に座った。獄卒はすぐに王のもとに行き、「獄の中に不思議なことがあります。王に来てご覧いただきたい」と申し上げた。王は「わたしは前に約束したことがあるので、今は行くわけにいかない」と言った。獄卒は「これは小さな事ではありません。王は急いでお越しになるべきです」と言った。そこで先の約束を改めて、王はすぐについて入った。比丘が法を説くと、王は信じ悟り、すぐに地獄を壊して、前に作ったさまざまな悪を悔いた。これより三宝を信じ重んじ、いつも貝多樹の下に行って、過ちを悔い自ら責め、八斎戒を受けた。王の夫人が「王はいつもどこへ行っておられるのか」と尋ねると、群臣は「いつも貝多樹の下におられます」と答えた。夫人は王のいない時をうかがって、人を遣わしてその木を伐り倒させた。王が来てこれを見ると、気を失って地に倒れた。臣たちが顔に水をかけて、ようやく長い時がたってから息を吹き返した。王はすぐに煉瓦を四方に積み、牛の乳を百甕、木の根に注ぎ、身を地に投げ伏せてこう誓った。「木が生き返らなければ、わたしは決して起き上がらない。」誓い終わると、木はたちまち根の上から生えてきて、今に至っている。高さは十丈に足りない。
7鶏足山の大迦葉
從此南三里行,到一山,名雞足。大迦葉今在此山中。劈山下入,入處不容人,下入極遠有旁孔,迦葉全身在此中住。孔外有迦葉本洗手土,彼方人若頭痛者,以此土塗之即差。此山中即日故有諸羅漢住,彼方諸國道人年年往供養迦葉,心濃至者,夜即有羅漢來,共言論,釋其疑已,忽然不現。此山榛木茂盛,又多師子、虎、狼,不可妄行。
ここから南へ三里行くと、鶏足という山に至る。大迦葉は今この山の中にいる。山を割って下へ入ったのだが、入った所は人が通れない。ごく深く下りて行くと脇に穴があり、迦葉の全身がこの中にとどまっている。穴の外には迦葉がもともと手を洗った土があり、その地方の人は頭が痛いときに、この土を塗ればすぐに治る。この山の中には今も羅漢たちが住んでいる。その地方の諸国の道人が年ごとに行って迦葉に供養するが、心の篤い者には、夜に羅漢が来てともに語り合い、その疑いを解いてから、ふいに見えなくなる。この山は榛の木が茂り、また獅子や虎や狼が多いので、むやみに歩くことができない。