第二十三章 — 虛無虛無
1言葉が稀であることがおのずからそうであることだ
希言自然。
言葉が稀であることが、おのずからそうであることである。
注 2
聽之不聞名曰希,下章言,道之出言淡兮其無味也,視之不足見,聽之不足聞,然則無味不足聽之言,乃是自然之至言也。
聴いても聞こえないものを希という。下の章に「道が言葉となって出れば、淡くして味がない」とあり、見ても見るに足りず、聴いても聞くに足りないといっている。とすれば、味がなく聞くに足りない言葉こそが、おのずからそうであることの至りの言葉である。
希言者,謂愛言也。愛言者,自然之道。
言葉が稀であるとは、言葉を惜しむことをいう。言葉を惜しむことが、おのずからそうである道である。
2つむじ風は朝のうちを越えない
故飄風不終朝,驟雨不終日。孰為此者?天地。天地尚不能久,而況於人乎?
だからつむじ風は朝のうちを越えず、にわか雨は一日を越えない。誰がこうするのか。天と地である。天と地でさえ長く続けられないのに、人ならなおさらである。
注 5
言暴疾美興不長也。
荒く速く起こったものは長く続かないという意味である。
飄風,疾風也。驟雨,暴雨也。言疾不能長,暴不能久也。
飄風とは激しい風であり、驟雨とは激しく降る雨である。激しいものは長くなく、荒いものは久しく続かないという意味である。
孰,誰也。誰為此飄風暴雨者乎?天地所為。
孰とは誰である。誰がこの激しい風と激しい雨をなすのか。天と地がなすのである。
不能終於朝暮也。
朝から暮れまでも続けられない。
天地至神合為飄風暴雨,尚不能使終朝至暮,何況人欲為暴卒乎。
天と地の至りの神妙さが合わさって激しい風と激しい雨をなしても、朝から暮れまで続かせることができないのに、まして人が荒く急になそうとするのはなおさらである。
3道に従う者は道と同じになる
故從事於道者,道者同於道,
だから道に努める者のうち、道に従う者は道と同じになり、
注 3
從事,謂舉動,從事於道者也。道以無形無為成濟萬物,故從事於道者,以無為為君,不言為教,緜緜若存而物得其真,與道同體,故曰同於道。
従事とは、身を起こして道に努めることをいう。道は形がなく為すこともないままに万物を成し、渡してやる。だから道に努める者は、為さないことを主君とし、言わないことを教えとして、細々と続いてあるかのようでありながら、物はその真実を得て道と体を同じにする。だから道と同じになる、といった。
從,為也。人為事當如道安靜,不當如飄風驟雨也。
従とは為すことである。人が事を為すときは、まさに道のように安らかで静かであるべきで、激しい風やにわか雨のようにしてはならない。
道者,謂好道人也。同於道者,所謂與道同也。
道に従う者とは、道を好む人をいう。道と同じになるとは、道と一つになるという意味である。
4徳に従う者は徳と同じになる
德者同於德,
徳に従う者は徳と同じになり、
注 2
得,少也,少則得,故曰得也。行得則與得同體,故曰,同於得也。
得とは少ないという意味である。少なければ得るので、得るといった。得ることを行えば、得ることと体を同じにする。だから、得ることと同じになる、といった。
德者,謂好德之人也。同於德者,所謂與德同也。
徳に従う者とは、徳を好む人をいう。徳と同じになるとは、徳と一つになるという意味である。
5失うことに従う者は失うことと同じになる
失者同於失。
失うことに従う者は失うことと同じになる。
注 2
失,累多也,累多則失,故曰失也。行失則與失同體,故曰,同於失也。
失とは、しがらみが多いことである。しがらみが多ければ失うので、失うといった。失うことを行えば、失うことと体を同じにする。だから、失うことと同じになる、といった。
失,謂任己而失人也。同於失者,所謂與失同也。
失うとは、自分勝手にして人を失うことをいう。失うことと同じになるとは、失うことと一つになるという意味である。
6道もまたその人を得て喜ぶ
同於道者,道亦樂得之;同於德者,德亦樂得之;同於失者,失亦樂得之。
道と同じになった者は、道もまたその人を得て喜び、徳と同じになった者は、徳もまたその人を得て喜び、失うことと同じになった者は、失うこともまたその人を得て喜ぶ。
注 4
言隨行其所,故同而應之。
その人が行うところに従うので、同じになって応えるという意味である。
與道同者,道亦樂得之也。
道と一つになった者は、道もまたその人を得て喜ぶ。
與德同者,德亦樂得之也。
徳と一つになった者は、徳もまたその人を得て喜ぶ。
與失同者,失亦樂失之也。
失うことと一つになった者は、失うこともまたその人を失って喜ぶ。
7信が足りなければ信じないことが生じる
信不足焉,有不信焉。
信が足りなければ、信じないことが生じる。
注 3
忠信不足於下,焉有不信焉。
忠と信が下に対して足りなければ、信じないことが生じる。
君信不足於下,下則應君以不信也。
君主が下の者に対して信を尽くさなければ、下の者は信じないことで君主に応じる。
此言物類相歸,同聲相應,同氣相求。雲從龍,風從虎,水流濕,火就燥,自然之類也。
これは、同じ類が互いに寄り合い、同じ声が互いに応じ、同じ気が互いに求め合うという意味である。雲は竜に従い、風は虎に従い、水は湿ったところへ流れ、火は乾いたところへ向かう。おのずからそうである類である。