第30章 — 倹武儉武
1武力で天下を抑えつけない
以道佐人主者,不以兵強天下。
道によって君主を助ける者は、武力で天下を抑えつけない。
注 3
以道佐人主,尚不可以兵强於天下,況人主躬於道者乎。
道によって君主を助ける者でさえ、武力で天下を抑えつけることはできない。まして君主がみずから道を行う場合はなおさらである。
謂人主能以道自輔佐也。
君主が道によってみずからを助けることができる、ということをいう。
以道自佐之主,不以兵革,順天任德,敵人自服。
道によってみずからを助ける君主は、武器と甲を用いず、天に従い徳に任せるので、敵が自ずから服する。
2その行いは返ってきやすい
其事好還。
その行いは返ってきやすい。
注 2
為始者務欲立功生事,而有道者務欲還反無為,故云,其事好還也。
事を起こす者は功を立て事を生むことに努めるが、道を持つ者は無為に立ち返ることに努める。だから、その行いは返ってきやすいといったのである。
其舉事好還自責,不怨於人也。
事を起こしても、立ち返ってみずからを責めることを好み、人を怨まない。
3軍がとどまった地には茨が生える
師之所處,荊棘生焉。大軍之後,必有凶年。
軍がとどまった地には茨が生え、大きな戦のあとには必ず不作の年が来る。
注 3
言師凶害之物也。無有所濟,必有所傷,賊害人民,殘荒田畝,故曰荊棘生焉。
軍とは凶であり害をなすものだ、ということである。救うところはなく、必ず傷つけるところがあって、民を害し、田畑を荒れさせる。だから茨が生えるといったのである。
農事廢,田不修。
農事が捨てられ、田は手入れされない。
天應之以惡氣,即害五穀,盡傷人也。
天が悪い気で応じ、すぐに五穀を害して人をことごとく傷つける。
4救い遂げればそれまでだ
善有果而已,不敢以取強。
うまく用いる者は救い遂げればそれまでで、あえて力ずくで強さを取ろうとはしない。
注 3
果猶濟也。言善用師者,趣以濟難而已矣,不以兵力取强於天下也。
果は救うというのと同じである。軍をうまく用いる者は、難を救うところへ進むだけで、兵力で天下を抑えつけはしない、ということである。
善用兵者,當果敢而已,不美之。
軍をうまく用いる者は、思い切ってやり遂げるだけで、それを美しいこととは思わない。
不以果敢取強大之名也。
思い切ってやり遂げたことで、強く大きいという名を取ろうとはしない。
5救い遂げても誇らない
果而勿矜,果而勿伐,果而勿驕。
救い遂げても誇らず、救い遂げても自慢せず、救い遂げてもおごらない。
注 4
吾不以師道為尚,不得已而用,何矜驕之有也。
わたしは軍の道を高いものとせず、やむを得ずに用いるのだから、どこに誇りやおごりがあろうか。
當果敢謙卑,勿自矜大也。
思い切ってやり遂げながらも身を低くして謙るべきで、みずから誇って大きくなってはならない。
當果敢推讓,勿自伐取其美也。
思い切ってやり遂げながらも人に譲るべきで、みずから手柄を立ててその美しさを取ってはならない。
驕,欺也。果敢勿以驕欺人。
驕とは欺くことである。思い切ってやり遂げても、おごり高ぶって人を欺かない。
6やむを得ず救い遂げるだけだ
果而不得已,果而勿強。
救い遂げるのもやむを得ずであり、救い遂げても力ずくにはしない。
注 3
言用兵雖趣功果濟難,然時故不得已,當復用者,但當以除暴亂,不遂用果以為强也。
軍を用いることは、たとえ功を成し難を救うところへ進む事であっても、時によってやむを得ずまた用いねばならないときは、乱暴と乱れを取り除くにとどまるだけで、救い遂げることを強さとはしない、ということである。
當果敢至誠,不當逼迫不得已也。
思い切ってやり遂げながらも極めて誠実であるべきで、人を追い詰めてどうにもならなくさせてはならない。
果敢勿以為強兵、堅甲以欺凌人也。
思い切ってやり遂げても、強い軍と堅い甲で人を欺き踏みつけたりしない。
7強くなれば老いる
物壯則老,是謂不道,不道早已。
物が強くなれば老いる。これを道でないという。道でないものは早く終わる。
注 4
壯,武力暴興,喻以兵强於天下者也。飄風不終朝,驟雨不終日,故暴興必不道早已也。
壯とは武力が荒々しく起こることで、武力で天下を抑えつける者をたとえたのである。つむじ風は朝のうちも続かず、にわか雨は一日も続かない。だから荒々しく起こったものは必ず道でなく、早く終わるのである。
草木壯極則枯落,人壯極則衰老也。言強者不可以久。
草や木が極まって強くなれば枯れ落ち、人が極まって強くなれば衰え老いる。強いものは長くは続けられない、ということである。
枯老者,坐不行道也。
枯れ老いるのは、座ったまま道を行わなかったからである。
不行道者早死。
道を行わない者は早く死ぬ。