夢の悲しみを詠う夢悲賦
1夢に入る
有美王孫。蟬聯茂族。邈風流之可愛兮。顔又澤腴兮如玉。出擁高盖。入處華屋。舞如意兮碎珊瑚。曾何蔕兮心曲。後房蛾眉簪翠曳縠爛盈盈兮。更侍琤然珠佩之相觸。目倦乎華靡。耳慣乎絲竹。冬而至於凉。不知其凝嚴。夏而至於溫。不知其暑溽。又安知人生有羈窮困躓憂愁哀怨之屬哉。當春陽之旣舒兮。感芳華之蕩意。召賓友於華堂兮。玉爲簪兮珠爲履。酌芳醑兮行金鍾。莫不濡首而霑醉。焚綠桂兮繼頽光。尙歡樂之未已。倐春宵之易闌兮。落月窺窓兮嫵媚。忽體倦以神疲。遂頽然兮就寐。博山熏兮噴香炷。斗帳垂兮掩綺被。赤羽奮迅登扶桑兮。尙雷鳴而酣睡。於是怳然惚然夢遊乎廣漠之墟無人之地。四顧茫茫不見阡里。深江自波。灌木叢倚。野草少色。危石如墜。日掩掩兮沈紅。煙冥冥兮疊翠。猿哀哭兮相吊。衆鳥啾啾兮不止。慘然思家欲亟還兮。迷不知路何自。念嬪御兮安在。
美しい王孫がいて、代々続く盛んな一族であった。遠く奥ゆかしい風流が愛すべく、顔つきもつややかで玉のようであった。出れば高い日傘をさしかけられ、入れば華やかな家に住んだ。如意を振るって珊瑚を砕いても、かつて心にかかったことがなかった。奥の間には美しい女たちが翠の簪を挿し、薄絹を引いて目にあまるほど満ちあふれ、さらに玉の佩が触れ合う澄んだ音をさせて仕えた。目は華やかさに倦み、耳は糸と竹の音に慣れた。冬に涼しさに行き当たっても、その厳しい寒さを知らず、夏に温かさに行き当たっても、その蒸し暑さを知らなかった。まして人が生きるうちに、縛られ、窮まり、つまずき、憂え、悲しみ、怨むことがあるのを、どうして知ろうか。春の日差しがすでに広がると、花の色に心が揺れて、客と友を華堂に招いた。玉を簪とし、珠を履とした。香しい酒を注いで金の杯をめぐらすと、頭を濡らして酔いしれない者はなかった。緑の桂を焚いて傾く光を継ぎ、なお楽しみが尽きなかった。ふと春の夜がたやすく更けて、落ちる月が窓をのぞいてあでやかである。たちまち体がだるく心が疲れて、ついに崩れるように眠りについた。博山の香炉が香を噴き、斗形の帳が垂れて綾の衾を覆った。赤い羽の日が勢いよく扶桑に昇るまで、なお雷のようないびきをかいて熟睡した。そこでぼんやりとおぼろげに、夢のうちに広く果てしない廃墟、人のいない地に遊んだ。四方を見回しても茫々として道が見えない。深い川はひとりでに波立ち、雑木は茂りあって寄りかかる。野の草は色が薄く、危うい岩は落ちそうである。日はおぼろに赤く沈み、煙は暗く緑を重ねる。猿は哀しく哭いてたがいに弔い、多くの鳥はちいちいと鳴いてやまない。痛ましく家を思って急いで帰ろうとするが、迷って道がどこからか分からない。妻や侍女たちはどこにいるかと思いながら
2墓を見て覚める
掩翠衫而拭淚。登崇阿以延佇兮。鬱千峯之邐迤。披蒙茸兮尋崎嶇。慮髬髵之攸庇。𢥠奔還以陟隴兮。墳纍纍兮錯峙。上有蹲狐與伏兔兮。紛侶集兮族戱。拂頽碑以俯窺兮。伊昔綺紈之公子。歌堂舞館屬何人兮。爲此一丘兮山之趾。富貴兮如浮。瓊華兮易悴。吊斯人以彷徨兮。益凄切以酸鼻。足累繭兮無攸歸。飢與渴兮交至。俄欠伸以忽寤兮。喜窓櫳之猶是。顧尙臥於一床。夫何爲此遐遊。以須臾之一夢。悟榮辱之相酬。王孫兮可以銘肌。永不忘貧賤羇離者之憂。
翠の衫を払って涙を拭いた。高い丘に登ってたたずむと、千の峰が鬱蒼と連なっている。茂った草をかき分けて険しい道をたどり、たてがみを立てた獣が隠れていないかと気を配った。驚いて走り戻り、丘に登ると、墓が幾重にも入り違って盛り上がっていた。その上にはうずくまる狐と伏せる兎が、入り乱れて連れ立ち、群れて戯れていた。崩れた碑を払って見下ろすと、昔の綾絹をまとった公子であった。歌った堂、舞った館は誰のものになったのか。こうして山裾の一つの丘になってしまった。富貴は浮いたもののようで、美しい花は早く衰える。この人を弔ってさまよえば、いよいよもの悲しく鼻の奥が痛む。足に繭ができるほど歩いても帰る所がなく、飢えと渇きがともに迫る。やがて欠伸をするうちにふと目覚めると、窓の格子がそのままであることが嬉しかった。見回せばなお一つの寝床に臥しているのに、どうしてこんな遠い旅をしたのだろう。わずかの間の一つの夢で、栄えと恥とがたがいに報い合うことを悟った。王孫よ、肌に刻むがよい。貧しく賤しく、旅に離れる者の憂えを永く忘れるな。