いにしえの文 › 東国李相国集(東国の李相国の文集) › 前集 巻14
花を妬む風妬花風
東国李相国集(東国の李相国の文集) 前集 巻14 高麗の李奎報が生涯に作った文章を、子の李涵が1241年に編んで刻み、孫の李益培が1251年に改め補った文集。詩と賦、王に奉った表と箋、寺と塔に付けた記、碑銘と墓誌銘、手紙と序文、そしてモンゴルが攻め入った時に行き交った国書までが収められている。高句麗の始祖を歌った「東明王篇」が前集の巻3にあり、酒と琴と詩を友として自ら白雲居士と名のった人の一日一日が後集に残っている。書は、彼が目を病んで筆を置く最後の詩と、彼が死んだ後に他の人が作って付けた誄書・墓誌銘で閉じる。
花時多顚風。人噵是妬花。天工放紅紫。如剪綺與羅。旣自費功力。愛惜固應多。豈反妬其𧰟。而遣顚風加。風若矯天令。天豈不罪耶。此理必不爾。我噵人言訛。鼓舞風所職。被物無私阿。惜花若停簸。其奈生長何。花開雖可賞。花落亦何嗟。開落揔自然。有實必代華。莫問天機密。把杯且高歌。
花の咲くころには、狂った風が多く 人は、これは花を妬むのだと言う 天の匠が紅と紫を放って 綾と薄絹を剪ったかのようだ すでに自ら手間をかけたのだから 惜しむ心も、きっと多いはずだ どうして逆に、その美しさを妬んで 狂った風を吹きつけさせよう 風がもし天の命を偽ったのなら 天がどうして罰しないことがあろう この道理は、決してそうではない 私は、人の言葉が誤りだと言う 吹き動かすのは風の職分で 万物に及んで、私情のえこひいきがない 花を惜しんで吹くのをやめたなら 万物が育つのを、どうしよう 花が咲けば愛でるに足るが 花が散っても、何を嘆こう 咲くも散るも、すべて自然であり 実がなれば、必ず花に代わる 天の仕組みの秘密など問わずに 杯を取って、声高く歌おう