詩の魔を追い払う文驅詩魔文
夫累土而崇曰丘陵。瀦水而濬曰溝井。其或木也石也屋宇也墻壁也。是皆天地間無情之物。鬼或憑焉。騁怪見妖。則人莫不疾而忌之。且呪且驅。甚者夷丘陵塞溝井。斬木椎石。壞屋滅墻而後已。人猶是焉。厥初質樸無文。渟厚正直。及溺之於詩。妖其說怪其辭。舞物眩人。可駭也。此非他故。職魔之由。吾以是敢數其罪而驅之曰。人始之生。鴻荒樸略。不賁不華。猶花未萼。錮聰塗明。猶竅未鑿。孰閽其門。以挺厥鑰。魔爾來闖。酋然此託。耀世眩人。或髹或𦣒。舞幻騁奇。勃屑翕霍。或媚而㜨。筋柔骨弱。或震而聲。風豗浪𢶉。世不爾壯。胡踊且躍。人不汝功。胡務刻削。是汝之罪一也。地尙乎靜。天難可名。昒乎造化。䁳若神明。沌沌而漠。渾渾而冥。機開閟邃。且鐍且扃。汝不是思。偵深諜靈。發洩幾微。搪突不停。出脅兮月病。穿心兮天驚。神爲之不悆。天爲之不平。以汝之故。薄人之生。是汝之罪二也。雲霞之英。月露之粹。蟲魚之奇。鳥獸之異。與夫芽抽萼敷。草木花卉。千態萬貌。繁天麗地。汝取之無愧。十不一棄。一矚一吟。雜然坌至。攢羅戢孨。無有窮已。汝之不廉。天地所忌。是汝之罪三也。遇敵卽攻。胡礮胡壘。有喜於人。不衮而賁。有慍於人。不刃而刺。爾柄何鉞。惟戰伐是恣。爾握何權。惟賞罰是肆。爾非肉食。謀及國事。爾非侏儒。嘲弄萬類。施施而夸。挺挺自異。孰不猜爾。孰不憎爾。是汝之罪四也。汝著於人。如病如疫。體垢頭蓬。鬚童形腊。苦人之聲。矉人之額。耗人之精神。剝人之胸膈。惟患之媒。惟和之賊。是汝之罪五也。負此五罪。胡憑人爲。憑於陳思。凌兄以馳。豆泣釜中。果困于箕。憑於李白。簸作顚狂。捉月而去。江水茫茫。憑於杜甫。狼狽行藏。羈離幽抑。客死耒陽。憑於李賀。誕幻怪奇。才不偶世。夭死其宜。憑於夢得。譏詆權近。偃蹇落拓。卒躓不振。憑於子厚。鼓動禍機。謫柳不返。誰其爲悲。嗟乎爾魔。爾形何乎。歷誤幾人。又鍾於吾。自汝之來。萬狀崎嶇。悗然如忘。戇然如愚。如瘖如聵。形熱跡拘。不知飽渴之逼體。不覺寒暑之侵膚。婢怠莫詰。奴頑罔圖。園翳不薙。屋痡不扶。窮鬼之來。亦汝之呼。傲貴凌富。放與慢俱。言高不遜。面強不婾。着色易惑。當酒益麤。是實汝使。豈予心歟。狺狺吠怪。寔繁有徒。我故疾汝。且呪且驅。汝不速遁。搜汝以誅。是夕疲臥而枕上騷。窣然有聲。若色袖文裳而煌煌者卽而告余曰。甚矣。子之訧我也斥我也。何疾我之如斯。我雖魔之微。亦上帝所知。始汝之生。帝遣我以隨。汝孩而赤。亦潛宅而不離。汝童而丱。竊竊以窺。汝壯而幘。騫騫以追。雄子以氣。飾子以辭。場屋較藝。連年中之。欻天動地。名聲四飛。列侯貴戚。聳望風姿。是則我之輔汝不薄。天之豐汝不貲。惟口之出。惟身之持。惟色之適。惟酒之歸。是各有使。非吾所尸。子胡不愼。以狂以癡。實子之咎。非予之疵。居士於是。是今非昨。局縮忸怩。磬折以拜。迎之爲師。
およそ土を積んで高くしたものを丘と言い、水を溜めて掘ったものを溝や井戸と言う。木であれ石であれ家屋であれ塀であれ、みな天地の間の情の無い物である。ところが鬼がそこに憑いて怪しいことをし、妖しいものを見せると、人はそれを憎み忌んで、呪い、追い払わない者はない。ひどい時は丘を崩し、溝や井戸を埋め、木を斬り石を砕き、家を壊し塀を取り除いてからやめる。人もこれと同じだ。初めは質朴で飾りが無く、篤くまっすぐだが、詩に溺れると言葉が妖しくなり文が怪しくなって、物をあしらい人を惑わすので、驚くべきことだ。これは他の理由ではなく、魔のせいだ。わたしはそれゆえ敢えてその罪を数えて追い払い、こう言う。
人が初めて生まれる時は、はるかに素朴で、飾りも華やかさも無く、花がまだ萼を出していないようであり、耳が塞がり目が覆われて、穴がまだ開いていないようだ。誰がその門を守っていながら、その錠を抜いたのか。魔よ、お前が来て覗き、頭目のようにここに憑いた。世に輝かせ人を惑わし、赤くもし黒くもし、幻術を舞い奇を振るって、急に起こり忽ち消える。あるときは媚びて艶めき、筋は柔らかく骨は弱く、あるときは雷のように声を立てて、風が打ち合い波が砕けるようだ。世はお前を立派だと思わないのに、どうして踊り跳ねるのか。人はお前の功を認めないのに、どうして刻み削ることに務めるのか。これがお前の第一の罪だ。
地は静かさを尚び、天は名づけ難い。はるかに万物を造り出し、神明のようにおぼろげだ。混じり合って果てしなく、ぼんやりとして暗い。仕掛けが奥深く閉ざされ、錠も掛け閂も掛けてある。お前はこれを思わず、深いものを覗き霊しいものを探って、兆しを漏らし出し、突き当たることをやめない。出せば月が病み、穿てば天が驚く。神はそのために喜ばず、天はそのために平らかでない。お前のせいで人の生が薄くなる。これがお前の第二の罪だ。
雲と霞の精華、月と露の精粋、虫と魚の奇しさ、鳥と獣の珍しさ、そして芽が伸び萼が開く草木や花々の千の姿と万の貌が、天に繁り地に麗しい。お前はこれを恥じることなく取って、十のうち一つも捨てない。ひとたび見ればひとたび吟じ、雑然と押し寄せ、集まり積み重なって、尽きることが無い。お前が廉くないのは、天と地の忌むところだ。これがお前の第三の罪だ。
敵に遇えばすぐ攻めるのは、どうしてそれほど石弩のようで砦のようなのか。人を喜ばせる時は袞の衣でなくても輝かせ、人に怒る時は刃でなくても刺す。お前が執るのはどんな鉞で、ただ戦い伐つことを思うままにし、お前が握るのはどんな権で、ただ賞し罰することを勝手にするのか。お前は肉を食む官ではないのに国の事を謀り、お前は侏儒の芸人ではないのに万の類を嘲弄する。得意げに誇り、つんと自ら異なるとするので、誰がお前を妬まず、誰がお前を憎まないだろうか。これがお前の第四の罪だ。
お前が人に取り憑くと、病のようで疫のようだ。体に垢が付き頭が乱れ、鬚が抜け身が痩せる。人の声を苦しくし人の額を顰めさせ、人の精神をすり減らし人の胸をそぎ取る。ただ患いの媒であり、ただ和らぎの賊だ。これがお前の第五の罪だ。
この五つの罪を負っていながら、どうして人に憑くのか。陳思王に憑いて兄を凌いで走らせたので、豆が釜の中で泣き、ついに豆殻に苦しめられた。李白に憑いてあおり立てて狂わせたので、月を捉えに行って川の水が果てしなかった。杜甫に憑いて進退に狼狽させ、流離い抑えられて耒陽で客死した。李賀に憑いて荒唐で奇怪にさせたので、才が世と合わず、早く死んだのも当然だった。夢得に憑いて権勢ある人を謗り詆らせたので、強ばり落魄して、ついに躓いて振るわなかった。子厚に憑いて禍の仕掛けを揺り動かしたので、柳州に流されて還らなかった。誰が彼を悲しむだろうか。
ああ、お前、魔よ。お前の姿はどんなもので、幾人を誤らせ、またわたしに取り憑いたのか。お前が来てから、ありさまが万事険しく、ぼんやりと忘れたようで、呆けて愚かなようで、口がきけないようで耳が聞こえないようで、体は熱く足取りは縛られた。飢えと渇きが体に迫るのも分からず、寒さと暑さが肌に染みるのも気づかない。女の召使いが怠けても咎められず、男の召使いが従わなくてもどうにもできず、庭が生い茂っても刈らず、家が傾いても支えない。貧しさの鬼が来るのも、またお前が呼んだのだ。貴い人に傲り、富む人を侮り、勝手さと怠りが一緒に来る。言葉は高くて謙らず、顔は強ばって媚びず、色に向かえば惑いやすく、酒に向かえばいっそう荒くなる。これは実にお前がさせたことで、どうしてわたしの心だろうか。唸りながら怪しいと吠える者が、本当に多い。わたしはそれゆえお前を憎み、呪いもし追い払いもするから、お前が早く逃げなければ、お前を捜して斬ろう。
この日の夕べ、疲れて臥していると枕元が騒がしく、がさりと音がした。色のある袖と模様のある裳で輝くものが近づいて来て、わたしに告げた。「ひどいことだ、あなたがわたしを咎め、わたしを退けるとは。どうしてわたしをこれほど憎むのか。わたしは微かな魔にすぎないが、また上帝の知るところだ。あなたが初めて生まれた時、帝がわたしを遣わして従わせられた。あなたが赤子であった時も、密かに宿って離れず、あなたが童で髪を結んでいた時も、そっと窺い、あなたが壮んになって巾を着けた時は、ひらひらと追った。あなたを気で雄々しくし、あなたを言葉で飾り、試験の場で技を競わせて年ごとに合格させた。たちまち天を動かし地を揺るがして名声が四方に飛び、列侯や貴戚があなたの風采を仰ぎ望んだ。これはつまり、わたしがあなたを輔けたことが薄くなく、天があなたを豊かにしたことが計り知れないということだ。ただ口から出ることと、身に持つことと、色に向かうことと、酒に帰することは、それぞれ使うものがあって、わたしの司るところではない。あなたはどうして慎まずに、狂い痴けるのか。実にあなたの咎で、わたしの疵ではない。」
居士はそこで、今が是で昨が非だと思い、縮こまって恥じ入り、磬のように身を折って拝し、これを迎えて師とした。
夾注 1
效退之送窮文
韓退之の「送窮文」に倣った。