前と同じく皇帝に差し上げる手紙同前狀
臣某。謹頓首再拜。奉書于皇帝紫微闕下。臣以一二所望事件。已具表言之。楢有鬱結於心。未盡陳露者。於表內不得備載。申以狀陳布之。辭義繁宂。恐煩聰鑑。誠恐誠恐。伏惟聖慈一賜覽焉。弊邑。本海外之小邦也。自歷世已來。必行事大之禮。然後能保有其國家。故頃嘗臣事于大金。及金國鼎逸。然後朝貢之禮始廢矣。越丙子歲。契丹大擧兵。闌入我境。橫行肆暴。至己卯。我大國遣帥河稱,扎臘。領兵來救。一掃其類。小國以蒙賜不貲。講投拜之禮。遂向天盟告。以萬世和好爲約。因請歲進貢賦所便。元帥曰。塗路甚梗。你國必難於來往。每年我國遣使優不過十人。其來也可齎持以去。至則道必取萬奴之地境。你以此爲驗。其後優使之來。一如所約。每我國輒付以國信禮物。輸進闕下。獨於甲申年。使臣著古與。不以萬奴之境。而從婆速路來焉。然依舊接遇甚謹。又付以國信前去。其後使介之來者。稍至間闊。小國竊怪其故。久而聞之。則于加下遮出中路。殺了上件使臣所致也。如此已後。于加下僞作上國服樣。入我北鄙。殘敗三城。萬奴亦攻破東鄙二城。其服色亦如之。自是踵來侵伐不絶。又萬奴與上國使優之向我國者。紿言高麗皆你國。愼勿前去。使優不聽。且欲知眞僞。遂便行李。則先遣其麾下人。僞爲我國服着及弓箭。遂伏兵於兩國山谷之間。潛候行李。出射趁𪵃。因令伴行人報云。高麗所作如此。背逆明矣。請停前去。固令還焉。然適有自萬奴麾下逃來王好非者。細說其事。故我國得知之。無幾何。聞大兵入境。小國以通好之故。殊不意上國之兵。而久乃知之。然莫識所以行兵之故。帥府沙里打大官人移文言。你國殺我使臣著古與及射東路使臣。何也。以此行兵聞罪耳。我國以曾知之縷細故。具以實對之。更行投拜之禮。大軍亦詳兩人所詐。豁然大寤。遂許班師矣。方大軍之還國。尋遣兩𤳖行李。奉進國信禮物於皇帝闕下。而君臣因相賀曰。比來以道路不通。阻修朝貢之禮。大乖從前和好之本意。常以此爲慮。今旣遣使達誠。則是固可賀。而又大國常以于加下萬奴之罪歸于我。我國無以自明。懼代他人受誣。而賴大軍親臨根究。使上國之疑渙然如氷釋。則吾屬知免矣。始可以寧心定慮。一專於奉事上朝之日也。未幾。忽有宋立章者從池義深行李。詣在上國。逃來言上國將擧大兵來討。已有約束。百姓聞之。驚駭顚蹶。其逃閃者多矣。俄又聞北界一二城逆民等。妄諭其城達花赤。殺戮平民。又殺臣所遣內臣。此人是候上國使優。値行李則迎到京師者也。而乃殺之。因以作亂。聲言大國兵馬來也。又聞上國使優到義州。令準備大船一千艘。待涉軍馬。於是擧上下無不震悸。其逃之者又過半矣。逋戶殘廬。歷歷相望。鞠爲茂草。見之不能無悵然矣。君臣竊自謀曰。若遺民盡散。則邦本空矣。邦本空則其將與誰歲辦貢賦。以事上朝耶。不若趁此時收合殘民餘衆。入處山海之間。粗以不腆土物。奉事上國。不失藩臣之名。上計也。蓋以心之所屬。不關於地。苟以一心事之。想上國何必以此爲咎耶。於是遂定計焉。然則我國之遷徙于此。不過此意耳。寧有他心哉。天地神明。實鑑之矣。不意大國以浮說所傳。遣之以大兵。臨莅弊境。凡所經由。無老弱婦女。皆殺之無赦。故擧一國喪精失氣。顚到怖懼。莫有聊生之意。且君是天也父母也。方殷憂大戚如此。而不於天與父母。而又於何處訴之耶。伏望皇帝陛下。推天地父母之慈。諒小邦靡他之意。勅令大軍廻轅返斾。永護小國。則臣更努力竭誠。歲輸土物。用表丹悃。益祝皇帝千萬歲壽。是臣之志也。伏惟陛下少加憐焉。無任望大延佇希恩慕德之至。謹奉狀陳乞以聞。謹狀。
臣某は謹んで頭を下げて二度拝み、皇帝の紫微の宮殿の下に文を差し上げます。
臣が一つ二つ願う事は、もう表に備えて申し上げました。それでも心に結ばれて述べ尽くせなかったものがあるのに、表のなかには備えて載せられませんでした。重ねて手紙で申し上げて述べます。言葉と意が煩わしくて、明らかなお見通しを乱すのではないかとまことに畏れます。謹んで、聖なるお慈しみで一度ご覧ください。
わが郡はもとより海の外の小さな国です。幾代も経てくるあいだ、必ず大きな国に仕える礼を行ってからはじめて国を守れました。だから先日は大金を臣として仕え、金の国が傾き散ってから、朝貢する礼がようやくやみました。
丙子の年に契丹が軍を大きく起こしてわが境にみだりに入り、ほしいままに歩きまわって荒くふるまいました。己卯の年になって、大きな国が将の河称と扎臘を遣わして軍を率いて来て救ってくださり、その輩をひとたびに払ってくださいました。小さな国は測り知れない恩を受けて帰順する礼を整え、ついに天に向かって誓って、万代まで良く過ごすことを約しました。そうしてから、毎年貢ぎを献じるのに都合のよい道を願いました。
元帥が言いました。「道がたいへん塞がって、お前の国が行き来しがたいだろう。毎年わが国が送る使者は十人に過ぎないから、彼らが来たら持って行かせよ。来るときには道が必ず万奴の地を通るから、お前たちはこれを証しとせよ。」
その後、使者が来ることが約束どおりでした。わが国はそのたびに国の贈り物を託して宮殿の下に献じました。ただ甲申の年に使者の著古与だけが、万奴の地を通らずに婆速路に沿って来ました。しかし以前どおりにたいへん慎んでもてなし、また国の贈り物を託して送りました。
その後は使者が来ることが次第にまれになって、小さな国はひそかにそのわけを不思議に思いました。久しくなって聞くと、于加下が道の途中を塞いでその使者を殺したからでした。その後、于加下が大きな国の装いを偽って、わが北の辺りに入って三つの城を壊し崩しました。万奴も東の辺りの二つの城を討って破りましたが、その装いも同じでした。これから続いて来て侵すことをやめませんでした。
また万奴は、わが国に来る大きな国の使者に「高麗はお前の国に背いたのだから、どうか行くな」と偽って言いました。使者は聞かず、またまことか偽りかを知ろうとしてすぐ道に出ました。すると万奴が先に自分の配下を遣わしてわが国の装いと弓と矢を偽って装わせ、ついに二つの国のあいだの山あいに兵を隠して置いて、使者をひそかに窺ってから出て射て追わせました。そうして従って行った人に「高麗がしたことがこうなのだから、背いたことは明らかだ。これ以上行かないよう願う」と知らせさせて、強いて帰らせました。ところが、ちょうど万奴の配下から逃げて来た王好非という者が、その事を詳しく言ったので、わが国が知ることになりました。
間もなく、大きな軍が国境に入ったと聞きました。小さな国は良く過ごしてきた間柄ですから、大きな国の軍だとはあまり思わず、久しくなってようやく知りました。しかし軍を出されたわけは分かりませんでした。元帥府の撒里打大官人が文を送って「お前の国がわが使者の著古与を殺し、東の道の使者を射たのは、どうした事か。このために軍を出して罪を問うのだ」と言いました。わが国はかつてその詳しい内実を知っていたので、事実どおりに備えて答え、あらためて帰順する礼を行いました。大きな軍も二人が偽った事を詳しく知って、明るく大いに悟り、ついに軍を返すことを許されました。
大きな軍が帰るとき、すぐ二度使者を送って、国の贈り物を皇帝の宮殿の下に奉って献じました。君と臣が互いに祝って言いました。「近ごろ道が塞がって朝貢する礼を修められず、以前に良く過ごしていた本意に大きく背いたので、常にこれを憂えていた。いま使者を送って誠を通じたのだから、これはまことに祝うに足る。また大きな国が常に于加下と万奴の罪をわれわれに帰して、わが国がみずから明かす道がなく、人に代わって無実を受けることを恐れていた。ところが大きな軍がみずから来て探り明らかにしてくれた徳で、大きな国の疑いが氷が解けるように明るく解けたのだから、われわれはいま免れたと分かる。はじめて心を放し思いを定めて、皇帝の朝廷を奉じ仕えることだけに専らにできる日だ。」
間もなく、ふいに宋立章という者が、池義深の使者の旅に従って大きな国に行っていたのに逃げて来て、大きな国がやがて大きな軍を起こして討ちに来ることでもう約束ができていると言いました。民が聞いて驚いて倒れ、逃げた者が多かったのです。すぐまた聞くと、北の境の一つ二つの城の背いた民たちが、その城のダルガチをみだりにそそのかして民を殺したといいます。また臣が遣わした内臣を殺しました。この者は大きな国の使者を待って、旅に出会えば迎えて都にお連れする者なのに殺して、それによって乱を起こし、大きな国の軍が来ると騒ぎました。また大きな国の使者が義州に至って、大きな船千隻を備えて軍が渡るのを待たせたと聞きました。そこで上も下もみな震え畏れて、逃げた者がまた半分を越えました。逃げた家と壊れた小屋がはっきりと互いに眺め合い、雑草が茂って、見て悲しくならずにはいられませんでした。
君と臣がひそかにみずから図りました。「残った民がみな散れば国の土台が空になる。国の土台が空になれば、これから誰とともに毎年の貢ぎを整えて皇帝の朝廷に仕えようか。この時に乗じて残った民を収め、山と海のあいだに入って住みながら、拙い土地の産物でも大きな国を奉じ仕えて、垣の臣という名を失わないことに越したことはないから、これが上の計だ。」おおむね心の寄る所は地と関わりがないのだから、まことに一つの心で仕えるなら、大きな国がどうしてこれを咎とするだろうかと思いました。そこでついに計を定めました。
ですから、わが国がここへ移ったのはこの意に過ぎませんから、どうして他意がありましょうか。天と地の神霊がまことに見下ろされるでしょう。
思いがけず、大きな国が浮いた噂に従って大きな軍を送ってわが境に至りました。通る所ごとに、老いた者と弱い者と女を分けずに、みな殺して容赦がありませんでした。だから国中が魂を失い気が抜けて倒れ畏れて、生きていく気がありません。また君は天であり父母です。まさに深い憂いと大きな悲しみがこのようであるのに、天と父母でなければ、また、どこに訴えましょうか。
伏して願います、皇帝陛下は天と地と父母の慈しみを推されて、小さな国に他意がないことを量ってください。大きな軍に命じて車を返し旗を戻させ、長く小さな国を守ってください。そうしてくださるなら、臣はあらためて努めて誠を尽くし、毎年土地の産物を献じて赤い心を表し、皇帝が千万年生きられることをいよいよ祈ります。これが臣の心です。謹んで、陛下が少しでも哀れんでください。
大いに願って待ち、恵みを望んで徳を慕う心が至ってかぎりありません。謹んで手紙を奉じて申し上げ願います。謹んで申し上げます。
夾注 1
高麗皆你国 — 底本には叛の字がない。他本の高麗皆叛你国に従って「背いた」と訳した。― 訳者