任濡相公が樞密副使・吏部尚書を辞退する表任相公濡。讓樞密副使吏部尙書表。
臣某言。云云。雨露無私。本不嗇汪洋之澤。甁甖有扃。恐自貽傾覆之虞。敢瀝危悰。期還成命。伏念臣。早緣科第。誤玷官班。學不熟精。無竇攸對鼮之辨。性惟質直。慕石立書馬之謙。幸沐厚恩。驟登重位。謬掌喉脣之任。略無輪翮之能。十年批鳳於唐麻。榮踰涯分。一日放鶯於王谷。望極生平。皆非由錐穎之才。第自託葭莩之幸。敢圖異奬。又集孱驅。俾綴樞司之峻資。復兼選部之重柄。若又冒處。必將疾顚。昔者庾亮受中書。乃拜章而牢讓。羊祜遷開府。亦抗表而固辭。此皆外戚之羽儀。群臣之領袖。非不任股肱之寄。猶恐生肺腑之嫌。況臣無德可稱。無勞可記。直以恩親而暴進。遽蒙官職之過崇。雖天意之至公。懼物議之喧沸。無補於國。有疑於人。伏望聖上陛下。貞日月之明。廓乾坤之度。追寢殊尤之寵。更推英偉之人。無令具臣。獨集群謗。云云。
臣某が申し上げます。云々。雨と露には私がなく、もともと広く大きな恵みを惜しみませんが、瓶や甕には入れられる限りがありますので、自ら覆る憂いをもたらすのではないかと恐れます。あえて恐れる思いを注ぎ出して、すでに下されたご命令をお収めくださるよう願います。
伏して思いますに、臣は早くに科挙によって、誤って官の列を汚しました。学びは熟して精しくなく、竇攸が鼮という鼠の名を言い当てたような弁えがなく、性はただ質朴で直なばかりで、石建が馬の字を書くのに慎んだ謙しみを慕っております。
幸いに厚い恵みを被って、急に重い位に昇りました。誤って喉と唇のような務めを預かりましたが、車輪や羽のような働きは少しもありません。十年のあいだ君の詔を練る席にありましたので栄えは分を越え、ひと朝に谷から鶯が飛び立つように抜かれましたので、望みは一生に尽きました。すべて錐の先のような才によったのではなく、ただ葦の薄皮のように薄い縁戚の幸いに託したものです。
人並み外れた励ましが、また弱い身に集まろうと、どうして思いましたでしょうか。枢密院の高い位に繋がせ、さらに銓衡を司る部署の重い権を兼ねさせてくださいました。もしまた冒して留まるなら、必ず早く倒れるでしょう。
昔、庾亮は中書の官を授けられると文を上げて固く辞退し、羊祜は開府に移されると、やはり表を上げて固く辞退しました。この人たちは皆、外戚の手本であり、群臣の長でした。手足のような頼みを預かれないわけではありませんでしたが、それでも近い身内という嫌疑が生じることを恐れたのです。まして臣は称えるべき徳もなく、記すべき功労もありません。ただ恵みと親しみによって急に進み、たちまち過分に高い官を被りましたので、天のお心は至って公であっても、人々の言葉が騒がしく沸き立つことを恐れます。国に助けはなく、人々には疑いがあります。
伏してお願いいたします。聖上陛下は日月のような明らかさをまっすぐにし、天地のような度量を広げられて、格別のご寵愛をお収めになり、改めて優れた人をお引き立てください。員数を満たすだけの臣に、ひとりで多くのそしりを集めさせないでください。云々。
夾注 2
中謝。
ここに中謝、すなわち謝意を述べる言葉が入る。
石立 — 底本は石立だが、石建の誤りと見る。馬の字を書くのに慎んだという昔の話の主は石建である。 ― 訳者