亡き宝鏡寺住持大禅師に円真国師の諡号を贈る官誥故寶鏡寺住持大禪師贈諡圓眞國師敎書官誥 官誥
門下。朕觀披禪服迹禪門。口談佛祖之源。亹亹然可聽。胸括人天之際。浩浩乎無窮。斯若僧中之傑也。然似是而非。捨眞卽妄。以至將佛覓佛。騎驢見驢者。何哉。蓋心本自淨。客塵斯覆。照之惟難。悟之不易故耳。其能照然獨照。迢爾直悟者。求之當世。唯我禪公一人而已。盍冊鴻名。以孚輿論。故寶鏡寺住持大禪師承迥。慧解疏朗。法器泓深。早業宗乘。欻飛楊於選席。忽懷高想。猒羈絆於名韁。猶恐入山之不深。追嗟避世之不早。拂衣長往。枕石自誤。身唯骨而兀坐於巖巓。名無翼而飛落於人世。越從先代。累降徵書。業已退藏。故雖勿欲反心。義不獨善。故亦難於強項。火煨黃獨。初不領於銀鉤。柸駕蒼流。俄忽廻於金錫。法王鼎至。僧寶益尊。王公皆跪膝而趨風。士女願布髮而籍足。或赴法筵於禁殿。或受檀施於侯門。縻之以僧職而不力辭。處之以名藍而勿固拒。一彼一此。適往適來。是達人應萬物之大權。豈曲士泥一隅之細節。所居成市。請益如林。伏卵傳翼者。咸得翺翔於釋林。霑乳分甘者。莫不飽飫於道味。人不卜景星而見公爲之瑞。朕不保長城而倚公爲之防。隣敵之不復窺窬。國步之幾至帖泰。未必不由於法力也。其或開話則病牛奮迅。說法則旱雨霶𩃱。朕耳尙聞。人言豈飾。頃者託以遊方而騰裝南國。曾不爲朕而暖席上都。脫袴期來。登床坐逝。巖石剨裂。草木焦枯。嗟法棟之云摧。在禪林而安仰。來也如雲。出而澤周天下。去忽若月。側而光掩人間。朕早奉緖餘。久勤翹仰。何以酬於梵德。但追贈於懿稱。是豈私恩。實惟公議。可特授云云。嗚戲。以公之得法眼藏。以師之傳佛心燈。決成萬德之身。已躡一眞之境。幸推餘蔭。永祜丕基。云云。
門下に至る。
朕が見るに、禅の衣を纏い禅門に跡を寄せた者たちが、口に仏と祖の源を語れば滔々として聴くに足り、胸に人と天との際を包んだといえば浩々として窮まりがない。これほどであれば僧のうちの傑と言えよう。しかし、似ているようで非であり、真を捨てて妄に就き、ついには仏を持ったまま仏を探し、驢馬に乗りながら驢馬を探すに至るのは、どうしたことか。おおむね心はもともとみずから浄らかであるのに、客のような塵がこれを覆うので、照らすことが難しく、悟ることが易しくないからである。よく明らかにひとり照らし、遥かにまっすぐ悟った者を、この時代に求めれば、ただわが禅公ひとりだけである。どうして大いなる名を冊して、衆議に信を与えないであろうか。
故宝鏡寺住持大禅師の承逈は、智慧の解きほぐしが晴れやかに明るく、法の器が深く広かった。早くに宗門の乗を学び、僧科の席からたちまち飛び上がった。ところが忽ちに高い思いを抱いて、名の手綱に縛られることを厭い、なお山に深く入れないことを恐れ、世を早く避けなかったことを後から嘆いた。衣を払って遠くへ行き、石を枕にしてみずから楽しんだので、身は骨ばかりとなって岩の頂に兀然と座ったが、名は翼がなくとも飛んで人の世に落ちた。
先代から幾度も召す書が下された。すでに退き隠れていたので、心を翻そうとはしなかったが、義として独り善くしているわけにはいかないので、強いて首を立てて拒むことも難しかった。灰火に里芋を埋めて焼いていたところであったから、初めは王の書を受けなかったが、木の杯に乗って青い流れを渡るように、やがて錫杖を回らせた。
法王が盛んに至って、僧の宝はいよいよ尊くなった。王公はみな膝をついてその風に趨り、男女は髪を敷き広げて足を踏ませたいと願った。あるときは禁中の法会に赴き、あるときは貴い家の施しを受け、僧職に繋がれても強いて辞さず、名のある寺に置かれても固く拒まなかった。あちらへも行き、こちらへも来て、行くもよく、来るもよかった。これは達した人が万物に応ずる大いなる方便である。どうして狭い士が一隅の細かな節に泥むのと同じであろうか。
留まる所ごとに市をなし、さらに教えを請う者が林のようであった。卵を抱いて翼を得た者たちは、みな釈の林で翔ぶことができるようになり、乳を注がれて甘さを分けられた者たちは、道の味に飽き足らぬ者がなかった。人々は景星を占わずとも、公を見てこれを瑞とし、朕は長城を頼らずとも、公に倚ってこれを防ぎとした。隣の敵が再び隙を覗えず、国の歩みがほとんど安らかになったのは、法の力によらなかったとは言えない。あるとき話の口を開けば病んだ牛が奮い立つようであり、法を説けば旱の日に雨が降り注ぐようであった。朕の耳になお聞こえているのだから、人々の言葉がどうして飾りであろうか。
先には諸方を巡ることに託して行装を整え、南の地へ行き、かつて朕のために都で席を暖めたことがなかった。袴を脱ぐように身軽く帰ることを約していたのに、床に登って座ったまま逝った。岩はぱっと裂け、草と木は焦げて枯れた。ああ、法の棟が砕けたのだから、禅林において誰を仰ごうか。来るときは雲のようで、出れば恵みが天下にあまねく及び、去るときは忽ち月のようで、傾くと光が人の世で覆われた。
朕は早くにその残された教えを奉じ、久しく仰ぐことに努めてきた。何によってその尊い徳に酬いようか。ただ美しい称えを追って贈るばかりである。これがどうして私の恩であろうか。実に公の議である。特に授けてよい。云云。
ああ、師は正法眼蔵を得、仏の心の灯を伝えて、万徳の身を成し、すでに一真の境地を踏んだ。願わくは残された蔭を推して、大いなる基に長く福を降らせよ。云云。
夾注 1
底本は「枕石自誤」である。「誤」のままなら「みずから誤る」となり、師を讃える前後と合わないので、「娯」の誤りと見て読み改めた。 ―訳者