詔に謝する状謝詔狀
1黄巣を討てという詔を受けて
右臣伏奉四月十日詔旨。黃巢兇逆。穢黷宮城。罪惡貫盈。人神共怒。尋東兵合勢。翦滅元兇。想副朕懷。已遵道路。佇聞克復。永耀功名者。十行天語。萬里星飛。捧窺而壯膽初驚。跪讀而愁眉頓豁。竊以黃巢禍心斯極。狠力旣衰。肉已太醎。果將自落。暫起烟塵之患。則歸原野之誅。臣每當永夜枕戈。早願中流叩檝。自啓行十乘。已屯駐五旬。伏緣江路多虞。風波未便。暫淹行色。用候良時。非致役於遷延。但興懷於矍鑠。今則仰覩鳳銜之詔。況乘隼擊之秋。俯勵軍謀。仰遵睿算。卽冀朝離江北。暮到漢南。長驅背水之師。永破滔天之孼。率奮義感恩之衆。氣已凌雲。殄藏奸匿暴之徒。勢如沃雪。伏惟陛下歲巡備禮。時邁傳歌。將示罪於三危。乃宣威於七德。臣遠承獎諭。誓盡勤勞。身暫寄於戈船。心每馳於劍閣。唯願西都獻捷。早申收復之微功。東嶽告成。得覩登封之盛事。臣無任感激兢懼之至。謹奉狀陳謝以聞。謹奏。
右のとおり、臣が四月十日の詔旨を伏して奉じますに、黄巣は凶く逆らって宮城を汚し穢し、罪と悪が貫き盈ちて、人も神もともに怒っているので、ただちに東の兵と勢いを合わせて元凶を翦り滅ぼせ、それが朕の思いに副うものと想う、すでに道路に遵っているので、克ち復されるのを聞いて、長く功と名を耀かせることを待つ、とのことです。十行の天の御言葉が万里を星のように飛んで来ましたので、捧げ窺っては壮んな胆がはじめて驚き、跪いて読んでは愁いの眉がたちまち開けました。ひそかに思いますに、黄巣は禍いの心がここに極まり、狠い力はすでに衰え、肉はすでにはなはだ醎いので、はたして自ら落ちるでしょう。しばらく煙塵の患いを起こしても、原野の誅に帰することになります。臣はいつも長い夜に戈を枕にし、早くから中流で楫を叩くことを願って、十乗で行を啓いてからすでに五十日のあいだ屯し駐まりました。伏して、江の路に虞りが多く、風と波が便でありませんので、しばらく行く色を淹め、良い時を候っていたのです。遷り延ばすことに役われたのではなく、ただ矍鑠たる思いを興していたのです。いまは鳳が銜えて来た詔を仰ぎ覩て、まして隼の撃つ秋に乗じていますので、俯して軍の謀を励まし、仰いで聖上の算に遵い、ただちに朝に江北を離れ、暮れに漢南に到り、水を背にする師を長く駆り、天に滔る孼を永く破ることを冀います。義を奮い恩に感じる衆を率いますので気はすでに雲を凌ぎ、姦を蔵し暴を匿す徒を殄しますので勢いは雪に湯を沃ぐようです。伏して思いますに、陛下は歳ごとに巡られて礼を備え、時ごとに邁かれて歌を伝えられ、まさに三危に罪を示し、七徳に威を宣べられます。臣は遠く奨めと諭しを承って、勤め労することを尽くすと誓いますので、身はしばらく戈の船に寄せても、心はいつも剣閣に馳せます。ただ西の都で捷ちを献じて、早く収め復す微かな功を述べ、東の嶽で成ったことを告げて、封禅の盛んな事を覩ることを願います。臣は感激しおののき懼れる至りに堪えません。謹んで状を奉り謝を申し上げます。謹んで奏します。