吏部の裵瓚尚書へ吏部裵瓚尙書
1山を出て銓管を預かられたことを賀して
伏承榮膺寵命。伏惟感慰。竊以勛華聖代。唯務擧能。邵泰賢流。共推取實。用捨旣歸於重柄。古今皆託於長材。人望所諧。主恩斯在。尙書情疏宦路。性悅道風。月高而霜鶴數聲。雲卷而蓮峯萬仞。早知厄運。久避囂氛。洋川之瑞草仙花。幾牽蝶夢。閬苑之朝嵐暮靄。深潤豹姿。然而陶勻難住於山中。塗炭待平於天下。遂辭肥遯。來謁宸遊。果登銓管之司。允洽簪纓之望。昔年掌貢搜。海嶽以皆空。今日掄材。酌淄澠而不混。淸通所莅。淆亂必除。歷居六郡之峻資。終補三台之缺位。遠祈邇禱。匪夕伊朝。某早仰仙標。遙欽懿範。抃慰瞻望。不任下情云云
栄えある寵の命を膺けられたと伏して承りました。伏して思いますに、感激し慰められます。ひそかに思いますに、勛華の聖なる代には、ただ能ある者を挙げることに務め、邵と泰の賢い流れは、ともに実を取ることを推しましたので、用いることと捨てることはすでに重い権柄に帰し、古今ともに長い材に託してきました。人の望みの諧うところに、主の恩がこうしてあるのです。尚書は情が宦の路に疎く、性は道の風を悦ばれて、月が高ければ霜を帯びた鶴が幾声か、雲が巻けば蓮の峰が万仞という風情で、早くから厄の運を知り、長く囂しい氛を避けられ、洋川の瑞かな草と仙の花が幾度か蝶の夢を牽き、閬苑の朝の嵐と暮れの靄が豹の姿を深く潤しました。しかし陶り勻ることは山のなかに住みがたく、塗と炭は天下で平らげられることを待っていますので、ついに肥えた遯れを辞して来て宸の遊びに謁され、はたして銓と管の司に登って、允に簪と纓の望みに洽われました。昔の年に貢の搜しを掌られたときは海も嶽もみな空しくなり、今日は材を掄られて、淄と澠を酌んで混じらせませんので、清く通ずるものが莅むところに、淆れ乱れたものは必ず除かれるでしょう。六郡の峻しい資を歴め居られて、ついに三台の缺けた位を補われることを、遠くでも祈り近くでも禱っていますので、夕べにではなく朝のことです。某は早くから仙の標を仰ぎ、遥かに懿かな範を欽んでいますので、手を打ち慰められ、瞻ぎ望む下の情に堪えません。云々。
夾注 1
底本の字は「六郡」ですので、そのままにしました。受け手が吏部尚書であることから「六部」と読む説もあります。― 訳者