滁州の許勍へ ― 浙西が秦彦を誘っている滁州許勍
1信がなければ立たない
報許勍。語曰。兵食可去。無信不立。則知守信之道。乃是立身之本歟。苟若壞隳。自爲顚覆。訪知近日。浙西周相公頻差上元鎭使馬曁。專齎書曲。兼將金銀。送到和州。說誘秦彦。令歸浙岸。許授霅川。信使繼來。事情甚細。則未知秦彦終欲如何。且浙西素泛勳勞。驟沾恩寵。謂得長久。遽爲驕矜。殊不知人盡指楹。鬼多瞰室。惡旣天稔。道唯日亡。今更阻絶我通津。動搖我屬郡。已乖衆議。可見前途。以勍直木千尋。精金百鍊。固無憂於邪曲。終不改於貞剛。況乃邦媛相隨。家肥是保。永除異慮。必享同榮。或恐未審浙西所爲。先此告示。悉之。
許勍に報せる。言葉に「兵と食は捨てられるが、信がなければ立たない」とある。であれば、信を守る道が、すなわち身を立てる根本だと分かる。もしそれを崩せば、みずから覆る。探り知ったところでは、近ごろ浙西の周相公が、しばしば上元鎮使の馬曁を遣わして、ひとえに書状を携え、あわせて金銀を持たせ、和州に至って秦彦を誘い、浙江の岸へ帰らせようとし、霅川を授けることを許して、使いが続けて来ており、事情はきわめて細かいという。秦彦がついにどうするつもりかはまだ分からない。また浙西は、もとより勲労に余って、たちまち恩寵に浴し、長く続くと思って、にわかに驕り高ぶった。人はみな柱を指し、鬼は多く室をうかがい、悪がすでに天に熟せば、道はただ日々に亡ぶことを、まったく知らない。今またわが通う津を遮り断ち、わが属郡を揺さぶるのだから、すでに人々の議に背いており、前途は見えている。勍は千尋の直き木、百たび鍛えた精金であるから、まことに邪や曲には憂いがなく、ついに貞しく剛きを改めることはあるまい。まして国の美しい人が互いに随い、家の肥えを保っているのだから、長く別の心配を除けば、必ずともに栄えを享けよう。あるいは浙西のすることをまだ詳しく知らないかと思って、まずこれを告げ示す。よく心得よ。
夾注 1
原文は「語曰」とのみ言う。『論語』顔淵篇の言葉である。 ― 訳者