いにしえの文 › 桂苑筆耕集(桂の苑で筆を耕した集) › 巻15 齋詞

下元の斎詞下元齋詞

桂苑筆耕集(桂の苑で筆を耕した集) 桂苑筆耕集 · 崔致遠(チェ・チウォン) · 886年(唐・中和6年 · 新羅・憲康王12年) · 段落 1 · 漢字 438字 · 朗読 1.8分

桂苑筆耕集(桂の苑で筆を耕した集) 巻15 齋詞 崔致遠が唐の淮南節度使・高駢の幕府で四年のあいだ書いた文章のうちから自ら選び、二十巻に編んで886年に新羅の憲康王に奉った文集。皇帝に奉った表と状、黄巣を責めた檄文、諸々の節度使に送った手紙、部下に下した委曲と挙牒、道教の斎詞と仏教の斎文、祭文、成都の羅城と安南の絵に付けた記、そして高駢に奉った啓と詩まで366編が収められている。「臣は新羅の人です」で始まる最初の啓と、「天下の人がおまえを殺そうとするだけでなく、地の底の鬼神までもおまえを斬ることを議した」という討黄巣檄文がここにあり、最後の巻は十二歳で離れた故郷へ帰る船路で作った詩である。今に伝わる韓国人の文集のうち最も古いもので、1834年に洪奭周と徐有榘が活字で刷るにあたり「我が東方の文章の根本であり始まりである」と述べた。その二つの序文も併せて訳した。

1大丈夫は厚きに処り、薄きに処らず

年月日。啓請如科儀。伏以敎資妙用。無爲而無不爲。道在勤行。不厭是以無厭。苟得捧持三寶。必能拯護萬靈。須憑善建之根株。始覩混成之閫閾。故曰大丈夫處其厚而不處其薄。居其實而不居其華者也。臣雖塵役拘身。而雲裝挂志。大成是望。上達爲期。每依郭璞詩中。精調五石。願向葛洪傳上。得寄一名。所以仰欽象帝之先。豈在他人之後。聽爛柯翁之說則倍惜光陰。覽抱朴子之言則不虧忠信。但以卑棲俗累。深握兵符。政刑之得失難調。賞罰之重輕易忒。暗惟愆咎。莫補精修。況叨眞位之榮。恐負玄科之責。是以。三元八節。顯醮遙祠。唯期致力於九層。未曾妨功於一簣。今則天吏扣應鍾之候。水官攬玄轡之時。月數就盈。日辰在望。仰投靈地。敬設寶壇。備儀於琳几瓊盤。注想於金臺銀闕。冀感通於良夕。能濟援於危時。伏乞太上三尊。十方衆聖。曲垂玄鑑。俾遂丹誠。早廻翠輦於長安。復振皇風於正始。秉陶勻者永諧德化。仗節鉞者共戢兵戎。波濤靜寢於四溟。氛霧豁開於九野。樹下有推功之將。草間無求活之徒。至於翔翼躍鱗。跂行喙息。偕登仁壽之域。不躡昏迷之途。使臣深結道緣。遙申齋願。望三淸於通路。資一漑於良田。此時枕越石之戈。暫妨高臥。他日把浮丘之袂。豈訝後來。臣某無任瀝懇投辭虔禱惶切之至。謹辭。

某年某月某日。啓請は科儀のとおりにします。伏して思いますに、教えは妙なる用にもとづき、為すことがなくて為さないことがなく、道は勤めて行うことにあり、厭わないからこそ厭うところがありません。まことに三宝を捧げ持つことができれば、必ず万霊を拯い護ることができます。よく建てる根株に頼ってこそ、はじめて混成の閫閾を見ることができます。ですから「大丈夫はその厚きに処って薄きに処らず、その実に居って華に居らぬ者である」と言われました。臣は塵の役に身を縛られていますが、雲の装いに志を掛け、大成を望み、上達を期しています。つねに郭璞の詩によって五石を精しく調え、葛洪の伝のうえに一名を寄せたいと願ってきました。ですから象帝よりも先なるものを仰ぎ欽うのであって、どうして他人の後にいようとしましょう。爛柯の翁の話を聞けば光陰を倍して惜しみ、抱朴子の言を見れば忠信を欠くことがありません。ただ低く棲んで俗の累いに縛られ、深く兵符を握っているので、政と刑の得失は調えがたく、賞と罰の重軽は狂いやすく、ひそかに過ちを思っても、精しく修めることで補えません。まして真の位の栄えを分不相応に受けているので、玄かな科の責めに背くことを恐れます。ですから三元八節に、顕かに醮し遠く祠って、ただ九層に力を致すことを期し、一簣において功を妨げたことはありません。いまは天の吏が応鍾の候を扣き、水官が玄かな手綱を攬る時であって、月の数は満ちに就き、日の辰は望にあります。霊なる地に仰ぎ身を投げ、宝の壇を敬んで設け、琳の几と瓊の盤に儀を備え、金の台と銀の闕に想いを注いで、良き夕べに感じ通い、危うい時に済い援けられることを願います。伏して乞いますに、太上三尊、十方衆聖は、曲げて玄かな鑑みを垂れ、丹き誠を遂げさせてください。早く翠の輦を長安に還し、ふたたび皇の風を正始に振るわせ、陶と勻を秉る者は永く徳化にかない、節と鉞を仗く者はともに兵戎を収め、波濤は四溟に静かに寝み、氛と霧は九野に豁と開け、樹の下には功を人に推す将があり、草の間には生き延びようとする徒がなく、翼で翔け鱗で躍るもの、跂で行き喙で息するものまで、ともに仁寿の域に登って、昏迷の途を踏まぬようにしてください。臣には道の縁を深く結ばせ、遠く斎の願いを申べさせ、三清を通う路に望み、一たびの灌ぎを良き田に資けさせてください。いまは越石の戈を枕にして、しばらく高く臥すことを妨げられていますが、後日、浮丘の袂を把るなら、どうして後から来たことを訝りましょう。臣某は懇ろを瀝ぎ辞を投じ、虔み祷り惶れ切なる至りに堪えません。謹んで申し上げます。